餃子バトル

餃子を食べる時、いつも叔父の事を思い出す。

叔父の外食がふえると叔母の機嫌がわるくなる、そうなると週の終わりに叔母から電話

があり、叔父がご馳走してくれるから食事に行こうと誘われる。

これはひとり者の特権で、なんのしがらみもない私はホイホイと出かけられるから

だった。叔父にしたら叔母と2人きりだとグチを言われそうで怖い。

姪の私を盾にして話を逸らそうと言う訳。

とうぜん叔母のご機嫌取りだから、叔父がふんぱつしてお高いところで食べられるので

私にとってラッキーな話、と言事で三方良しの状態で、しばしば日曜の夜は豪勢な食

事会となっていた。

ある時、お高い中華飯店に行った時、中国の大学に行った叔父が学生寮で食べた餃子の

話をしだした。

大昔の話で男ばかりの寮で夜もふけると、その年頃かなりお腹が空いてくる、今のよう

にコンビニもウーバーも無い、そうなると近くの餃子屋に1年生を注文に行かせる。

しばらくすると餃子屋の小僧さんが大量の餃子を抱えて届けてくれる。

食堂のテーブルの真ん中にドンと餃子を置いて、1年生が上級生に声をかけると、ベル

トに箸をさして上級生がゾロゾロと現れる。

その頃からマイ箸はあったのか、何となく汚い感じだが叔父の年頃にキタナイは誉め言

葉になるので黙っていた。

「で食べるわけ?」

「ちがうぞ、まずジーーット睨み合って、誰か餃子を箸でつまんだら、そいつを自分の

箸で叩きおとして食べるったい!!」

自慢げに叔父は言うが、まるで盗賊カモメではないか、怒号の飛び交う餃子パーティ。

ちょっと見たくはある、私だったらどう取りに行くかなと考えながら大皿の肉団子をと

った瞬間、叔父が箸で私の箸を叩き落として肉団子を自分の口に放りこんだ、

年寄りとは思えないはやわざだ!!

ポカンとした私をみて叔父はニヤリとした。

やられた!!苦笑しながら叔母を見ると激ヤバとはこの事だろう、ニコニコ顔だったのが

急速冷却ガチガチで怖い。叔父はと見ると顔中にしまった感が溢れている。

叔母はマナーにとてもとてもうるさいのだ、しかもここは高級中華……

帰るまで叔父は説教されていた多分家に着いても続いただろう、せっかく叔母のご機嫌

が良くなっていたのに悪化させてしまった残念な話しなのだけど……

もう二人とも亡くなってしまったのだけど……

今だに餃子を食べる時あの時を思い出す。

自分もやって見たいのだけど行儀が悪すぎて人前では出来ない。

家じゃ猫を相手では無理か、猫の方が箸から叩き落とすのは得意、負けるな。

でも、叔父にとって生涯で一番美味しい餃子だったのだろうなと思う。


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