ポンコツ社畜が新疆ウイグル自治区に行った話⑥ ~カシュガルの行く末
カシュガル観光最終日になった。フライトは15時なので、日の出が10時だったとしてもまあ、4時間ぐらいは観光できそうだなと判断。残り行っていないところを消化するという意味で、香妃墓に行くことにした。チェックアウトついでにタクシー呼んでとお願いしておく。
なお、香妃墓と双璧をなす美しいイスラム建築として、ほかにユスフ・ハズ・ジャジェブ墓がありそこも消化したかったが、実は私は前日にQR決済を使えないからダメ、と言われて追い返されている。
「おたく、中国元受け付けない系?」と受付嬢に言ったら「そうである、帰れ」と言われ、思わず日本語で「ええ~マジ~?遠くからきたのにい~?」とシャウトしたら門番のおっちゃんが苦笑いしてた。
しょうがないので恨みがましく門の外から写真だけとっておく。
最後に墓を訪問して観光を終えるというのはなかなかいいと思った。さびれた墓をみて、ちょっと感慨に浸って、それで日本への帰途につくのである。旅のエンドとしてこれほど相応しいものはない。
ところが、この期待は見事に裏切られることになる。
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香妃墓はカシュガルのはずれにある。帰りにタクシーを捕まえられなかった場合、空港に行くのが遅れて実はわりと詰む。初日にまったくタクシーを捕まえられなかったので不安がよぎった。だが、ここで行かないという選択肢はないだろう。私はビジネスでいくつもの死線を乗り越えてきたじゃないか。実は乗り越える必要のなかった死線がほとんどだが。
そんな不安やら対応策やらを妄想しているうちに、タクシーは香妃墓についた。降りたところで私は異様な光景を目にした。
これは、よく日本の観光名所とかでありがちな観光センター的な奴だろうか。あ~、これだから行き過ぎたツーリズムは嫌だわ。「香妃墓行ってきましたサブレ」とか私絶対に買わないんだから。と思いつつ、香妃墓入り口に直で向かって、門番氏に「おっちゃんチケット売ってえな、30元でしょ?そう某地球の歩き方に書いてあったし」と30元出すそぶりをしたら、「チケットは観光センターで買うべし」とおっしゃる。
しかたなく観光センターに向かう。ところが、その観光センターにかなり度肝を抜かれた。中はピッカピカできれいで、謎の大画面テレビでなにか映像を流している。ええ~…。
気をとりなおして、チケット売り場と思われるところに突撃して受付嬢に「チケットくださいな。30元やろ?某地球の歩き方(以下略」と言ったら、「99元になります☆」とおっしゃる。
なんでそんな値違うの???(泣)
背に腹は代えられないので、なくなく99元をお支払い。99元は1500円ぐらい(2020/01現在)なので勤務時における私の昼食3回分である。3回分。
そして、受付嬢が「これ被るよろし」といって謎のウイグル帽を差し出してくる。「あ~…これ被るの義務なん?」と言ったら「イエ~ス!オー!ユールックグレイト!」みたいなことを言い出した。
look great???
完全に納得がいかないまま、再度門のほうに向かうと今回は通してくれた。門番氏に、「日本から来たん?」と聞かれたので「そうである」と答えたところ「グッド!」と門番氏よりお褒めをいただいた。何がグッドなんだよ。
さて、私の観光に残された時間は少ない。ちゃっちゃと墓を見て感慨に浸ったのちに帰りたいところである。しかし、敷地が無駄に広く、なぜか香妃の家を再現しました的ハウスに迷い込んでしまった。
香妃=すいーとぷりんせす???
中では、ウイグル舞踊ショーみたいなのがやってて、観光客ご一行様がバカ盛り上がりしている。建物などとってもきれいで、インテリア等よく再現されており、往時の生活がしのばれますねえ…
…って、コラアァァ!!ワイはこんな手ぬるい観光をしにカシュガルくんだりまで来たんじゃないんや!もっと魂がひりつく旅がしたいんや!検問で公安に詰められるとか、大蛇にからまれるとか会社の飲み会で語れるような武勇伝が欲しいんじゃ(泣)!
と、一人で怒りに打ち震えながらも時間がいよいよ本当にヤバいので墓に小走りで向かう。しばらくして、ようやく某地球の歩き方を見て一目ぼれした香妃墓にたどりつく。
このミナレット、タイルの美しさよ。。
あー、これは来てよかった。この色使い、このタイルの並び、まず日本ではお目にかからないセンスである。私は99元の怒りも忘れて、ただ感動していた。なお、裏側に一族郎党のものと思しき墓があったが、本当に打ち捨てられてて誰も見向きもしない感があって侘しい気持ちになった。なお、香妃墓自体にも、周囲に誰もいなかった。
これ何パークでしたっけ?
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やたらキレイな建物。高い入場料。その土地に対するリスペクトのなさ。
あ、これって某ネズミーランドと同じじゃないですか?彼ら浦安とかたぶんどうでもいいから東京ネズミーランドとか言って観光客呼んでるんでしょ?テーマパーク的に仕立て上げて、そうやって、たぶんその土地への上っ面のリスペクトを表現してるんだろうなあ…。
なんかサ店とか土産物店とかもある。
そうこうしているうちに本当に時間的にまずいことになったので光の速さで観光センターまで戻り、謎の帽子を返すついでに受付嬢にタクシーどうやってつかまえるのか聞くことにした。すると、帽子はプレゼントで持って帰れと言う。
いらんがな。
と正直に申し上げて国際問題を起こすわけにはいかないので、さんきうと言いながら、どうやってタクシー捕まえるのかと聞いた。すると、
「通りに出て、左手を直角90度に曲げよ。さすれば捕まるであろう」
とのことであった。心配になったのか、わざわざ通りまで連れてってくれて、手の曲げ方までレクチャーしてくれた。まあ、99元も払ったからな!
受付嬢に言われるがままのポーズで通りに突っ立っていたら、ついにタクシーが目の前で止まった。
どうも初日にタクシーがまったく捕まらなかったのは、カシュガルの運ちゃんが冷たいからとかではなく、日本と同様に右手をあげてぶんぶんさせてたのが間違いだったのでは説がでてきた。
何事も予習必要と痛感したところで私のカシュガル観光は終わりを告げた。
写真は、小学校近くで見かけたイラスト。彼らの思う自由というのは、いったい何なんだろうね。
(⑦につづく)
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