スリランカ サーフトリップ Day2

昨晩は遅い時間に就寝したにも関わらず、早朝に自然と目覚めてしまうのはサーファーの性(さが)というやつだろうか!?
まだ薄暗い中、ムクっと起き上がってトコトコ歩いて向かった先はビーチだった。
ダァーン!ダッバァーン!
まだ暗くて視界は悪いけど、これは!波の音!しかも、かなりな波のサイズかもしれない!? 耳をピクピクさせ波の音を聞きながら、薄暗い海に視線を全集中する。
波打ち際を見る限りでは潮回りは満潮のようだった。

オレは、左腕にしているGショックでおおよその潮回りと現在の時刻を確認した。現在時刻はa.m.3:15
ピンポイントで、ここヒッカドゥワの潮回りが表示されるわけではないけれど、おおよそ満潮(上げ潮)に向かっていることに間違いなさそうだった。

こうしちゃいられねぇー!まだ暗い砂浜を足早に部屋まで戻りB(ビー)に声を掛けた。
オレ『B(ビー)波あるぞ!オレ先に行ってるからな!』
B(ビー)『んん〜ん!後から行く・・』

オレは急いで準備をした。とはいえ3月のスリランカは乾季だ。しかも、一年中温暖で過ごしやすい場所と聞いていた。
今回の旅では、トランクスとロングスリーブ・タッパーとノースリーブタッパーのみ持ってきていた。荷物の軽量化だ。なので選択に迷うこともない。
まだ肌寒さの残る早朝は、ロングスリーブ・タッパーとトランクスの一択だった。

サーフボードは2本。普段使いのボード(188×48×6.0)と力のない小波用として持ってきたボード(6'0×19 5/8×2 7/16)だ。あとはフィンで多少の乗り味は調整するつもりで3セットのFCSフィン(Kフィン、CRVカーブフィン、MR TFXツイン・スタビライザー・フィン)を持ってきていた。

準備を終えてビーチに戻ってみると、東の空が少しづつ白み始めてきていた。
『うわぁー!やっぱあるよー!波ぃー!』
準備運動もそこそこに海へとパドルアウトした。何はともあれ数日ぶりのパドルアウトだった。感激ぃー!海に入れることがこんなにも幸せなことだったなんて・・

辺(あた)りを見渡せば・・すでに数名のサーファーが波待ちをしていた。
やっぱり波乗りは朝一に限る。
何故ならば、風がまったくない無風状態だからだ。太陽が昇って陸地が温められると海からの冷たい風が陸地に向かって吹き出し、波の面をざわつかせてコンディションを悪くしてしまう。俗に言うオンショアというやつだ。多くのサーファーがオンショアが吹く時間を避けて波乗りする理由がそれなのだ。

事前にリサーチしてきた通りだった。ここヒッカドゥワも沖合で吹く季節風が、日中にはオンショアとなり波のコンディションを悪くすると聞いていた。
狙うは朝一番の時間帯。それは間違いなかった。

早速、オレのところに波が回ってきた。
少しワイドだけどセットの一本めの波にテイクオフ!急にショルダーがグワァっとそそり立つ波、リーフ特有の割れ方だった。ボードは、ほぼ落下するようにストーンと落ちていく。こういう時、一瞬でも下を見たらそこでジ・エンドだ。
ボードと自分を信じて、これから走っていく進行方向の一点のみに全集中する。
そうすると体幹が安定するので落ちたボードの上でもバランスを崩すことなく体制をキープできる。あとは自然とレールが波のショルダーに引っかかって加速して行ってくれる。言葉にするとわずか6行だけど・・ここまでくるのに数え切れないほどの失敗から学んできた。今では、頭で考える前に体が自然と反応するようになっている。自転車に乗るのと同じだ。

サイズこそ頭ぐらいだったけど、とにかく波質が抜群に良かった印象だ。
何本か良い波に乗せてもらった。太陽も上り東の空がオレンジ色に輝き出した頃にはポイント全体を眺めることができた。
『あぁ〜なるほどぉ〜!』
ここのポイント名は ”A(エー)フレーム・ポイント” という。事前に聞いていたポイント名の通りだった。Aフレームは別名 ”三角波(さんかく波)” とも呼ばれる。波が割れ出すポイントを頂点として、そこからきれいに左右に割れていくことからサーファーには極上の波として愛されている。とはいえ・・条件を満たさないと滅多にみることのできない希少な波であることは間違いなかった。
波のサイズは、そこそこのサイズでも、サーフポイント・ヒッカドゥワの名前を世界に知らしめるには充分なハイクオリティの波質だったというわけだ。

波待ちしながら言葉を交わす余裕も出てきた。明らかにアメリカ人とは違う血色(けっしょく)の欧米人サーファーが多いことも特徴だった。オレが言葉を交わしたサーファーは、フランス、イタリア、ポルトガルからのトリップサーファーだった。
聞けば、スリランカへのサーフトリップは物価が安くて、波も良いというクチコミで増えつつあると言っていた。
実際、欧米人らしいサーファーの姿はオレたちが滞在中に幾度(いくど)となく見かけていた。

そういえば・・B(ビー)はどこだろう?
たっぷりと波乗りを楽しませてもらってから思い出すのも友達思いがないようだけど・・ビーチへ上がってみるとB(ビー)が横たわっていた。
オレ『B(ビー)大丈夫か?どうしたぁ!?』
B(ビー)『おぉ〜!いやぁ〜パドルアウトしたのはいいけど・・セットの波を喰らってカレントにハマってさっきまでもがいてたよぉ〜!死ぬかと思ったぜぇー!』
オレ『そうかぁ大変だったなぁ!サイズが下がりそうな日中にまた入ろうか!』

こうして、朝飯を食べに宿に戻ったオレとB(ビー)だった。

朝食を終え、少し寛(くつろ)いでからビーチに波をチェックしに行ってみた。そよそよとオンショアが吹き始めていた。
案の定、波の面がざわつき始めていた。それでも波のサイズは胸ぐらいはあった。充分楽しめるコンディションだ。

さすがに、昨日の長時間移動と今朝の波乗りで疲れていたので、オレは波の見える木陰で休むことにした。B(ビー)は ”ちょっとぶらついてくる” と言っていた。
木陰というのはホント気持ちがいいもんだ。これでハンモックでもあれば最高なのにと思ってしまう。

結局、一日中ビーチでゴロゴロと過ごし、いったん部屋に戻ってB(ビー)を波乗りに誘ってみた。夕方、少し日差しが和(やわ)らいできたのを見計らって2人でパドルアウトした。オンショアのまとまりのない波なので小波用のボードをチョイスした。
回転性を重視したツバメのテールのような形状のスワローテールとFCSのカーブフィンの組み合わせは、テールを沈めすぎることもなく推進力を得ることができるので小波でのオレのマストアイテムとなっていた。

小波とはいえさすがに波は良質だった。
左右ともにいい波を何本か乗せてもらった。

ビーチではあるけれども、もともとは岩盤であったであろう、ここヒッカドゥワのポイントから少し歩いていくと、多くの地元漁師さんが昔ながらの地引網漁で漁を営(いとな)んでいる姿を見ることができた。日本にもある”海と漁師の姿”だったが、場所が変わるとやけに新鮮に見えるのものだ。

さすがに疲れたぁ!

夕方の波乗りから戻りサッとシャワーを浴びて、早めの晩ご飯に出かけた。
向かった先は、昨晩と同じ食堂だった。食堂のメニューは基本的にチャンプル(まぜもの)が多いようだった。水や生物(なまもの)には細心の注意が必要な亜熱帯諸国を旅するときには、食材に熱が通されていることで下痢や食中毒などのいらぬ心配をしなくて済む。食材に火が通っているかどうかはマスト(必須)だろう。飲み物は基本的には栓の閉まっているビンに入っているものであれば心配ないと思う。瓶ビール然り・・瓶コーラ然り・・

サーフトリップは基本的に暇な時間が多い。
オレはもともとボォーっとしてる方なので、こういう暇な時間がまったく苦にならない。まだ見ぬスリランカの良質な波を想像しては、ひとりでニヤニヤしている。

明日は、朝一に波乗りして日中オンショアが吹くようならば、ヒッカドゥワの街中を散策してみようと思っている。ここからバスで移動できる距離で”ミリッサ”という波は小さくても形が良いサーフポイントもあるようなので少し期待している。

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