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映画メモ 06 【パフューム ある人殺しの物語】

ずっと見たかった作品。
映像では伝えられない「香り」をテーマにした作品にどのくらい入り込めるのかと思ったけれど、没入感のすごい映画でした…。


映画メモ 06 【パフューム ある人殺しの物語】


※ネタバレします。

ざっくりとしたストーリーは、異様ともいえるほどの嗅覚を持った男性が究極の『香水』を求めて逸脱した行動に奔る連続殺人サスペンス。

主人公ジャン=バティスト・グルヌイユが香りを感じる時、こちらにまで香りが伝わるかのような表情や演出がすごかった。

前半はとにかくいろんな香りがする!

グルヌイユが生まれた18世紀末のパリは、私たちがイメージする"パリ"とは程遠い、悪臭漂う街。眉間にしわが寄ってしまうような臭いがするであろう情景がショッキングで…。

貧困の差も激しく、青年になったグルヌイユは街に出て、これまで知り得なかった上流階級のさまざまな香りを知る。そこで『香水』というものに初めて出会うシーンは本当に印象的だった。豊かで色鮮やか。

そして、理性を失うほど、生涯を費やすほどの香り=果物売りの若い女性に出会ったグルヌイユの静かな狂気。香りのために殺してしまったことよりも、遺体の残り香に夢中になる姿は衝撃的で、ここから全てが始まってしまう予感がした。


香水屋で働いて、持ち前の嗅覚で店を繁盛させるグルヌイユ。このまま調香師としてお店を継いでいたらな…。

あの忘れ難い若い女性の香りを記憶すべく、なんとかヒトの香りを保存しようとするグルヌイユの実験がまた狂気。どんな技術を用いてもヒトの香りは保存出来ないと気付いて香水屋を離れる。

グルヌイユが去った香水屋は、その晩に家の崩壊とともに亡くなってしまう。この映画、関わった人物があっさりと亡くなっていく。あまりにあっさりと。

狂気が暴走する後半

香りの聖地"グレース"に向かう途中、また忘れられない香りの女性(ローラ)に出会うグルヌイユ。ローラを演じるレイチェル・ハード=ウッドが美しい!

グレースで順調に香水作りを学ぶグルヌイユの姿は狂気の欠片もないほど優秀なんだけど、全てが「ヒトの香りを閉じ込めるため」だと思って見ていたら、それはそれで狂気。

そして、若い娼婦を殺して脂で覆い体臭を閉じ込めることに成功すると、伝説と言われる13種類の香油にならって、残り12人も殺して香りを閉じ込めていく。

本当にあっさりと亡くなっていくから、怖いとはまた別の感情。そんなに悪いことをしているように見えなかった自分が一番恐怖な気がする。

もちろんどんどん若い女性が殺されていくから、グレースの街は大混乱。ローラの父親ももちろんローラが狙われると危惧して警察に掛け合うものの、警察は混乱をおさめるためにとりあえずの人物を逮捕して一件落着ということに。

絶対安全と思われる場所に避難しても、グルヌイユの嗅覚は侮るなかれと、結局見つかって殺されてしまったローラ。もう誰もグルヌイユから逃げられない気がする。

圧倒される、ラスト。

グルヌイユはローラを殺して13種の香油を手に入れて、ようやく熱願し続けた香水を完成させたものの、警察に追いつかれ逮捕される。

ここから、絞首刑のシーンはもう…映画史に残るのではと思うような、異様な光景。ローラを含む13人もの若い女性から作り出した香水を振って絞首台に立つグルヌイユを、民衆は「天使だ!」と叫んで仰ぐ。そして民衆同士が愛を確かめ合って、一番彼を憎んでいたローラの父親ですらうれし涙を流す始末。

どうにも理解できないことが起こっている光景が、本当に印象的。映画ってすごい、と思わずにいられない圧倒的スケールのシーン。苦手な人も多いかもと思いつつ。

最終的に、グルヌイユは生まれたパリ(変わらず悪臭が漂っているよう)に戻って、無気力に香水を全身に浴びる。その強烈な香りに恍惚としたホームレスたちが寄ってたかってグルヌイユを食べてしまう、という最後の最後まで圧倒。


「ああ、すごいものを観た。」
とため息をついた究極の大作映画でした。


香水大好きなんだけど犬を飼っているのと飲食勤務なので着けられないジレンマ

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