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#出国

2本のサーフボードとウエットスーツ、バスタオル、最低限の着替えを入れたボードバックは想像をはるかに超えるほど重くなり、とても肩にかけて運べる重さではなくなっていた。なので肩にかつぐというよりも、ほとんど引きづって歩いていた。

当時はまだサーフボードが2〜3本入るようなボードケースには、今のようにコロコロ(キャスター)がついていなかったので使い勝手が良くなかった。

当時、住んでいた茅ヶ崎から成田空港国際線まで電車で移動。初めて見る成田空港のターミナル内は旅気分を一気に盛り上げてくれた。

ボードケースのみをカウンターで預け、バックパックを背負い機内へ乗り込んだ。自分の座席を確認し、バックパックを頭上の棚に乗せて座る。重かった荷物から解放されドッと力が抜けた。

『ふぅー!いよいよだ。』

オレは大きく深呼吸をして高まる気持ちをなんとか落ち着かせた。

今回のオーストラリアではどんな波に出会い、どんな経験をするんだろうか?

気がつけば飛行機は猛烈な勢いで加速し、あっ!という間に上空へ舞い上がった。眼下には、まばゆい光を反射した海面がどこまでも続いているかのようだった。

昼頃に成田空港を離陸した飛行機は、トランジットのためシンガポール・チャンギ国際空港へと到着した。

ここでは、機内食や燃料などを補給するため、いったん飛行機から降りて空港ターミナル内で待たなければならなかった。その間、ターミナル内をぶらついた。さすがに、ここまでくると日本ではないので何から何まで英語だ。当たり前のことだけど!ここにきてやっと少し不安になってきた。

オレ、英語話せないよ!大丈夫かな!?  

 持ってきた単語帳を片手にペラペラめくりながら、Excuse me....coffee please...なんとか知ってる単語を使って買い物をして、英語に慣れる努力をした。時間が許す限りターミナル内をぶらついた。気づけば空港アナウンスでなんか言っている。どうやらシドニー国際空港行きの搭乗手続きが始まったらしい。

空の上というのは、よほど気持ちがいいのか!?すぐに眠たくなる。たっぷり数時間かけて飛行機はオーストラリア・シドニー国際空港に到着した。

ここで問題が発生した。

オレのボードケースが見当たらない!まさかのロスト・ラゲッジってやつ!?  出発前にオレの師匠であるオーナーから『海外トリップの場合、たまにサーフボードとかの荷物なくなるから気をつけろよ!』って忠告されていたっけ!そんなことを思い出すが・・まさか!?いきなり出くわすとは!

こんな時は、えっと!なんて言うんだっけ!?英語で荷物がないってなんて言うんだ?

そういえば・・成田空港で『シドニーに着いて荷物がなかったら、このシールを係員に見せてくださいね!』って言われたことを思い出した。シールには,,,Luggageと書かれている。えぇ〜い!Lost Luggageでわかるだろう!

『Excuse me...Lost Luggage!』と尋ねてみる。係員には伝わってないようだ。

『Surfboard!!』と言ってみた。係員、ニッコリ笑って・・着いて来て!って手招きしている。とりあえず着いて行くと、見覚えのあるボードケースが冷凍マグロのようにフロアに横たわっていた。数時間見なかっただけなのに、なんかこうジィーンと嬉しさが込み上げてきた。たわいもないことかもしれないけど・・こういうトラブルも旅の醍醐味なんだよな!きっと!何はともあれ案内してくれた係員にお礼を言った。

『Oh!Thank you so much!』

こうして、オレのオーストラリア一人旅は、本格的に始まったのだった。

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