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#ベルズビーチ day1

今朝は6時に起床。波乗りの準備をしてティムとアンジェが迎えにくるのを待っていた。6時30分ごろ車に乗り込みベルズビーチへ向かう。

天気は朝からどんより曇り空。かなり肌寒い!ベルズビーチに到着。

波のサイズは?頭オーバー!?すでに6〜7人が波待ちしているのを確認した。駐車場では他にも準備しているサーファー達がいる。オレたちもすぐにウエットスーツに着替えて念入りにストレッチ。固まっている体を充分にほぐしてから急いでパドルアウトする。

パドルアウトしながら波を横目に見る。デ、デカイ!!頭オーバーどころじゃないんじゃない!?

緊張とワクワクが入り混じった不思議な感情でラインナップで波を待つ。波のピークにはローカルサーファーの姿がある。

これだけ広い海なのに、波に乗るのに最適なスペース(波のピーク)はイス2つ分ほどの広さしかない。このわずかなスペースをめぐって争奪戦となるわけだ。

ウネリが入ると波のピークを見極め、誰よりも早くその場所を目指しパドルする。

狩猟民族をルーツに持つオージーたち、まるでどう猛な獣みたいだった。一本の波に4〜5人が一斉にパドルする、その熾烈な場所とりは時には怒鳴りあって喧嘩が始まってしまう時もあった。

オレも気後れしないように、かつローカルサーファーの邪魔にならないように、細心の注意を払いながら良い波をひたすら待ち続ける。

ローカルが手を出さないようなダンパー気味の波に何本かテイクオフし体とメンタルを慣らしていった。当然、波は良くないので喰らっては波に吹っ飛ばされ、海中深く引きずりこまれては息も絶え絶えになって、またラインナップへ戻ってくる。

そうやって波と格闘しながらも辛抱強く良い波を待ち続けていた姿をローカルサーファーの何人かが見ていたのだろう!?

波待ちしているオレに1人のローカルサーファーが話しかけてきた。どうやら『次に来る、良い波行け!』って言っているようだった。

ウネリが入ってくる。オレを含めて数名のサーファーが同時にパドルを始める。先ほど話しかけてきたローカルサーファーがオレに向かって『Go Go!Paddle! Paddle!』と叫ぶ!すると、今まで同時にパドルしていた数名のサーファーがパドルをピタッとやめた。その時点で、この波はオレだけの波となった。

オレは必死にパドルした。なんせココの波は超早い!のんびりパドルなんかしてたらせっかくの波においてかれてしまいかねない。だから必死にパドルした!

ものすごい勢いでボードのテールがグワァっと持ち上がった。と同時にテイクオフ!恐ろしく高い位置からボードは滑り出した。

今までの数年の波乗り人生で最大の波にテイクオフした瞬間だった。

その爆発的なスピード、ボードを通して伝わってくる斜面の硬い凸凹デコボコ。サーフボードから振り落とされないように腰を落として重心を保つのがやっとだった。

長い長いスロープを滑り降り波のボトムが近づいてくる。ここで吹っ飛ばされないように、さらに重心をレールへと移しボトムターンの体勢に入った。爆発的なスピードがレールへと伝わりそれがボードの推進力へ変わっていく。推進力を得たボードはさらにスピードを上げ、今度は波のトップへと突き進む。そして、再び波のトップから物凄いスピードでボトムへと降りていく。

この一本の波をコケることなく、シッカリと乗り切ることができた。時間にしたら数十秒の出来事だったろうか!? 今、振り返ってもみても、この時の一本の波によってオレのサーフィンの原点が構築されたと言っても大げさではない。

”ローカル・サーファーにもらったわずかなチャンスの波に臆せずテイクオフし最後まで乗り切ったこと”

このことがどれ程、大切なことだったか・・早くラインナップに戻って波を譲ってくれたサーファーにお礼を言わなきゃ!そう思ってインサイドからパドルしラインナップに戻る途中に、オレは信じられない光景を目にすることになった。

流れの強い波に負けないようにパドルしていると・・波待ちしていた多くのサーファーから口笛と『今の良かったじゃねぇか!』といった賞賛の声をたくさんかけてもらった。こういうことは日本では経験したことがなく、とても驚いた。

『波がデカくってすんげぇー恐かったけど・・勇気出してテイクオフしてよかったなぁ!』心の底からそう思った。その代わり、人が乗ろうとしている波を前乗りしたり、せっかく自分に波に乗るチャンスが回ってきたのに、恐くて尻込みして、その波にテイクオフしなかったりしたら・・ローカルサーファー達にものすごく怒鳴られる。

それだけに、彼らはここのポイントでの ”一本の波”  をとても大切にしているって感じられた。限られた条件が整って初めて出会えるいい波だからだろう。海の中でのルールに厳しいのも納得がいく。これだけのサイズの波。強いカレント。そしてこれだけのサーファーの数。ルール無視は即!事故や大怪我につながりかねない。みんなが怪我なく気持ちよく波乗りできるようにローカルサーファーが恐くて厳しいのはとても良いことだと思った。

この日一日の波乗りで、ローカル・サーファーには、かなり怒鳴れた。そして、それ以上にワイプアウトして海の中で洗濯物のようにグルグル廻された。それでもなんとか波に喰らいついていった。

その後もローカルサーファーが何本かに一本はいい波を譲ってくれ、それをキチンと乗り切れば、口笛♫とたくさんの賞賛の言葉をかけられた。尻込みしてテイクオフできなかったサーファーに再びチャンスが巡ってくることはなかった。

ラインナップで波待ちして自分の順番がくる。その波には、何がなんでもテイクオフしなければならない。たとえワイプアウトしてしまったとしても、その行動をローカルサーファー達は認めてくれていた。失敗したらまたラインナップの最後尾に並んで順番が来るのを、ひたすら待てばいいだけだ。

でも、テイクオフをためらったサーファーはラインナップに並ぶことさえ許されなかった。『Get out of the way! / どけ!あっちいけ!』容赦なく罵声が飛び交う。オレはこの時、本物のローカリズムを体感していた。

この日は、ぶっ通しでトータル6時間ぐらいは波乗りした。体はバキバキだったけど心は大満足だった!海から上がって駐車場で着替えていると、何人かのローカル・サーファーらしき人達に『また、一緒に波乗りしようぜぇー』って声をかけられたりして最高の時間を過ごすことができた。

思い返せば、ローカル・サーファーに譲ってもらった最初の一本めの波。恐怖に負けずに自分を奮い立たせて、あの波にGo for it!した。このことがどれだけ大切なことだったか!もし、あの時テイクオフをためらっていたら、今日一日、波にも乗れずラインナップに近づくことも許されなかったはずだ。”ワンチャンス” の大切さを身をもって体験したわけだ。

ティム、アンディもそれぞれ波を満喫できたようで、満面の笑顔をだった。クラブハウスへと帰る車の中で、さっきまでの波乗りを思い出しては1人でニヤニヤしていた。クラブハウスに着くと3人ともドッと疲れが出てしまい、シャワーも浴びずにベットにバタンと倒れ込んでそのまま深い眠りについた。





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