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名前の花をもらう人生

昨日、客人があった。2年間こちらの大学院で働きながらインターンしていた日本人学生の男の子で、来月日本に帰国するという。
親戚もいない中で、数か月に一度顔を見せてくれる存在ではったけれど、一度パートナーと私の出張が重なり、一泊我が家で子どもたちと留守番をしてくれた。タクシーでマクドナルドに連れていってくれた思い出がよほど強烈だったようで、その日から「お兄ちゃんパパ」と呼ばれて慕われている。
裁縫が得意で、制服の裾上げやひざあての補強も、文句ひとつ言わず朝から付き合ってくれた。この国では苦手な家事は外注できるのだけど裁縫だけはがっかりすることが多く、昼食と夕食をごちそうするだけで「楽しいです」と言いながら丁寧な仕事をする彼は貴重な話相手でもあった。

最後に渡したいものがあると持ってきてくれたのは、カトレア(蘭)の鉢。郊外の町で見つけたんだという。
蘭はコロンビアの国花で、うちの子の名前はそこからとった。周りを元気にするという花言葉の通りになりますように、そして花の女王といわれるくらい、素敵な人に育ちますように。

名前の花をプレゼントされる人生がこの子にはあるのか、と開眼する思いだった。花を見て、思い出してもらえる。なんて幸せな人生だろう。

お兄ちゃんパパは来月からいなくなる。
「初めて蘭の花をくれたのは・・・」といつ、この子の言の葉にのぼるようになるんだろう。そのとき、お兄ちゃんパパは、そして私はどこにいるんだろう。
その日を待ち遠しく思いながら、鉢の葉をそっとさわる朝。


主に書籍代です。