よく聞く「ワインマナー」に(ほどよく)マジレスしてみた
どうも!日本一分かりやすいワインソムリエ(自称)のティモシーです!
正式にいうと4月に独立を控え、飲食業から一旦距離を置くので「ワインソムリエって名乗っていいのかな?そもそもソムリエってなんだ?」という禅問答が脳内を巡っているのですがそれはまた別の話で。
恐れ多くも日本で一番ワインを分かりやすく伝えます!と謳っていることで、様々な方からワインに関するご質問をいただきます。実際に
「こんなワイン探してるんだけど〜」
「結婚記念用にいいワイン買いたくて〜」
「この中でどれがオススメ?(居酒屋の酒メニューパシャ)」
などの具体的なワイン探しをお手伝いすることも多いのですが、同じくらい多い質問がワイン周りのマナーについてです。
時代は令和に入り、今でこそ1,000円以下でも色々なワインを楽しめるようになりましたが、フレンチレストランで食事とゆったり楽しむという印象がいわゆる『ワインの一番の楽しみ方』と今でも思われていることでしょう。
個人的にも、レストランなどで食事や空間も含めてワインを楽しむのをオススメはしたいのですが、多くの人が「え、ちょっと難しそう…」って感じているような気がします。
そう思わせてしまっている原因のひとつはマナーの分かりづらさ。煩わしいことを気にするくらいなら、最初から馴染みのお店にふらっと友達と飲みに行くほうがはるかに気が楽です。
とはいえ、もしかしたらデートなどの『ここぞっ!』ってタイミングでフレンチに行くときもあるかもしれませんね。そんな時に「あれ…?フレンチって行ったことない…何すりゃいいの…?」とふと自分の経験値の無さに気づくわけです。
実際に僕のもとにDMを送ってくださった男性の多くから
「好きな人を連れてフレンチに行くんだけど、どうすればいいのかわからない…恥をかきたくない…』
という魂の叫びが届きました。
皆様のフレンチデートに幸あれ。
でも、安心してください。今は令和です。
ネットでググればいくらでも情報が出てくる時代じゃないですか!
困ったらすぐに一旦調べてみましょう!ということでググってみた結果こんな感じです。
いっぱい情報が出てきました!これでもう安心だね!ヤッタネ!
…本当にそうでしょうか…?
最近だとネットの記事が実は誤情報で、間違った知識を広めている可能性もなくは無いです。もちろん、僕が間違った知識を覚えている可能性もあります。
というか、多くの場合「これが正しいマナーです!」って公言してるものがサイトによって違うこともあるのでもうパニックです。
理由もなく「ネットに書かれているから」だけで判断してしまうのは尚早なのではないか?本当の中に嘘が混じっていても判別ができないのではないか?
ということでこのnoteでは
ネットに蔓延している「ワインマナー」が
本当に必要で大切なことなのか説明も入れつつ解説
させていただきます!
ちなみに先に補足しておきますが、現状多くの人に届いているワインマナーを見貶すつもりはなく、もう少し踏み込んだ内容も含めて知ることで皆様に「もっとワインって自由でいいんだけど、知ってると便利だよね!」って感じてもらえたらと思っています🍷
①「ワイングラスはどこを持てばいいの?」
ここで皆様に質問です!
ワイングラスを持つ場所はどこが正解でしょうか?
多くの人が「2番でしょ!」と思われる中、もしかしたら「いや、1番が正式なマナーだって聞いたこともある…」という意見もあるかもしれませんね。
先に答えから言うと…「どこを持っても問題ないが、2番のステム(グラスの脚部分)を持つ人が圧倒的に多い」です。
厳密なルールとしてどこを持つべきなのかが存在するわけではありません。例えるならエレベーターは右側に立ち、左側は歩く専用に開けておくみたいな感じです。もともと「このほうがいいよね?」と言われていたことが徐々に慣習化されていくような。
「でもボウル部分(ワインが入ってる部分)を持つほうが”分かってる”感じがするのでは?」
「海外だとボウル部分を持つほうが主流だよ!」
という意見もありました。
この定説が広まっている理由として、国際首脳会議や海外のパーティーなどの時に『ボウルを持っている写真』が出回っているのが原因かもしれません。
大統領たちは皆ボウル部分持ってますね…
ということは国際的にはこの位置で持つのが正しい?と思ってしまうのも無理はないです。
この持ち方は『プロトコル』の立ち位置に近いのかもれません。各国で決められたものではなく世界統一させて『公的な場所ではこうしようねー』というマナーです。ちなみにプロトコルに法的な内容は介入しません。
それ以外にボウル部分を持つ目的として
・グラスを持ちながら歩く時の安全面のため
・冷蔵庫で冷やしすぎて美味しい温度じゃない時、手を使ってちょっと温めて美味しい温度にしてあげる
などが挙げられます。確かに海外の人が多く集まる場所で多く見られる持ちかたなのかもしれません。
でも別にこの持ちかたが正しいというわけでは決してないです!フランス人も多くの人がステム部分持ってますし。
サイトによっては
・「ステム部分を持つのが正しい」
・「ボウル部分を持つのが通の持ちかた」
なんて断言されていることもあります。個人的にはステムを持つほうが美しくエレガントに見えるのでぜひステムを持ってワインを飲んで欲しいとは思いますが、飲みやすい持ちかたで自由に楽しんでください!!
②「注いでもらう時に手はグラスに添える必要あるの?」
フレンチレストランに行くと、サービスマンやソムリエがワインを継ぎ足してくれることがあります。
そんな時に僕らはどうすればいいんでしょうか?これらの対応策として、ネットではこんな意見があります。
「グラスの底を指で押さえるのがスマートです」
「何もせずに注いでもらうのを待っておきましょう」
「注いでもらう時にグラスを持ち上げるのはやめたほうがいいです」
ワインを定期的に飲む皆様ももしかしたら、このどれかを実践しているのではないでしょうか?特に
「グラスの底を指で押さえるのがスマート」
の情報を見たことがあるかもしれません。
こちらも結論から言うと「そんなマナーはないが、取り立てるほどではない」です。
ソムリエ的立場から言うと一番ベストだと思う対応は、注いでもらうのをいい意味で気にせず会話を続けてほしいと思っています。なるべくお食事の邪魔をせず、必要な時に必要なだけ提供する”黒子”が僕たちの仕事ですので、注いでもらった後に軽く会釈で問題ないと思ってます。
ですが、グラスの底を指で抑えている方々は、
それを正しいマナーだと思っている
Ⅱ
周りに丁寧な行動を心がけようとしている
気持ちでやってくださっていることを思うと、「そんなマナーなんてないですよ!」って断定するのも野暮なことです。お互いが気持ちよく空間を楽しめるのなら、それが一番です。
ただ、注いでる時にグラスはできれば持ち上げないでください…!マナー的な話ではなく、普通に注ぎづらくてこぼすリスクが生じてしまいます。酔っ払ってしまって手元がおぼつかないお客様に注ごうとして盛大にこぼしてしまった僕が言うので間違いないです泣
③「ワイン注文した時の”テイスティング”って何?」
フレンチやイタリアンのお店でワインをボトル注文した時に、大抵の場合”テイスティング”という作業が最初にあります。簡単に言うと『選んだワインに味の不良がないかチェックする』作業です。
味が美味しいか好みかどうか等の判断ではなく、不快な匂いや味がしないかどうかをチェックする目的(ブショネ、熱劣化などの確認)ですが、普段飲み慣れてないと結構分かりにくいです。プロとして仕事をしている僕らでも「これは…どっち…?」と悩んでしまう時もあります。
なので、多くの場合特別な意図はなくただ儀式的に行なっていると思っておいてください。ほとんど問題ないことが多いです。
一般的な流れは以下の通りです。
①ソムリエがちょこっとだけグラスに注いでくれる
②香りを嗅いで口に含んでチェック
③問題ない場合「問題ないです(大丈夫です)」とだけ報告
④飲む人全員に注いでくれる
大抵の場合、食事をするメンバーの中で一番ワイン好きかワインを注文した人担当になります。どうしても不安な時はお店の方に「これって大丈夫でしょうか?」って聞いてしまってもいいと思いますよ!
④「ソムリエさんに"お任せで"って注文したらダメなの?」
これはちょっとびっくりしたんですが、記事によっては
ソムリエにワインセレクトを任せることは良くありません!
という旨の記述がありました。
…いや、そんなことないですよ!!全然任せてしまってもなんの問題もないですよ!!むしろソムリエの真骨頂で最大の腕の魅せどころなので、全力でお選びしまっせ!と腕が鳴る瞬間です。
ただ、(この情報があると更に選びやすいよなぁ)と思うことはあります。例えば値段。このくらいの価格で収めたいと思っている目安を教えていただけるとベストな選択に近づけると思います。
「料理に合わせて、3人で2本飲みたい」のようにどのくらいのお酒を楽しみたいのか報告すると、それもうまいこと調整してくれます。
世の中には何も言わず、お客様の意図を察知して『この人は今日こういう感じでお酒を楽しむんだろうな』を理解する千里眼の持ち主がいらっしゃいます。その方がいる以上、同じことをできてないのは鍛錬不足に他なりませんので申し訳ないと謝るしかありませんが
より確実に楽しくワインを楽しむ意味でも自分が今日どういう風にお酒を楽しみたいのかを伝えて、ソムリエやサービスマンを誘導するのも1つの手だと思います!
⑤「ワイングラスはくるくる回しちゃダメなの?」
ワインを飲む時にグラスをくるくる回す…
実にワインを楽しんでる感出てますね!
スワリング(グラスを回す動作)をする目的を簡単に言うと「回すことで香りが広がった味わいが変化したりする」ということなんですが、これのマナーも多くの記事にまとめられてます。
・右利きの人は反時計回りにスワリングする
・回しすぎるのはあまり美しくない
これらは確かにマナーとしては正しいです。理由もそれぞれちゃんとあるので、可能ならぜひ覚えておいて欲しいのですが絶対に守らないといけないなんてことはありません。お好きなように回してあげてください。
ちなみに、スワリングは結構コツが必要で綺麗に回すにはちょっと練習が必要かもしれません。ご自宅にワイングラスを持ってる方は、お水を入れて回す練習をしてみてください!
⑥「ワイングラスはぶつけて乾杯しちゃダメなの?」
ワイングラスで乾杯する時はぶつけないでください!
これも多くの記事で書かれているマナーです。これに関してはなるべく守っていただけると嬉しいです。
マナーだから、という理由ではなく普通に危険を伴う可能性があるからです。薄くて割れやすく、しかも割れた破片が非常に危ない形になってしまうことも多いので、乾杯はなるべく持ち上げるだけで大丈夫です!
ただ、グラスによってはしっかりとした作りになっているものもあるので、乾杯をする時にはグラスの厚さに注意してそっとぶつけましょう。
『マナー=答え』ではない。
自分も一時期Webライターをしていたこともあるので、どういう記事にしたほうがアクセスが増えるか、とか考えながら執筆したこともあります。その経験から当然ネット記事は曖昧な表現よりも断定的な表現のほうが好まれやすいという構造も理解しているつもりです。
ですが『マナー』に関して言うと、決して断言してはいけない領域だと僕は思っています。
マナーに関する話でこんな経験があります。
とある夜、友人とフレンチを楽しんでいた時、両隣にカップルが座っていました。職業柄近くのお客の反応も気になってしまい、カップル達の行動を耳で追いかけていました。
右のカップルはどうやら初めてフレンチにきた模様。年齢も大学生ほどで、慣れないコース料理に悪戦苦闘していました。でも、「上手くいかないね!」なんて笑いながら楽しむその姿にほっこりしました。
一方、左のカップル。男性は実に慣れた様子で注文を進めていますが、女性は少し困惑している様子。少し気弱そうな印象も相まって、終始男性に「あ、違う。それはこうやるんだよ」と指導を仰いでいる状態になっていました。
決して男性の態度が高圧的ではありません。しかし、女性が心の底から「楽しかった!」と思えるような食事ではなかったように感じます。あくまで第三者目線ですが。
マナーとはその空間を最大限楽しむことを前提とした取り組みだと僕は解釈しています。
例の若いカップルのようにルールとしてのマナーを知らなくても、今自分たちがいる空間を全力で楽しもうとする言動のほうが素敵で、マナーに詳しかった男性のほうがよっぽど「マナー違反」に感じました。
ワインがとっつきづらい原因のひとつがルールとしてのマナーです。でも本当に大事なことは、僕たちがワインを純粋に楽しむこと。詳しい人たちがいたらちょっと専門的な話で盛り上がるのもいいでしょう。知らないけど興味を守ってくれる方がいたら話で盛り上げつつちょっと得意げに話すのもいいでしょう。一番大事なマナーである「最大限楽しむ」を前提に、周りを笑顔にできるか、不快に感じさせることがないかを考えることが1番のマナーのある行動だと強く主張したいです。
今日も皆様、マナーを守ってワインを飲んでくださいね🍷
文章苦手ながら頑張りました!