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俺の1694円


「もし1万円あったら………」

麻雀で負けた時、パチンコやスロットで負けた時、競馬で負けた時、読者の皆さんはこう思った経験は少なく無いだろう。

かくいう私も当然その一人である。

麻雀で刺さるのは日常茶飯事だから置いといて、時は2017年6月25日宝塚記念

競馬初心者の私は新宿WINSでうるさいおっさんに囲まれながらうーむうーむと必死に当たりもしないであろう予想を考え、結局投票締切直前に「こいつは来ても3着まで!w」と1000円くらいケチってゴールドアクターを2.3着固定から3着固定に変更したのだった

あの1000円ケチったのさえなければ今頃私の手元には7万が…

発狂した私はこの日は寝るまでずっと頭の中でこう考えていたわけである

「7万円あったら…………」


それから4年弱経った時は2021年4月23日


まさか麻雀の戦術本を読み終えてからこんなことを考えることになろうとは思いもしなかった。

「1694円あったら何でも美味い飯食えたじゃねえか」

と。


麻雀を覚えてから、沢山の戦術本を買っては読み漁ってた私だが、ここ最近はほとんど戦術本を読んでなかった。


最後に手に取って読んだのは、ずんたんの読み本。ひたすらMリーグの振り返りみたいな形で「あの時は俺はこういう読みが〜」みたいな内容が続いてぶっちゃけ「はぁそうですか」以外の感想があまり出てこなかったのが正直なところではあるが、勉強になった場面もあった。

先に言っておくとこれから紹介する本は前半約100ページで勉強になる部分は全くなかった。購入後小田急線で読み始めて新宿に着くまで「俺は一体何を読まされてるんだ?」以外の感想を抱くのは非常に難しかった。


昨日、いつものようにTwitterを漁っていると、新しい戦術本が発売されたというツイートが流れてきた。

おぉ?これは相当勉強になりそうな本だ。押し引きに特化した内容、しかも天鳳で鉄強成績の有名プレイヤー三人が協力ときた。

麻雀で困る場面って押し引きに関するものが多い気がするし、これは絶対に購入しよう。明日は大学の授業に行かなきゃならんのはめんどいがこの戦術本買うのが楽しみだ。

と思いながら布団に潜る。


そして迎えた今日、早速昼に駅前の書店に向かう。置いてあった。


久しぶりの戦術本購入。早速電車内で読むことにした。

レビュー

そもそも戦術本の感想を細かく記すのは初めてのことなので、どの辺まで書き記して良いのかよく分からない。本当はこの本がいかにぶっ飛んでいるのかを馬鹿正直に全て書き記して読者の皆さんにお伝えしたいところだが流石にそうもいかない。

この本に記された戦術の内容や牌姿をどの辺まで書いて良いのかよく分からないので、とりあえず麻雀ウォッチに連載されているネマタ氏の戦術本レビュー集を参考にさせていただいた。

なるほど、レビューを読んでいても、どんな牌姿のどんな場面のことを言っているのかはよく分からない。このレベルなら大丈夫なのだろう、ということにした。

まあ誰がどう見ても私のこの記事は明らかに批評する気満々であるから、(1694円返してほしいのが本音なのだから多少の事は言わせていただきたいところだが)何を言われるか分からん。

なのでこの本で正解とされている具体的な内容、実際に記されていた牌姿を述べるのはやめておく。読者の方々にはご容赦願いたい。

「なんとなくこういった内容が書かれていましたよ」と伝える程度に留めておこうと思う。

①この本の構成
②「そもそも書いてある戦術が怪しい」
③「牌姿のチョイスが謎」
④「何もシンプルじゃない」
⑤「結局押せるのか押せないのか読んでてはっきりしない」
⑥「めちゃくちゃな結論」
⑦「後半パートにおいて、前半パートを活かす場面がない」
⑧ 感想

①この本の構成
この本は2部構成。

前半(約100ページ)
細かい押し引きに関する内容。

詳細は控えるが、「対子、対親のリーチに対してどのくらいから押せるのか」と言った内容が細かく記されている。

対リーチに対して、手牌の打点、待ちの質、巡目に関してどのくらいの要素が揃えば押せるのか?といった内容。

例えば「対子のリーチに対して良形は○点なら押し有利、愚形は○点なら押し有利」と言った感じ。

また同じ良形でも待ちの質、例えば14m待ちと25m待ちそれぞれの場合においての結論を出していたり、結構細かい。


後半(約100ページ)
実際の立体場面における押し引き問題数十問を共著3名が答えていく形式。天鳳で素晴らしい成績を残されている方々のかなり細かい解説が記されている。

②「そもそも書いてある戦術が怪しい」

はっきり言うと、仮にこの本に記されている押し引き基準が正しいと仮定した場合、ほとんどの人がかなり間違った押し引きをしていることになると思われる。

それくらい、この本に記されている押し引き基準は衝撃というか、「これマジで言ってんの…?」という感想を抱いた。深くは記さないが、私が今まで悩むことなく追いかけリーチをしていた手や、押していた副露手はかなり押しすぎらしい。

ちなみにここに記された押し引き基準で打ってる人を私は知らない。

でも、もしかしたらここに記された押し引き基準の方が正しいのかもしれない。

③「牌姿のチョイスが謎」

前半パートにおいて、「七対子はどのくらい押せるのか?」という内容が出てくる。

そこでこんな感じの牌姿が出てくる。(実際に記されている牌姿とは異なる。が、意味合い的にはほぼ同じと考えてほしい)



ここから東を切る場合リーチかダマか?

みたいな問題が出てくる。

読者の皆さんは違和感を抱いたと思うが、とにかく「七対子の押し引き」を述べるのにこのような牌姿が実際出てくる。そしてまたいつもの通り数字を用いてどっちが得か〜みたいな記述。

結論は省略させていただく。

問題はそこではない。読者の皆さんは感じたと思われるが、

4m切ってリーチしないの?

こう思うはずである。私も当然同じ心境であった。

「まあ多分東切りのリーチ判断の記述の後に4m切りに関して述べてくるんだろう」

と、思いペラっとページをめくる。

それに関する記述は全くなかった。

思わず笑ってしまった。マジで牌姿のチョイスが意味不明である。なんで七対子の押し引き基準を述べるのにわざわざこんなメンツ手と選択できる面倒な牌姿を持ってきたのか?

④「何もシンプルじゃない」

これは私の捉え方が間違っていたのかもしれないが、この本の表紙の

「シンプルかつ最重要!」

と書かれたキャッチコピーを見て、

「おお押し引きに関する話をシンプルに述べてくれる本なのか」と私は感じたわけである。

しかし実際は何一つシンプルに記された部分はない。なんならめっちゃ細かい。細かすぎて正直頭に入ってこない。

私はこの本の中身は、もっとこう

「平和ドラ1はほとんど追いかけリーチ!」
とか、
「親満聴牌は残り○筋まで押し!」

みたいな、結構簡単に暗記できるような内容を期待していたわけである。


まず、対リーチの押し引きに対して、「他家がオリの場合のこの手の価値は○点」「他家がゼンツの場合のこの手の価値は○点」とかいう謎の極端な場合分けが出てくる。そもそも他家ゼンツってなんだ?

その上で待ちの質とか自分の待ちの残り枚数が何枚だのめっちゃ細かく場合分けされていて、もう全く持って何もシンプルではない。


これは私が悪いのか?

確かに最後にまとめパートみたいなのは出てくるのだが、もっとシンプルな内容を期待していた私はただ頭が痛くなるばかりであった。

めちゃくちゃ細かく場合分けして数字を出して結論を出すことはとても重要な事だとは思うが、その過程を長々と書かれても私に取ってはただただ読みづらいだけだった。

書いてある内容は正しいのかもしれないが読みづらすぎて何も頭に入らなかった、というのが正直な感想だ。アホな私の頭脳が悪いだろと言われたら確かにそれまでで、それは申し訳ないが。


⑤ 「結局押せるのか押せないのか読んでてはっきりしない」

先程述べた細かな場合分けに対して、この本は押せるのかどうかの評価を下している。

まずこの評価が、
「押し」
「押せる」
「優劣微妙」
「互角」
「やや不利」
「不利」

ただただややこしい。優劣微妙と互角の違いってなんだ。どっちが上よ?押していいの?オリた方がいいの?


わけもわからずしばらく進むと今度はある部分でこんな説明が出てくる。

「やや不利の評価はぎり押しできる」

もう訳がわからん。やや不利なら降りた方がいいんじゃなくてぎり押しなのかよ。

おまけに「やや不利(不利寄り)」とかいう意味わからん表記も出てくるし結局その手は押せるのか押せないのかよく分からんまま話は進んでいく。

⑥「めちゃくちゃな結論」

読者の皆さんは分かると思うが、オーラス特有の押し引きというのがある。アガリトップの時とか、降りられない場面とか。

そういった平場とは異なるケースの押し引きに関して述べられている部分がある。

「この手牌は普段は追いかけない手だが、このオーラスの場面ではどうか?」と言った内容だ。

こう返された。

「どちらを選択するかは打ち手次第だ!!!」

「どこまで読者を馬鹿にすれば気が済むのか?」と思ってしまった。いや確かにここまで散々わけわからん内容を読まされ続けていたから耐性はできていたけどよ。まさかそっちから問題提起してきて結論が「最後は君次第だよ」ってなんだそれ。

⑦「後半パートにおいて、前半パートを活かす場面がない」

先ほども述べたように、後半パートは実戦形式の問題集みたいな感じになっているが、

「ああ前半パートで書いてあったこの内容使えば結論出せるな」なんてものは一切ない。

まあ前半パートがめちゃくちゃだから仕方ない話ではある。

⑧感想

前半パート全部不要。後半パートだけ勉強になる。これぞシンプル。

これに尽きる。今この記事を書きながら実感しているが前半パートで勉強になったと思う内容は全くない。後半パートだけでいい。

前半を読み進めていた時はまさかこのままわけもわからず読み終わっちゃうんじゃねぇかと心配になったが、後半パートは全ての問題に対して、共著の方々の分かりやすい説明がされていて、勉強になる点は多々あった。


ただまあ全体の感想を述べろとなると、やはり前半100ページがあまりにも酷すぎてカチンと来てしまった。


これはあくまでも私の感想でしかないが、例えば麻雀初心者、中級者に押し引きを教えようってなったら絶対にこの本は使わないべきだと思うし、正直前半パートに書いてある内容自体がやっぱり怪しいと個人的には思うから、戦術本として皆さんにオススメすることはできない。


それでも私のレビューを見て、「どんだけぶっ飛んだ本なんだ、逆に気になるな」と思った人は是非書店で1694円払って読んでみるといい。


多分私と同じく「1694円返して」ってなると思うが。


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