人生はマリオカート
堕落した生活を消費していたわけだが、今日はやけに目覚めが良い。颯爽と顔を洗った。気持ちのいい朝に添えて1時間後に出来上がったのは『就活 証明写真 撮り方』『就活 メイク』他人には見られたくない検索履歴。リクルートスーツに締め付けられながら裸足でヒールを履いた。黒髪、薄目メイク、白のシャツ、裸眼。ただでさえ普段の自分を押さえつけられ、ストッキングにも締め付けられるなんてうんざりだった。太ももの稼働領域を狭めるタイトスカート。自分は一番小さいサイズで良いと思っていたが、残念ながらその一個上のサイズだった。認めたくないがどうやら無職は太りやすい。
キラキラとした爪を見ながら、1か月も経ってないのになんだかもったいないなと馬鹿らしい事を考えた自分が情けなかった。だけどソレに対する気持ちは爪を可愛くしたい気持ちよりも下回っていた。そんな事を人事という奴らが聞いたら爪を剝がされる、そもそも耳も貸さないだろう。人事に爪を剥がされるくらいだったら、地獄で閻魔に舌を抜かれるほうがまだマシだ。
「絶対に自分は特別な存在だ」 根拠もない自信が時に、いや常に何かの邪魔をしていた。タイトスカートと慣れないヒールがいつもより歩幅を小さくするくらい、そんなもんだ。足並みは揃えたくなかった。周りを見たらさっきまで一緒に並んでいたはずの人影が徐々に消えていった。どっちが人生のコマを進めてるかと言ったら、消えた人影、消えたのではなく先に行ってしまった影たちだ。あれらは後ろを振り返らない、だから残された自分に気づくものはいなかった。
今は必死にコマを進めようとエンジンを温めている。踏み切るタイミングが重要だと教わった。コースに出遅れた方が良いアイテムが出るそういうシステム。おそらくキラーあたりが直に出るだろうか。卑怯な事はしない、靴擦れで痛む左足をひきづりながら前進するのみ
浮いたネイル代で美味しいごはんでも食べようか。
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