まだ見ぬ貴方へ

拝啓

 お名前もわからぬ貴方へ。

 はじめまして、貴方はいつもはどちらにいらっしゃるのでしょう。私は今、ローズティーを入れながら、この手紙を書いております。

 いつも、すれ違いばかりでお会いすることもない貴方に、こうしてお手紙を書くのは、先生にすすめられたからです。

 先生には、何度かお会いしたと伺っております。
 先生曰く、貴方はとても繊細で、そのせいで内に秘めたものが爆発してしまうのだと、伺っています。

 そうなってしまった原因の一端が私にもあると思うと、申し訳ないような、どこか心強いような、複雑な気持ちになります。

 貴方のその苦しみは、もしかしなくても、私が負っていたかもしれないものです。

 話が脱線してしまいました。先生は、何でもいいから書くようにと言われたのですが、改めて手紙を出すとなると、なかなか難しいものですね。

 貴方も先生から、この手紙のお返事を書くように言われるかと思います。あまり無理はしないで下さい。でも、もし書いて下さるのでしたら、罵詈雑言でも結構です。

 貴方の苦しみを少しずつ、私に下さい。

 その苦しみは、私が背負うべきものだから。

敬具

      貴方のもう1つの人格より。

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