2015 埼玉県立大学 編入学・社会人特別選抜 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」



問題1
「遺伝子検査サービス」の消費者への利点は、検査が簡単であり、利用者は体質や病気のかかりやすさを知り、健康管理に役立てられる点である。他方、ビジネス事業者への利点は、遺伝情報のビッグデータの活用のために、多数の健康人の遺伝情報を集めるのが容易になる点である。



問題2
遺伝子検査ビジネスの問題点は何だろうか。私は、遺伝子情報の漏洩の可能性があることが問題点だと考える。なぜなら、遺伝子情報が漏洩した場合、特定の遺伝子の保有者が差別される可能性があるからだ。たとえば、仮に遺伝子情報から病気になるリスクが高いことが明らかになれば、生命保険の加入で差別を受ける可能性があると考える。また、婚姻や出産においても、病気や障害をもたらす遺伝子を保有する人間は差別されることになる。さらに、治療法のない重篤な疾患の遺伝子診断は大きな倫理的問題を抱えていると考える。出生前診断の結果によっては、両親に極めて難しい決断をせまることになるからだ。
以上のような、遺伝子情報の漏洩から派生する諸問題に対する対策は、政府による統制機構を整備することだと考える。つまり、行政が遺伝子検査ビジネスを規制・監督し、情報漏洩を防止する取り組みや法整備を行うべきだと考える。なぜなら、遺伝子情報は、特別な個人情報であり、保護されるべき対象だと考えるからだ。(427字)


問題1
途上国は温暖化への責任がないにもかかわらず、温暖化の影響を最も受けることが判明している。しかし、経済的状況も含め、温暖化による気候変動に対する生き残り戦略が整えられていない点で、温暖化に対する生き残りから隔離され、取り残されてしまっているという状況を下線部の文章は意味する。(137字)


問題2
キーワード:開発援助

我が国においても、気候変動による長期的な雨や集中豪雨による浸水被害が多発し、作物に損失を与えたり、犠牲者を出したりしている。気候変動による自然災害の被害は大きく、国家的な対応が求められる。途上国のように経済的状況も安定しない国では気候変動に適応することは困難である。それでは、途上国の気候変動に対する適応支援のあり方はどうあるべきだろうか。 
様々な開発援助の中には、途上国の人々のニーズ合わないものや、期限を伴うものもあると考える。大型事業や途上国に根ざしにくい先進国の新しい技術の導入事業ほど、住民のニーズとの不適合を起こしてしまうリスクを伴うと考えるからだ。したがって、途上国で気候変動の影響に苦しむ人々を支援するためには、支援先の地域の状況や住民のニーズを把握し、地域の資源や伝統的な技術も活用しながら、技術向上に貢献できる持続可能な開発援助を行うべきだと考える。(384字)


別解

キーワード:南北問題

気候変動による温暖化によって、途上国のなかには、現時点でも絶対的な水不足に陥っている国々もある。こうした途上国の気候変動への適応問題に対して、日本は、集水、海水淡水化、排水処理などの技術・開発支援を行うことが可能だ。というのも、日本では災害時等の水の確保の技術が研究・開発されており、そうした技術を他国の水資源利用のために提供できると考えるからだ。
しかしながら、途上国が気候変動によって生じる諸問題に対処できずにいるのは、そもそも「北」の先進国と「南」の途上国との間に大きな経済格差があること、いわゆる南北問題が要因であるとも考えられる。なぜなら、経済格差がなければ、他国との外交や国際情勢にもとづいて、途上国が自身で気候変動に適応する方法を模索することができると考えるからだ。したがって、先進国は上記の日本のような援助に加え、経済開発のための資金援助等の支援も行うべきだと考える。


キーワード:貧困
気候変動は、経済成長の鈍化、貧困削減の困難化、食料安全保障に脅威をもたらすばかりか、すでにある貧困を長引かせるとともに、新たな貧困を生み出す。というのも、気温上昇は農作物の生産量減少や、特に農業経済に対する飢餓のリスクの増大、水不足といった深刻な影響を引き起こすことが考えられるからだ。また、食や水が安全でないために健康リスクの増加や、マラリアといった気候の変化の影響を受けやすい病気が広まるリスクをも増大させることが考えられる。
したがって、気候変動がもたらす影響は、農家や、田舎あるいは海岸沿いの低地に住んでいるコミュニティ、農業に依存しているコミュニティ、公衆衛生や水へのアクセスがほとんどできないコミュニティのような最貧困層に集中的に悪影響を及ぼすことが考えられる。それゆえ、気候変動の影響にもっともさらされる地域や人々に対して優先的に対策や援助を行っていくことが望ましいと考える。



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