18/n//////////////////僕の誕生日

 今の僕が語り得るものなど、「現状についての断章」と、高校生活について(「断章」のような話でなく、私の内面に漸近する話。高校生でなくなったら形にしたいが)を除けば、他に何かあるだろうか。高校という単位に分解されない、統一的な「自分史」など、片手間に記せるものではない。いや、この世界は桎梏[漆黒]と恣意に満ちているから、その意味において小説より奇なのだから、統一的な自分史など、それこそ小説”フィイクション”でなければ構築できないのに。

 さて、18歳になった。R18の黒やピンクの暖簾をくぐれるようになった。選挙権を得た。深夜の外出が可能になった。運転免許が取れるはずだ。あと数か月もすれば、高校生でなくなるのだから、パチンコもできるだろう。法が積極的に守ってくれなくなった。純真が消え去った。疑念を甘受するようになった。がむしゃらと疎遠になった。言葉だけが先行していて、私が追いつかなくなった。失ったものは数えられない。虹色は鈍色に変わり、オトナの世界に指先が触れた。

 「言葉の先行」は、私の発言の特徴を、鋭く照らしている。目を背けられない苦しさ。事実は動かず、私ばかりが逃げまどっている。逃げてばかりだ。思惟[恣意]を考慮すれば、私は私のこれまでを否定するしかない。否定しえないのに。これでn周目。あと何度繰り返そうか。顎に手を置いて、事実から目を背ける僕は、ただリングワンダリングする。

 積まれた本には何が書かれているのだろう。斜め読みした参考書はどれだけ覚えているだろうか。単語帳とは友達になれたかい?忘れてばかりだ。惚[呆]けてけてばかりだ。勉強しなければならない。今からでも向き合わなきゃいけない。整うのを待ってる場合じゃない。18になった。なってしまった。ズレた。もう18だ。どこでボタンを数字を選択を志向を人生を、掛け違えたんだろう。絡まった糸を断ち切ろうとした報いだ。結び目は解くものだ。言葉だけが風に飛ばされず私を表象している。「ふ」と息を吹きかけて、残ったのは、このぱらぱらな言葉だけで。

 私が手に入れたものといえば未達成の印[著し]と友人ぐらいであろうか。見上げるあなたを友人と呼ぶのは間違っているが、自意識に踏まれても潰れなかった、この僅かなものに、愛着を抱いてしまった。感謝の言葉は18年経って擦り減ってしまったが、慣れ親しんだ友人には、どうしても感謝を伝えなければならない。しがらみを忘れて、ただ、感謝を。ありがとう。ありがとう。ありがとう。

 慣れ親しんだものに、私がいる。四散した破片も、私に他ならない。いつか、友人を抱きしめるように、この出来損ないを、抱きしめられるだろうか。不測だと直せない。不足を知らなければ直せない。最も僕の文脈を表す、この言葉にゆだねて、この取るに足らない文を、ここに残す。

 願わくば、形にならんことを。

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