デスパレィト☆チョコレート
時を遡ること数日、2月13日の夕方。
ドラムスメが作業場にくる。
「お菓子を買いたいから、連れてって」
仕事の手を張り切って止める。そそくさと手を洗いながら首だけをムスメの方に向けて、あったかい格好をしてきてねと言う。
上はジャンパーを羽織っておるのに下は半ズボン…
寒くない、とムスメ。
いつもの店に車を走らせる。
街を暖色に染めていた夕陽が山の稜線に沈みゆく。山々は橙色の逆光に覆われて、その黒い巨体を連ねた陰が麓の街を這うように吞み込み、薄暗い帳をやんわりとおろしてゆく。
薄暗い帳のおりた田園の真ん中、ぼんやりと灯りを燈し始めたホームセンターにのっそりと入り、車を停める。
店内に入るとムスメは一直線にお菓子売り場へ。
板チョコをとる、入れる。とる、入れる。…とる…入れる。
これでよし、と私の顔を見上げる。
会計を済ませて家路につく。
西の空はまだ暖かい色で染められていて山々の稜線を更に闇くさせていた。
ムスメよ…わかります…明日はアレですもんね。
聞きませんよ、聞きません。わかりますから。
家に帰るやいなや、台所で板チョコを、溶かすムスメ。
わかります。わかります。聞きませんよ。聞きません。
そして、2月14日…バレンタインデー!
私のところに、ムスメがくる!
「目をしっかり閉じて、そこのオーク顔!」
ふふ、お口がわるぅございますよムスメ…
素直にしっかりと目をつむるわたし。
わかります。わかりますのよ。
「お口をあけてくださいな」
素直にギュッと目をつむり、
お口を開けるオーク顔です。
だってわかってますから。
お口に
な
に
か
が
は
い
っ
た
よ
あむっ、
と、
お口をとじたよ。
マッズぅあれ⁉︎……まっずぅうう!!!
ウオェ…オエッオオオエッ!!!
目を開けるとムスメが、笑っている!
「チョコやと信じきってお口をあけてましたか」
「ウオェッ」
「スプーンたっぷりのマヨネーズでした〜」
「⁉︎ウオェッ」
「ドッキリ大成功!!」
「ウオェッwww」
「もぅwww…ウオェッ…ちょっと口ゆすいでくる」
完全に油断した。
そして、ムスメはおもむろに、チョコを渡してくれた。
ありがとう、美味しかったし、楽しかったよwww
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