Ehang(EH)の競合優位性の考察
はじめまして、pontaです。
中国の有人ドローンを作る企業Ehangは、すでに人々をドローンに乗せ空を飛び楽しませている夢のある企業です。
今回、有人ドローンを製造しているEhangについて他社との競合優位性について、自分の考えをまとめるためにnoteにしてみました。
初めての投稿になりますが、自分の考えを整理するために書くことに挑戦することにしました。
読みにくいところもあると思いますが、ご容赦くださいませ。
この記事は、有料となっていますが、最後まで読むことができます。
Ehangの競合優位性について
1.先行優位性
(1)ドローン業界における棲み分け(有人ドローンのシェア)
現在、ドローン業界は、中国のDJIが世界約70%のシェアを占めており、世界一の会社となっています。
また、DJIが販売しているのは、コンシューマー向けドローンなんですね。
Ehang(以下EHとします。)は、パッセンジャードローン、つまり有人ドローンを製造しています。
よくDJIとEHが比較され、EHはシェアがほとんどないという声がありますが、DJIとEHでは、ドローンというくくりは同じでも、まったく違うものを作っているのです。
例えれば、DJIはラジコンの飛行機、EHは実際の飛行機なんですね。
(お互いが比較対象ではないということです。)
じゃあ、DJIも小型の無人ドローンの大型版を作ればすぐに人が乗れるものを作れるじゃないかと考える人もいると思います。
しかし、人を乗せるということは、人の命を預かる、つまり、安全性の保障が重要になり、大型ドローンを作っただけでは実用化はできず、航空法で定められた数々の厳しい検査をクリアーする必要があります。
そのため、DJIが有人ドローンの制作にかかったとしても、相当な回数のテストをして、安全性を認めてもらう必要があります。
つまり、DJIとEHでは、全く異なるものを作っているといえるのです。
有人ドローンの販売はまさにこれから、それにEHしか実際に有人ドローンを販売していない状況を考えれば有人ドローンのシェア100%、ブルーオーシャンではないのかともとれる状況です。(pontaは楽天家で、楽観視しております。甘いと言われるかもしれませんが(;^_^A)
(2)エアータクシーまでの道のり
EHが目指すエアータクシーを実現するためには、事業用の航空機と同じ手続きを経る必要があります。
ア.型式証明と耐空証明
EHが製造する有人ドローンは、人を乗せ空を飛ぶもので、墜落する可能性がゼロではないものであり、乗客の生と死がかかるものなのです。
そのため、実用化、さらには、商用化までには、航空機やヘリコプターのように、各国の航空法で定められた厳格な基準の下、航空機の耐空性と安全性の認証を経る必要があります。
つまり、通常、「型式証明」と「耐空証明」が必要です。
「型式証明」とは、ボーイングの新型機「B787」など新規に開発された飛行機の機種が、飛行するために必要な要件を満たしていることを証明するもので、これがなければ飛行機は空を飛べません。
また、飛行するためには、「耐空証明」も必要になります。
これは、国土交通省のホームページからの抜粋ですが、日本の耐空証明を取得するための手順ですが、①~⑤の検査手順を経る必要があります。
① 設計、製造過程、現状の全てを詳細に検査する
国があらかじめ「型式証明」を発行して設計の検査を終了している場合は、
② 設計検査を省略、製造過程を書類で行い、現状の検査(実際の機体によ る検査)を行う
③ 国があらかじめ認定した航空機製造者(航空機製造検査認定事業場といいます)が航空機の完成後の現状まで確認した場合、国は実際の検査を行わない
④ 我が国と同等以上の検査を実施する外国の航空当局が、輸出耐空証明書 を発行していれば、我が国は実際の検査を行わない
ICAO条約締結国が輸出耐空証明書を発行している場合は、
⑤ 設計、製造過程は書類にて検査し、現状の検査を実機を使用して行う
こととされています
そのため、機体ができたとしても、各段階における厳格な検査が行われ、最終段階の耐空証明を取得するまでには相当な日数を要することがわかると思います。
イ.有人ドローン業界の進捗
下図は、主要なグローバル競合他社の製品開発の進捗状況を示したものです。
EHは、2019年に、すでにCommercial Launch(商用販売)のところまで来ています。その上で、カナダ、オーストリア等でフランチャイズフライト許可を取得し、実際にEH216の飛行を成功させていることからも、「耐空証明」取得がほぼ現実的な状況にあるといえると思います。
ウ. EH216の商用化までの手順
①耐空証明の取得
eVTOLは、今までにない製品で、有人である以上、より高度な安全性が必要となります。
そのため、テスト飛行プロセスは重要です。
EHは、1万回以上の飛行テストに成功し、一度も失敗したことがない実績やアメリカ、カナダ、オーストリア等のさまざまな環境での飛行実績もある状況で、耐空証明取得は目前です。
②低高度空域の利用
EHは、まずは中国での観光利用としてのエアタクシーとして利用される可能性が高いと考えられます。
また、中国は、空は国が一括管理していることからも、耐空証明を取得すれば、国策であるEHへの指定飛行エリアにおける利用の許可がでる可能は高いと考えられます。
③商用使用の許可
日本では、航空法により商用使用する場合には許可を取得する必要があります。
中国でも、同じように許可を取得するひつようがあると思われます。
これらを含め現在の状況を考えますと、Ehangは、
〇すでに、有人ドローンの実用化に成功しており、販売実績もある
〇耐空証明待ちで、あと少しで事業としてエアタクシーを行うとこ ろまできている
といえ、競合他社に比べ、相当有利な位置にいると考えられます。
エ. 機体の優位性(無人化)
EHの作る機体(主にEH216)については、基本的に運転手なし、つまり自動化された(無人)の機体です。
これは、ヒューマンエラーによる墜落の可能性を排除するためにAIによる自動化を実現したものです。
運転手がいる場合と完全自動化の場合を比較してみましょう。
例えば、ヘリコプターには運転手がおり、その運転手は、ヘリコプターの運転をするための資格、つまり免許を持っています。
免許を取るためには、相当な学科および訓練を積み、長い時間をかけて免許を取得します。
そのうえで、ヘリコプターを運転しますが機体の故障だけでなく、ヒューマンエラーによる事故も発生しているのが現状です。
有人ドローンは、墜落が死につながる可能性があるものです。
そのため、少しでも墜落する可能性を排除するために行き着いた先が自動化(無人化)です。
また、無人化により、ヒューマンエラーを排除できるだけでなく、運転資格である免許をとる時間を排除できるため、より早くEHの有人ドローンは配備可能となります。
(3)強固なネットワーク力(市場の支配性)
EHの目指すところは、スマートシティ管理(エアタクシー、空の物流、空中メディア等)です。
実際のところ、CEOのHu氏は、「航空業界を破壊するのではない。自動車業界を破壊することになる。」との見解を示しています。
また、EHが400kmの航続距離を可能とした新型eVTOLを開発した情報のリリースもありました。
それらの状況から、
〇各都市でEH216を主体としたエアタクシー
〇各都市間で新型eVTOLによるエアタクシー
の使用が考えられます。
となると、各都市でEHのスマート管理システムが構築されることにより、各都市内外でEHのスマートシティ管理のネットワークが構築されます。
そうなると、空の低高度における交通をEHが統括することとなり、後発のeVTOL企業が参入するには、空の交通事故防止等の観点から、EHのシステムを利用せざるを得なくなる状況が考えられます。
つまり、EHは有人ドローンの成功を足掛かりにして、エアタクシー事業の成功および空の交通網の支配までが可能になる可能性を秘めているといえると思います。
中国だけでも、需要は相当なものにのぼると思われます。
下図は、2021年2月24日に中国で発表された「国家総合三次元交通網計画要綱」に示された交通路を表すものです。
これを見るだけでも、中国にはたくさんの都市があることがわかります。
それらの各都市で、EHのエアタクシーが配備され、また各都市を結ぶ空の経路にもEHの高速エアタクシーが配備される状況が考えられ、それらに付随してEHの管制システムが導入される可能性が考えられます。
※2019年10月 EHとアゼルバイジャン航空が契約。 アリエフ国際空港、空港地域のドローン交通の統一管理システム。
(4) 消防・警察への参入等を足掛かりにしたスマートシティ構築
EHは、消防用ドローンを制作しており、すでに数台配備されている状況です。その有用性は高層マンションの上層階での火災の消火に効果を発揮しており、その有用性から、中国のすべての消防署に配備されていくと考えられます。
※雲浮市での高層消防デモ
※中国 雲浮市の消防署
また、警察と連携し、空からの防犯や現場状況、災害状況といった空撮、空からの特殊詐欺被害防止の呼びかけ等を行っております。
中国の消防と警察は、日本のように別組織か否かはわかりませんが、消防・警察への参入を足掛かりにして、管理システムを構築を足掛かりに、エアタクシー事業を加えるといった形でのスマート管理システムの構築もあり得るのではないかと思われます。
中国は、EH216を活用した有人ドローンによる観光業の活性化をするために、各市の関係者がEHを視察している状況があり、観光業の成功を足掛かりにしたスマートシティ構築も考えられます。
2.おわりに
Ehang(EH)は、有人ドローンを製造・販売する企業であるが、その目指すところはスマートシティ管理における空の輸送といえます。
その上で、
〇競合他社よりも相当早い有人ドローンの実用化(販売実績あり)
〇もうすぐ耐空証明を取得する可能性が大(事業化目前)
〇運転手が不要で、ヒューマンエラーを排除した自動化(無人化)された機体(運転手養成の時間も不要)
であり、現時点での技術的な進捗の差は相当大きく、競合他社より圧倒的に進む速度が速い状況といえます。
そのため、先人の優位性をいかんなく発揮し、強固なネットワークを作ることが可能な状況にあるといえます。
ネットワークができた後では、システムをリプレースするには、EHの技術を上回り、かつ金銭的安さがなければ、なかなか一度構築したシステムを交換するということは難しいと思います。(EHも、日進月歩進化していますので)
現在、自動車は①EV化→②自動運転化→③運転手なしの自動化(無人化)→④自動化による配車サービス(地上の統括管理)という流れが見え始めています。
また、自動車業界ではこの流れを現実のものとするために、Tesla等の企業が自動車のEV化・自動運転化を進めているところです。
EHは、空のTeslaと例えられる企業で、空において、先の自動車の流れの①②③を実現し、さらに④の段階の技術も有している状況で、さらに、競合他社の数年先を進んでいる企業といえると思います。
EHが作る未来は、もう目の前まで来ており、人々にとって非常に有益で喜ばれるものに違いなく、期待せずにはいられません。
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