あなたと別れたら絶対に後悔する

「わたしと別れたら絶対に後悔するから」
『…うん、俺もそう思う。』

当時大好きだった彼氏にそう答えられ、
だったらなんで!なんで別れ話を撤廃しないのよ!
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらそう思ったが、
『俺もそう思う』と言ってもなお、別れようとする彼を目の前にもう何も言えなくなった。
じゃあ、なんであなたもそんな顔してるの。
なんであなたが悲しい顔してるの。今にも泣き出しそうな顔してるの。

女の子の恋愛は上書き保存。
こんなに詳細に覚えていても、あの博多弁の彼を想うことはそれ以降なく。
全く新しくしたSNSのアカウントに、共通の知り合いを通じたのか、突然フォローと調子の良いメッセージが届いた時には、
「なんだこいつ」
と思うまでになっていた。
あの時の私が聞いたら、嬉しさが抑え切れずに思わずしたり顔をしてしまいそうな
【やっぱりゆきが一番やった】
そんな言葉も足の爪を切りながら横目で流した。

それはさておき、今お付き合いしている仏みたいな彼。遠距離恋愛1年ちょっと。
今まで浮気男、DV男、モラハラ男と常に男運のなさを実感していたところに、やっと神様が巡り合わせてくれた素敵な彼氏。

今まで、自分中心大雑把なオラオラタイプが続いたが、今回は正反対。わたしのことを第一に考え、尊重してくれる人。
わたしの意見を聞いて、わたしよりたくさん悩み、心配してくれる繊細な人。

そんな優しすぎる彼氏に甘えて、わたしはとことんわがままになってしまった。
絶対に傷つけることはわかっていたため、本人には言えないけど、わたしの中に溜まっていった。

もっと自分を持って欲しい。
あなたの意見を聞きたい。
右か左か選んでほしい。
わたしの顔色を伺ってばかりいないで。
わたしより悩んでしまう人に相談事はできない。
尊重してくれるゆえ、結局わたしが決めないといけない。
心配な顔で不安にさせないでほしい。
少しの失敗もどんと構えて笑ってほしい。

結婚の話を匂わせる彼を見て、このまま一生を決めていいのかと結婚願望がなくなった。
婦人科で多嚢胞性卵巣症候群ですよ、治りませんよと言われて、【妊娠できないかも】という恐怖から、大好きだったはずの子供が嫌いになった。
街で抱っこされてる赤ちゃんに微笑まれて喜んでいる彼をみて、ごめんって思いながら、吐き気がした。
あなたの子供産める子は世の中にたくさんいるよって。

だんだん触れられるのも、近い距離にくることも拒否するように。
大好きだよ、に同じ言葉で返せないように。
トゲのある言い方をしてしまうように。
月に1回しか会えないのに。

気をつけて欲しいと思うことはあっても彼を傷つけたくないと何も言えず、溜め込むようになり、わたしの対応が彼を不安がらせて、悲しませていることももちろん自覚していて。
ごめんねごめんね、こんな対応したいわけじゃないのに、と一人泣く日々が続いた。

でも言えない。
別れ話で彼を悲しませなくない。
このまま付き合っていたら、きっと気持ちも元に戻るはず。

それと、ずるいの。
もうこんなに優しい人に出会えるわけない。
最後までわたしの身勝手な気持ちで、【わたしのために】別れない方がいいんじゃないかって。
最低だよね。
今まで散々の恋愛をしてきて、だからこそ、そんな資格はないとわかっていながらも、【彼を手放したくない】ってそう思う自分がいた。

久々に会う日がやってきた。
遠距離はわたしの都合なのに、彼は毎回会いにきてくれる。
彼はとても嬉しそうに再会を喜んでくれる。
わたしはその姿を目の当たりにすると、余計に【早い段階で別れないと。彼を早くこんなわたしから解放させてあげないと。】と焦った。

そして伝えた。
彼は、『ゆきほど好きになった人が今までいないからどうしたらいいかわからない』
『俺のことを嫌いじゃないなら別れたくない』
『俺の気になるところ、嫌なところは全部言って』
『ゆきの態度で俺を傷つけるという理由なら俺は傷つかないからその理由で別れるのはだめ』
『ゆきと一緒に将来を歩みたい、だからもう一度好きになってくれるように頑張るから』

彼はわたしから、あなたのことを好きかわからない。今後も前みたいな気持ちに戻れるかわからない。と言われてもなお、わたしを第一に気遣い、ストレートに想いを伝え続けてくれた。

わたしが泣くのはお門違いで、絶対に悲しいのは彼のはずなのに、わたしは泣きながら、彼は涙を堪えながら沢山の想いを伝えあった。

やっぱり彼は最高で素晴らしい人だと思う。
本当に優しくて、これ以上にない人だと思う。
一緒にいたら幸せなんだろうなと思う。

わたしが好きになってしまったせいで、沢山傷つけてごめんね。
間違いなくあなたがこれからも一番だと思うけど、でもまた感情が不安定になって、何度も傷つけることは絶対にしてはいけないから、まだ答えは出さない。
これがありがとうの好きなのか、愛してるの好きなのかわからないから。まだ本人には直接言えないけど、
でもわたしは、
【あなたと別れたら絶対に後悔する。】と感じた。

かつて私がぐちゃぐちゃの顔で睨みつけながら元彼に放った「わたしと別れたら絶対に後悔するから」がなんて無意味で傲慢な言葉だったのだろうと、今回の彼の愛に溢れた暖かい言動で6年越しにとても恥ずかしくなった。
そして、いまだにいちいち【後悔】なんていう言葉に囚われている自分に嫌気がさすし、未熟さを実感する。

彼と自分の気持ちに真剣に向き合い、彼の幸せを考えようと思う。彼とわたしの幸せが同じ方向を向いていたらいいな、と思う。
ただ自分の気持ちにはきちんと正直に。それがお互いにとってになると思うから。
本当、こんなわたしでごめん。


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