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人生で1人出会うか出会わないかぐらいの、出会えて良かったと思える人

自分勝手で、毎回言ってることがコロコロ変わって、支離滅裂で、気分屋で、理不尽で、自分の話ばかりする。
よくよく考えると、この人は良いところが全然ない!……無いんだけど、何故か出会えて良かったなあと心から思える希有な友人がひとりいる。
友人というか、6個上の女の人なんだけど。

伊参スタジオ映画祭、出したいけど何書こう?……と、仕事の帰り道にぼんやり考えていた。最近オリジナル書く時間は満足に取れないし、資料を集める時間もないし、どうしようかなあと悩んでいたところ、そう言えば直近一年くらい身近なことを題材にした作品を書いてないことに気付く。久しぶりに自分の身の回りのことを1本書いてみるか、と思い立ち、駅を出た瞬間に喫茶店に駆け込んで1時間ほどで箱を書いた。
映画『横道世之介』で登場人物のひとりが大人になってから、世之介の事を思い出して「あいつと出会えて、ちょっと人生得した気分かも」と語る言葉がとても好き。”ちょっと得した気分にさせてくれる友人”は、同じクラスやバイト先、サークルに、不思議とひとりくらいはいたりする。
「横道世之介」の世之介。
「桐島、部活やめるってよ」の桐島。
「佐々木、イン、マイマイン」の佐々木。
みたいな人なのかな?と思う。凡人だったり人気者だったり奇人だったり。統一感はないけれど、出会えて得した気分にさせてくれる、不思議と定期的に思い出してしまう人。

私にとっての「思い出してちょっと得した気分にさせてくれる」その友人は、3年か4年ほど前に当時勤めていた会社を突然辞め、結婚しようとしていた彼氏さんと別れ、オーストラリアへ行ってしまった。
そこからしばらく音沙汰がなく、半年後にLINEが追加されて、ちょっとだけ喋った。
「Iさんお久しぶりです。オーストラリアどうですか?」
「お金もないし、英語も上達してないし、知り合いもおらんけど、今めっちゃ楽しいで」
「それは良かったです~」
「ここには過去も未来もなんもなくて、ただ今があるって感じやねん。それってめっちゃ最高やと思わん?」
そう言って、その人は通話を切った。

喫茶店に入った私は、学生時代にバイト先でその人としたくだらない会話を思い出して、ひとりにやついて、やっぱり何だか得した気分になった。

私はその無茶苦茶な生き方をしている友人を心底尊敬していて、憧れていて、是非物語にしてみたいと思ったのだった。