恋で生計は立てられない 第五章「神様が、もしいるのなら」2
梅雨入りの発表がされた日の夜は、気温がいくぶん下がったものの、肌に張りつくような湿気のうっとうしさに、街を行く人々は若干だるそうに歩を進めていた。
傘を差し、勢いの強い雨の中、優とカオルは歩いていく。優は店のビニール傘、彼女はグレーの花柄の折り畳み傘。雨が滴る水音が二人の間を無言にしていく。
「俺の家、もうすぐだから」
「ん」
「こうも雨がすごいとね。話す気なくすよね」
「梅雨は、私は好きよ」
カオルは店の時とは違う雰囲気の声色を出した。
「雨が降ると、いろいろなものを