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大きいことは片肘ついて小さくサラッと言う


ひまだ…。


いつも慌ただしいスケジュールの中にいると空白の埋め方がわからなくなる。空白の埋め方がわからないから慌ただしさに身を置いているのかもしれないけど。

僕の今の状況を説明しよう。
今僕はチックコリアの名盤『Light as a Feather』を聴きながら札幌の大通公園のベンチに座っている。
チックコリアか大通公園、どちらかでも知っている人にはもうこの暇さが伝わっているだろう。暇な人はスペインばかりをリピートして「かっこいいなぁ」と言いがちだし(偏見)、大通公園のベンチに座る人は大体暇そうだ(偏見)。

少し身を乗り出すとテレビ塔のようなものが見えて、中央部にでっかい時計がついている。Panasonicと書かれた大きなデジタル時計は3:24を表示している。時計にとっても今日イチ暇なタイミングだと思う。

ベンチにはいろいろな人が座っていて、僕の左のベンチに座っているご婦人は食パンをちぎって鳩に投げつけている。服装は濃いグレーのセットアップに120デニール以上はあろう分厚いタイツ。このタイツが濃い茶色をしていて、なんだろう、なにか見覚えがあるような…。僕の記憶を何かが掠める。

そうだ、田楽だ。

こんにゃく味噌田楽

色の合わせがこんにゃく田楽のように見える。
鳩も目を丸くして「ポッポー(それだ!)」と思ってるような顔をしている。

最近うちの女性スタッフたちがパーソナルカラーについて喋ってた(盗み聞き)。ブルベやらイエベやらロエベやら、いろいろあるらしい。更にはサマーウィンターとジャンルが細分化されるようだ。僕にはよくわからないがこちらのご婦人はきっと茶ベのウィンターだ。こんにゃく田楽は冬に食べたい。
ちなみにご婦人と言ったがお見受けするところたぶん性別は男だ。しかし性別と性質が一致していないことなど今更珍しいことではない。どっちでもいい。

右側のベンチには暇そうなおじさんが座っている。暇そうだという以外に特筆すべきことは見当たらない。強いて言うと、寝てる。

目の前には噴水があって、多くの人がその噴水を囲みながら思い思いの時間を過ごしている。

僕は気づいてしまった。


これ、全員暇だ。


そもそも札幌は僕にとって慣れた場所ではない。次の予定まで大きく時間が空いてしまっては未開の地に放り出されたようなものだ。

ということでパソコンなどを開き、徒然なるままに、それはもうツレズレに任せてnoteを更新しているわけだ。

せっかく更新しているのにこのまま終わったんではよろしくないので、最近考えていることを書いてみようと思う。ポムダムールの出店計画などはどうだろうか。4つ、候補地がある。
せっかくだから4つまとめてご紹介しよう。ポムダムールのスタッフも知らないホヤホヤの情報だ。


①目の前が青い海

一緒に旅して嬉しそうなりんご飴

ポムダムールの使命は「りんご飴の真の魅力を全国に届けること」だ。
この場所はりんご飴文化が薄い。そりゃそうだ、送料エグいし、高温多湿な環境、日本で一番りんご飴にとって厳しいだろうだからやりたい。これは大きな挑戦になる。もちろん観光地なんかに作ったりはしない。だって観光地には地元の人は行かないでしょ。行くかもしれないけど、もっともっと生活に根ざした場所がいい。ここに住んでいる人たちに届けたいのに観光客を相手に商売してどうする。
「全国に届けたい!」って大きいこと言いながら観光地ばかりに出店する飲食店がたまにあるけど、あれ嘘だと思うわ。
僕は金では動かない。大事なのはその先にいる人たちに意味のある出店をすることだ。


②ポムリミナルの二号店

大阪店の2階は不思議空間

ポムダムールにとっての二号店、大阪店を作る時に店名を【ポムダムール】にしなかった。東京の二号店ではなく、大阪の人たちのために大阪の一号店を作りたかったからだ。
店名はポムリミナル。リミナルは『境界』を意味する。外と内、過去と未来、夢と現実、それら相反する二つの間『境界』をここに作った。
ポムリミナルは自由気ままにポムダムールとは少し違う独自の路線を開拓した。姉妹店の文字通り、のような雰囲気がある。そのリミナルが二号店をつくったらどうなるのかと興味が出た。
いつも姉の後ろについていた妹が、あの不思議空間が二号店をどう作り上げていくのか。


③映画の舞台、田舎のど真ん中

とっておきの秘密基地

目の前にはなだらかに広がる雄大な連峰。周りは田んぼ。めちゃくちゃ行きにくい。秘密基地にはそういうロケーションがピッタリ似合う。柔らかい風がカーテンを揺らす。ラックスマンのアンプとB&Wのスピーカーが揺らすうっとりする音色にホロ苦いカンパリソーダ、そこに僕たちとりんご飴。
行きにくいということは、簡単に邪魔されないということだ。映画の舞台にもなったこの場所はとっておきの秘密基地になるだろう。


④あやしい昭和スナック

昭和を切り抜いたような空間

ここが一番攻めてる。ある意味、一番ポムダムールらしい。なぜかというとこの地域は歴史ある歓楽街だからだ。
新宿店を考えてみてほしい。東京の代表的な歓楽街である新宿。ある女王は言った、子供ながらに魅せられた歓楽街、大遊戯場歌舞伎町。その一角に僕はりんご飴専門店を作った。中が見えないビルの2階で、1階はタトゥー屋(健全よ)、夜中の12時まで営業していた。ポムダムールってのは出だしから攻めてる。ポムダムールは想像の斜め上にある。
りんご飴は非日常。口に入れる瞬間、ドキドキする。置く場所も非日常じゃないと面白くない。お祭りなんかが正にそうだ。経験したことない体験は、体験したことのない場所で。


だいたいこんな感じで考えている。
その土地とそこで生活する人たちに思いを馳せ、りんご飴のある風景を想像する。運命がかかった計画ほど、数字ではなく心で決める。
こういう大きいことは片肘でもつきながら小さく言うのが良い。

田楽マダムはもういない。右のベンチで寝てたおじさんも起きたようだ。
僕もそろそろ暇じゃなくなりそうなので今日はここまで。
みなさんはどこに興味があるかな?

では。



株式会社ポムダムール
代表取締役 池田喬俊

2014年に日本初のりんご飴専門店【ポムダムールトーキョー】を新宿にオープン。『美学に従って、ロマンチックに』を経営理念に全国で5店舗を運営。好きな食べ物はフライドポテト。

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