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デブに親を殺された男

わたしといえば、『デブに親を殺された男の話』だ。
これを話して笑わなかった人はいないくらいの鉄板ネタである。ここまでハードルを上げておいて「つまらない」と感じてしまった人には素直に謝りたいが、おそらくそんな人はこんなわたしのnoteなど読んでいないだろう。

それはTinderで新しいセフレを探していた時のことだった。わたしは沼りやすいのでリスクヘッジとしてセフレは常に複数控えを作るようにしている。その日もマッチした人々と怒涛のようにメッセージの応酬を繰り広げていた。

『マッチありがとうございます!
 めちゃくちゃタイプです!』

その男も、セフレを探していると言った。
恋人とかは正直めんどくさい、距離感は近すぎずに割り切って楽しめる人がいいなどとお互いの価値観は合致していた。
わたしは当時離婚したばかりで、パートナーを作るのはもう懲り懲りだと思っていた。それに、子供もいるので自分の恋愛なんかよりも子供に時間を割くことの方が大切だった。でも人間なのでたまには性欲だって解消したい。そこでわたしはTinderをぶん回すことにした。
その時はすでに中島とおじさんというスタメンはいたものの、やはり4番打者くらいまでは揃えたい。セフレを探しているというそいつはわたしが求めている人物像そのものだった。

そいつは気さくな感じでいろんな話をしてきた。
彼女が3年いないことや、なかなか良い人が見つからないことなど、わたしたちはそういった話で盛り上がった。
そしてとりあえず会ってみましょうということになり、スケジュール調整の話題になったところでわたしは思い出した。数ヶ月前、『ぽっちゃり』の価値観の違いによって起こってしまった悲しい事件のことをーー。
その反省をふまえ、わたしは『ぽっちゃり』などという曖昧な表現を使わず、「わたしちょっと太めで(痩せたあとの)ゆりやんレトリィバァくらいあるんですけど大丈夫ですか?」と送信した。

するとほどなくして男から返ってきたメッセージはこうだった。

『デブは見た目が苦手だし、自分の体調管理もできないような人とは価値観も性格も合わないと思うのでやめておきます。では』

わたしは目を疑った。思わず三度見くらいしたと思う。
突然の『デブ』。
これまでTinderをやってきて、ここまでストレートに言われたのは初めてだった。それまで普通に楽しくやり取りをしていたはずだったのに、まさに青天の霹靂だった。明智光秀に火を放たれた織田信長くらいびっくりしたと思う。
と言うより顔が可愛くておっぱいもでかいのだから、腹が少し出てるくらいは少しくらい目を瞑ってくれても良いのではないか。それにお前はわたしをデブと罵れるほど自己管理が完璧にできているのかということも疑問である。
なぜ相手に気を遣ってデブであることを申告したのに罵られなければならないのか。デブに何か恨みでもあるのだろうか。そこでわたしが導き出した答えは一つだった。

『え? 急にどしたんデブに親でも殺されたんか?』

わたしがそう返信すると、デブに親を殺された男は一瞬でマッチを解除してしまったのだった。

ーー勝った。

わたしは心の中でガッツポーズを取ると、やり取りのスクリーンショットをフォロワーが2,000人いるTwitterに公開した。

その後もこのネタはどこで話しても爆笑をとり続けており、今ではデブに親を殺された男に感謝しているほどだ。いつかまたTinderでマッチしたら、お礼を言いたいと思っている。

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