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ジムニー泥沼物語 その1 30を30で買った話

 ずっと欲しくて仕方なかったジムニー。スズキのジムニーは昭和の時代から令和まで、コンセプトを変えずに作り続けられている4輪駆動の軽自動車。別段クルマ好きでなくてもジムニーの名前は聞いたことがあるだろう。ジムニーの歴史やその個性は他稿に譲るとして、その魅力である。
 現代のクルマは人に優しい。操作は簡単で軽快しかもスマート。衝突防止やスリップコントロール、万一の事故にはエアバッグ。空調も効いて音楽も楽しめる、快適な移動空間である。その反面、エンジンの鼓動は感じられず、オイルの匂いもガソリンの匂いもしない。まるで家電製品のような乗り物になってしまった。時代の求めるモノが、売れるモノ。当たり前だけど、その当たり前がクルマ自体に楽しみを求められないクルマを生み出している。
 「クルマは通勤手段」「クルマは買い物の足」「クルマでドライブ、小旅行」これなら現代のクルマが最適だろう。しかし「クルマに手を入れて自分の好みに仕上げたい」「自分のクルマくらい自分で整備したい」「ワクワク、ドキドキするようなクルマに乗りたい」こう思い始めたら、現代のクルマでは無理なのだ。完成されていて、シロウトが手を入れて改善する部分は殆ど無い。コンピュータの管理が行き届いていて、手を入れる隙も無い。買ってそのまま不満も無いのである。
 この写真のジムニーだが、昭和61年、1986年に生産されたものである。快適装備はヒーターのみ、今どきクーラーが無い。パワーステアリングはおろかパワーウインドウも無いのである。自動車用としては絶滅してしまった2サイクルエンジン。酷くウルサくて、排ガスは臭い。貨物車向きで頑丈なリーフスプリングはダンスしているかのような乗り心地である。
 しかし、このクルマが欲しくて仕方なかったのである。300円の部品を変えても違いを感じる28馬力(現代のクルマの約半分)しかないエンジン。快適装備が無いのなら、自分で付けてやればいい。調子が悪ければ原因を探して直せばいい。遠くへ出かけたら途中でトラブル、動かなくなるかもしれない、、、それも楽しめるなら最高の相棒である。
 オークションで見つけたコイツは最初55万円だった。550ccのジムニーで正式名称は「ジムニー55」だからであろうか?。その値段設定では入札が無く、数度流れたのち、25万円からの入札となった。コレは格安である。レトロブームで旧型のジムニーは高騰している。覚悟を決めて入札、24度の最高値更新を勝ち抜き302,000円で落札。型式から30と呼ばれるジムニーを30万円で落札したのである。
 ここが泥沼の入り口、というよりもドラゴンクエストの毒の沼に近いのかもしれない。しかし、試練の無いところに喜びも無いだろう。ここから泥沼の記録を始めようと思う。

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