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人生の午前中

「コロンビア、ましてその地方都市に知り合いがいる」というシチュエーションは多くの人にとってあまりないことらしく、「泊めて(あげて)ほしい」と言われることが多々ある。直接の知り合いならまだしも、「後輩が」「前知り合った人が」というレベルで。基本的に困っている学生さんが多いので、問題なく我が家のゲストルームにお泊りいただく。

1年半前にコロンビアの大学院進学を考えて下見に来た男の子。コロンビアに拠点を移すことを考えるのは基本的に南米初心者ではないので、彼のJOCV話やら、パラグアイとニカラグアの比較は大いに楽しませてもらった。

コロナの影響でせっかく合格した南米の大学院に入学できずに日本でくすぶるのも限界ということで、7月に渡航を決めたと某日我が家に挨拶に来てくれた。せっかくなのでとビーフシチューを作り、ハード系のパン、シーザーサラダ、オムレツと小松菜のソテーでみんなでランチ。

30歳の男の人が4歳児と1歳児の嬌声かしましい社宅で居心地よくしてくれるか不安だったけれど杞憂に終わり、むしろ子供好きで相手してくれて助かった。「外食もいいけど、やっぱり子供いると自宅のほうが楽だよね~」と夫婦で語らう余裕まで。

7月にコロンビアに戻るんだとか。南米駐在組はまだ日本滞在が長丁場になりつつあるので、やはり単身で身軽、学生であることを生かした今の渡航になったらしい。

「もう待っていてもしょうがないし、日本で無職なのもイヤだからしびれを切らして・・・」

自嘲気味に語る表情はどこかせいせいしていて、私が彼でも、渡航を決めたかもしれないと思った。

今しかできないことってあるもの。20代の1年間と30代の1年間は違う。自分で落とし前をつけられる範囲での自由な行動は、いかなる時代でも保障されて当然。草の根外交官として、堂々とコロンビアにわたってほしい。

「次は向こうで会おうね」。

一人の勇敢な決断を玄関先で見送る。

「幸せって、成果ではなく一日のうちにどれだけ幸せな時間と思えるか、だよね」。

4歳児と1歳児を追いかけながら、コロンビアで維持している家の家賃と公共料金の請求書を計算しながら、私は今日本に生きている。



主に書籍代です。