2016 上智大学 総合グローバル学部 総合グローバル学科 推薦入学試験(公募制) 小論文 模範解答

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筆者は、経済成長の後退や、それによる低所得、貧困化が紛争の可能性を高めると主張する。国が貧困化することを紛争の要因として認める一方で、紛争が国を貧困化させることも筆者は認める。しかし、たとえ内戦の予感が景気後退を招くことで結果として内戦が生じるように見えても、実際は内戦勃発のリスクとは関係のない要因から経済が後退することによって内戦への可能性が高まることを筆者は指摘する。したがって、経済成長の後退が紛争をもたらすと筆者は主張するのだ。
 私は、こうした筆者の主張が紛争発生のすべての原因としては当てはまらないと考える。なぜなら、経済的要因以外にも紛争発生の原因が考えられるからであり、実際に経済以外の原因によって紛争が生じた例があるからだ。
 たとえば、レバノン紛争はキリスト教とイスラム教の政治的な宗教対立によって生じている。また、パレスチナ紛争においてはイスラエルの建国をめぐって、ユダヤ人とアラブ人の対立が激化したことが紛争の発生要因の一つである。さらに、現ロシア連邦のチェチェンのように、ロシア連邦からの独立を目指して紛争になった事態もある。
 以上のように、紛争は、宗教的対立や民族間の対立、宗主国家からの独立志向とその反対による対立が原因となって生じる事例がある。たしかにそこには経済的要因が絡む部分もあるだろう。また、紛争の要因を経済的観点から探求することは一つの分析としては妥当だとも考える。しかし、紛争の原因がすべて経済的後退に起因するとは上記の例からは言い難い。さらに、経済的後退のみが紛争の要因だと結論付けることもできない。なぜなら、人間が関わる以上、そこには宗教や思想、イデオロギーの衝突によって対立が生じ、紛争につながる側面もあるからだ。したがって、筆者の主張が常に成立するとは限らないと考える。(七五七字)

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