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谷川岳一人旅日帰り2020.11/8

[導入]

無性にいい景色を見たくなり、紅葉を求めて群馬へ登山しに行くことにした。この時期の山の空気はさぞかし美味いことだろう。
事前に天気を調べてこの日が晴れの予報だった。いざ初一人登山。一人旅はこれが4回目。登山は大学1年のとき行った高尾山以来来てないからかれこれ7年ぶり。日帰り一人旅というのも初。国内一人旅で注意しなきゃいけないのは、「下手こけない」というところ。海外なら慣れない一人旅で何か恥ずいことしたり下手こいたりしても周りは気にしてない(と思ってる)。でも国内は別。日本人という同じ価値観に生きる周りの人たちは見ている。少しでも恥ずいことしたらそれこそ嘲笑の的である。いかにスマートに、慣れてる感を出し、自然に周りに同化できるか。これが大事となってくる。

[ルート]

群馬の谷川岳というところに行くことにした。
5:00東京→高崎→8:17水上線で水上駅へ→9:00バスで谷川岳ロープウェイ駅→天神平駅→リフト→天神峠→9:30登山開始→10:15熊穴沢避難小屋→10:40天狗のトマリ場→天神のザンゲ岩→11:10肩ノ小屋→トマの耳→11:35オキの耳→下山→水上まで戻る→15:00日帰り温泉(水上館)→16:47帰路へ

[東京→水上]

・朝4:00に起床。ねみー。ひっさびさの早起きだったので心配すぎて何度も夜中に目覚めてしまったな。朝ごはん(白米・納豆・味噌汁)を、録画してたタモリ倶楽部の空耳アワー見ながら食べる。水筒にあったかい青汁(最近ハマってる)を入れてリュックにしまいいざ出発。
ゆったり朝を過ごすくせにいつも家を出る時間はギリギリ。家からホームまで走りなんとか始発に滑り込む。
意外と人乗ってるのね。登山っぽいウェア着てる人結構いた。みなさん紅葉狩りですかね。
・仮眠をとりながら私鉄で高崎まで着く。帰りは新幹線で帰りたい。券売機で新幹線のチケット購入。しかし間違えて特急券しか買えなかった。隣の券売所で乗車券も購入。まだ少し時間あるのでウンコしたろー思ってトイレ寄るも空いていない。5分待てども空かない。7:11発水上行きまでそんなに猶予はない。仕方ないのでトイレは諦めて水上線に乗車。いや、駅のトイレで長便する奴まじなんなん。。まあコンディションを整えてこなかったおれが悪いな。
・水上線で高崎から1時間で水上へ。
水上線車両内は人がまばらにいる。旅慣れた雰囲気の人、学ランを着た高校生、手ぶらのよくわからんおじさん。おれの斜め向かいに座る男性はショルダーバッグを自分の腿上にちょこんと乗せてただただ座っている。じっと正面やや下あたりを見つめながら。寝るかスマホ見るか本読むか音楽聴くか何かしらしないのかしら?不思議だなあ。豊かな時間を過ごしているのでしょう、この域に達したいものです。
高崎線で仮眠をとったこともあり、あまり眠気はない。本を読みながら電車に揺られる。ふと顔を上げ窓の外をのぞくと田舎景色が広がる。そびえたつ山々。朝日が差し込みとてもいい気分。水上線は良かったです。

[水上→谷川岳ロープウェイ]

観光案内所で割引券が買えるとネット情報で事前に調べていたが、営業開始が9:00〜であるため購入できず。ふーん、まあいいや。

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バス停まで行きバスに乗り込む。Suicaで入る。とりあえず前の人に倣ってピッとタッチ。ん、これって降りる時もタッチするの?ちょこちょこバス停あったから後払いシステム?一律料金?でも前の電光掲示板の料金表見ると異なる数字が並んでる。降りる時前の人に倣って行きたいが、後ろの方の席が空いておらず一番先頭に座ってしまった。前の出口から降りるタイプだからおれが先頭で降りる形に。やべえぞ。これは一か八か「タッチする」方に賭けたろか?いや、リスキーだ。かといって運転手さんに「これって後払いシステムですかね?」なんて聞くのもダサい。そんなことはできない。安全策の「バッグを開け閉めしてすぐには降りれない感じを装い後ろからくる人に先行かせる作戦」を決行。Suicaをもう一度タッチする後払いシステムであることを確信し、スマートに降車。いやー、あぶねえ。うまくいったな。うん、ここまでは下手こいてないな。大丈夫大丈夫。

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[谷川岳ロープウェイ駅→天神平駅]

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ロープウェイ駅でとりまトイレへ。コンディションを整えて、9:00に出発。いよいよ登山開始か〜。高まる。
ロープウェイに乗り込む。冷たい隙間風が少し入ってくる。山を感じる。緊張してきましたね。ロープウェイの中は静か。人との距離も近めだから、なんかきまずい。早く降りてーな。

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[天神平→熊穴沢避難小屋]

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・天神平からリフトに乗り天神峠からスタートすることにした。天神峠からのルートで行く人は少ない。みんな天神平スタートのようだ。天神峠から山頂へ行くルートがいまいちわかりにくい。前にも後にも人がいないので不安になりながら歩を進める。進めば進むほど人の気配が消えて行きどんどん不安な気持ちになってくる。ぬかるんだ道にちょっと萎える。「あれ、もしかしておれミスったんじゃね?」

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進んできた道を振り返るとすでにリフトの駅はかなり遠方に見える。もう20分以上歩いてしまった。
「ここから戻るのはさすがにダルいし一か八か行くしかないか。。」
あ~不安でイライラする。「あー!」って叫びそうになりながらも堪えて歩を進めていくと、天神平からのコース(王道コース)に合流。人の声も聞こえてきて一安心した。はあ〜よかった。

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・ちなみにおれは普段毎週末5kmほどランニングをしているため、そこそこ体力に自信ある。しばらく登って行って気付いたのだが、登山の暗黙の了解で「後ろから来るペース速い人に道を譲る」というのがあるようだ。おれは快調なペースだったから、どんどん水戸を譲って頂き先人を抜いていく感じだった。「まだ序盤だけど案外余裕ちゃんだな笑」って感じ。ガンガン飛ばしてたからか、どんどん暑くなってくる。上着を脱いで、薄手の長袖とTシャツの2枚のみという恰好。汗もかいてきた。そのまま進んでいくと熊穴沢避難小屋に着いた。

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最初のスポットである。。まだまだ体力はある。よし頑張るぞ。さらに上へ。登れば登るほど、薄くだけどひんやりとした気持ちのいい空気を感じる。
山頂の方を見ると雲でかなり覆われており、良い景色が見れるのか不安。

[熊穴沢避難小屋→肩の小屋]

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上空はどんよりとした雲に覆われている。「これはもしかして頂上まで行っても何も見れない可能性あるぞ。。」不安で仕方ない。でも行くしかない。辺りは濃い霧に覆われており、先に進めば進むほど視界は悪くなっていく。脚が重く感じる。疲れてきているのか。歩幅を広くして登っていこうとすると、筋肉の消費が激しいなと感じるようになってきた。少し歩幅を狭めてペースを落とそうかな。まだ先は長いのだろうか。そんなことを考えていると、次のスポットである天狗の留まり場に到着した。

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ここまで来ると空気が冷たい。そして何より、白い。まさに雲の中にきたという感じ。いやてか正直ここまでかなり遠く感じた。標高が高く息はぜえぜえ言ってるし疲れてきた。でも先行くしかない。さらに上へ。ロープや鎖がついた岩肌を登るところがあり、一歩一歩確実に太ももの筋肉に疲労が蓄積していく。越えても越えても同じような岩肌が目の前に現れる。「あと何回この岩剥き出しのところ登らなきゃいけないんだよ。。」と、次第に心が折れてくる。調子に乗ってハイペースになってた前半の自分を憎む。頂上に近づくほど霧は濃くなるし寒くなるし。脚の筋肉ももはや悲鳴をあげている。転がってきた石がちょっと足に当たっただけで悶絶するほど痛い、岩肌が手に刺さって痛い、転びそうになり慌てて何かに掴もうとしたとき、土に手を突っ込んで爪の中に土が入り込む。いやまじきちい。。おれは一体何を目指してるんだろう?目の前に大きな壁が立ちはだかるたびに、「もうやめようかな、このまま引き返そうかな」という考えが頭をよぎる。

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歩を止めることなくここまでやってきたけど、ついに膝に手をついて足が止まってしまった。「やばい、めちゃくちゃきつい。」標高も高くなっているため、息が苦しい。ぜえぜえ言いながら、いつもの半分の歩幅で、いつもの半分のスピードで歩く。足の踏ん張る力もなくなってきた。心は無の状態。この登山を楽しもうという気持ちはもうない。ただただつらい。そんな状態。かなり追い込まれている。

[こんにちは事件、発生]

登山中にすれ違う人に対して「こんにちは!」と挨拶をするという登山暗黙のルール(?)があるみたいだ。登山なんてほぼ未経験だったおれにとって、これはかなり新鮮。最初に「こんにちは」と言われたときはちょっとびっくりした。正直、「こんにちは」と言う気持ちがイマイチ理解できていなかったから、人とすれ違いそうになるとちょっと緊張してしまう。こっちから「こんにちは」って言いたいけどもし無視されたらどうしようとか、声裏返って変な感じになったらどうしようとかいろいろなことが頭をよぎってとにかく不安だった。とりあえず向こうから挨拶さえたらそれに返すことにしよう。そう心に決めて、それを何度も繰り返すうちにだんだん「こんにちは慣れ」してきた。声のトーン、高さ、感じの良さ、どれもちょうどいい「こんにちは」を放つことができるようになってきた。「なんならちょっと気持ちいかも笑」。そんなときだ。事件が起きた。ゴツゴツした岩場を登ろうとしていたとき、数m上の方から大きめの「こんにちは!!」という声が聞こえた。若い男性の声だ。そのすぐ後に続くように2人の男性の「こんにちは!」が聞こえた。声の感じからしておそらく年齢も同じくらいだろう。3人組なんだな。距離的におれのこんにちはの射程圏外だったが、「気持ちのいい青年たちだな」と思い、おれも負けないくらい大きめの声で上の方に向けて例によって「こんにちは!!」と返しながらその青年たちの声のする方を見上げた。そしたらそこにはその3人組の他に、おれの先を行く一人の男性がいた。青年たちの視線はその男性の方を向いていた。おれの渾身の「こんにちは!!」に被るように、その男性も青年たちに向けて「こんにちは」と言っていた。そう、その3人組はおれに対してではなく、そのもう一人の男に対して挨拶をしていたのだ。
おれのデカめの「こんにちは!!」にびっくりしたのか、上の4人が全員おれの方を向く。そして、「え、その距離からこんにちは放つ?なにあいつ(笑)」みたいな笑みを顔に浮かべて、控えめに「こ、こんにちは」とおれに返してきた。
うーわ、やってもうた、、!恐れていたことが、おれが一番恐れてきたことが起きてしまった。こういう時、おれに連れがいれば「ははwやっちゃった!笑」みたいな感じで誤魔化してうまくその場を乗り切れる。でもそこにはおれただ一人。ダメージをもろに受けてしまう。
その3人組とすれ違うところまで登っていき、ちらっとその3人の顔を覗くと何やらニヤニヤしてる。気がする。やばいめちゃくちゃ恥ずかしい。このまま消えてなくなりたい。ここまで下手こかずにうまくやってきた。それがとうとう打ち砕かれてしまった。

おれのメンタルは完全にやられてしまった。視界はどんどん悪くなるし脚は疲労でプルプル震えているし寒いしお腹空いたし水たまり踏んで靴の中びちゃびちゃだし「こんにちは事件」発生するし。絶望的だ。

11:10肩の小屋着

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霧の中に小屋が現れる。ふー、やっと着いた。いやまじで。もうメンタルはズタボロ、脚もパンパン。限界到達。もう帰りたい。泣きそう。どうしよどうしよ。辺り一面真っ白で景色なんも見えない。この先行ったところでどうせ何も見れないにきまってる。「もういいだろ、このまま引き返すか、、?」どうしようか考えていたところ、まだ先を目指して進んでいく人たちが見えたので、「いや、最後まで頑張ってみるか!」と最後の力を振り絞って歩を進めることにした。

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[頂にて]

この先のポイント地点は、トマの耳。小屋から10分ほどで到達。うん、とうとうここまで来たか。ここまで来たなら最後まで行ってみよう!オキの耳を目指す。10分程度アップダウンを繰り返す。頭の中は空っぽだった。無の境地。頂上を目指すことだけを考えて歩き続けた。脚には一切力が入らない状態。もはや気力だけで身体を動かしていた。

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そしてついに、山頂オキの耳に到着。「谷川岳オキの耳1977m」の標識が見える。やったぞ、、!思わず「ふう」と声に出した。すると標識の脇にいる女性に話しかけられた。「もう少し晴れてればよかったですね」と。この人も一人で来ているらしかった。そして「写真撮っていただけますか、私も撮りますので」とのことで、スマホを受け取り写真を撮った。うまく撮れてるだろうか。次いでおれもスマホを渡して写真を撮ってもらった。

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このときおれはもう泣く一歩手前まで来ていた。久しぶりに人としゃべったような気がする。おれみたいなくそきも男に声をかけてくれるなんて。いい人だ。嬉しい。山頂は寒かったが、心はぽっと温まった。

[オキノ耳→下山]

登りもきつかったが下りもめちゃくちゃしんどい。もう脚がプルプル震えてやがる。脚に全く力が入らないから踏ん張りが効かず重力に逆らえない。自然と足取りが速くなってしまう。速いもんだから前方を歩いている人が道を譲ってくれる。抜いた直後は注意だ。もしも譲ってもらっておいて、そのすぐ後に滑って転んだりでもしたらダサすぎるから。細心の注意を払う。でもふらついてしまった拍子に岩肌を少し滑り落ちてしまった。身体をかばおうとしてついた手に石が突き刺さり悶絶。うう、息ができないくらい痛くて苦しい。でも「転んで怪我した人」って思われたくないから、平静を装って歩き続ける。恥ずかしい思いをするくらいなら我慢して痛くないふりをする方を選ぶ。は?おれなにしてんだ?

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13:13谷川岳ロープウェイ天神平駅着
晴れてる。

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[水上駅へ]

14:05発のバス乗車。ロープウェイ駅から水上駅までの道路が紅葉しててステキ。

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水上駅周辺を散策。ランチタイムは終わったのか、行こうとしてたラーメン屋は閉まっていた。ふーん、まあいいけど。

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周辺を散策し、どら焼きだけ買って日帰り温泉へ。とにかく一刻も早く温泉に浸かりたい。

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水上館というホテルの日帰り温泉をチョイス。日帰り温泉1500円。中にはおれの他に2人しかいない。隙間の時間だったのか、おれが風呂から出るころに続々と人が入ってきた。めちゃグッドタイミングだった。露天風呂はほぼ貸し切り状態。心も身体も癒される。至福や。

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[帰路へ]

16:47発登り電車に乗車。
なんだろうこの達成感は。すごく気分がいい。山頂からいい景色見れなかったのは残念だったけど。いやしかし現実は常に予想を超えてくるな。何が起こるかわかったもんじゃない。山頂まで行ってよかったな。

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