2015 埼玉県立大学 推薦入試 小論文 模範解答 (本文全訳付き)

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H27推薦入試小論文模範解答

Ⅰ.
問題1
(1)イ (2)エ (3)ア (4)ウ (5)オ

問題2
人口およそ8400人の久山町における年齢別人口構成、出生率、死亡率は、日本の全国平均に近いものであるため。(50字)


問題3
課題文から生活習慣病の一つである糖尿病は、認知症の一種であるアルツハイマー病を発症するリスクを高めることがわかる。また、専門家によれば、認知症患者は増加している一方で、認知症の発症のリスクは、定期的に運動をしたり、日本食や乳製品を食べたりするなど生活習慣に注意を払う人々のあいだでは、低いことが明らかになっている。したがって、行政は、認知症を予防するために、認知症になる人が増加している事実を市民に伝え、健康診断の受診を促して生活習慣病の予防について啓発的な指導を行ったり、運動を行うイベントを開催したりするなど、生活習慣の改善を促進する施策を行うべきだと考える。(282字)

本文全訳
65歳以上の認知症患者の数は、2012年には推定550万人まで急激に増加しており、ある研究グループによれば20年前のレベルの6倍にまでなっている。
 ほかに約310万人の人が、軽度認知障害を患っていると考えられており、その研究グループによれば、これはしばしば認知症に次ぐものである。この研究グループには、九州大学の清原裕教授がおり、彼は、環境医学を専門にしている。認知症を予防するためには、直接的な対策が必要とされる。
 その研究グループは、福岡県久山町の調査に基づいた全国推計値を計算した。久山町は、九州大学が1961年以来、住人の健康診断や追跡調査を行ってきた町である。
 (2013年)12月1日の、人口およそ8400人の久山町における年齢人口構成、出生率、死亡率は、全国平均に近いものである。したがって、この町で行われた医療調査の結果は、日本における医療や健康の状況についての典型的なデータとして国際的に認められている。
 その町の医療調査は、高血圧は脳卒中を引き起こすという事実のような、一般的な医学的知識にも寄与してきた。
 1985年以来、およそ7年に一度、その研究グループは、65歳以上の住人を対象とした認知症についての調査を実施してきた。2012年には、65歳以上の1906人の住人、つまり、その年齢層の居住者の94%が健康診断を受けた。認知症であることがわかった人の割合、すなわちその病の有病率は、その集団の18%であった。
 全国推計値は、以上の数値と、日本の65歳以上の人の総人口である、3008万人にもとづいて算出されている。軽度認知障害の人の割合は、2012年には、そのうちの10%になったことが推計された。
 認知症の型のなかで、アルツハイマー病は、69%でもっとも一般的なものであり、他方、血管性認知症(脳卒中や他の要因によって引き起こされる)は、17%と報告された。
 2012年の厚生労働省による推計では、高齢者の認知症患者の数は、308万人となっている。この数字は、介護保険制度が適用されている人々の数にもとづいて算出された。さらに、厚生労働省の研究グループによれば、10の地方公共団体の調査にもとづけば、462万人の人々が認知症を患っていると推定された。
 九州大学の研究者たちによって算出された数値は、65歳の年齢層において町の住人の90%以上が調査されているため、独自のものであり、その数値は、過去の調査の結果から急激な上昇を見せている。
 「認知症の患者の数は、将来は1000万人にまでのぼりうる」と清原氏は述べた。「運動と食事は、認知症を予防する二つの方法です。私は、認知症の予防のために最も重要な点を明らかにしたい。」
 国立長寿医療研究センター総長の大島伸一氏は、以下のように述べた。「認知症患者の推定値の上昇に、驚いている。久山町の医療調査は、非常に信頼のできる結果と数値を出しているため、われわれが、なぜ有病率が増加しているのかを突き止めることは、急を要します。」
 認知症患者のなかでも、アルツハイマー病の患者の数は、劇的に増加している。その有病率は、1985年の9倍であり、認知症患者は日本中で急速に増加している。
 日本の高齢化社会と糖尿病患者の数の上昇は、アルツハイマー病の増加を高めてきたと信じられている。福岡県久山町の住人の調査によれば、糖尿病患者がアルツハイマー病を発症するリスクは、糖尿病ではない人の2.1倍高かった。しかし、武田製薬によって行われた調査によれば、糖尿病患者と高血圧症患者のうちのわずか5%しか、生活習慣病が認知症の発症のリスクを増加させたことを認知していなかった。
 久山町では、認知症の発症のリスクは、定期的に運動をしたり、主として日本食や乳製品を食べたりするなど生活習慣に注意を払う人々のあいだでは、低かった。久山町のデータにもとづけば、60歳以上の人々のなかで認知症を発症する確率は、55%である。
 認知症の急速な増加を止めるためには、誰もが認知症を発症しうることや、だからこそ、皆がそのリスクを最小のものにするために、生活習慣に注意を払うべきだという点について、理解することが重要である。


Ⅱ.
問題1
両親が自分たちの赤ん坊の泣き声を、他の赤ん坊から区別して、認識することができる能力のこと。(45字)

問題2
女性が持つとされる母性本能の概念は、子育てに関して男性の親に対する優位性を示し、子育てに対する性差を示すものであった。しかし、母性本能の概念は、実際には経験的な裏付けをほとんどもたず、我々の協働的な養育者として進化してきた過去を考慮すれば、この概念は不合理なものである。したがって、子育ての能力について父親と母親の性差がないことを証明するために、実験から、父親と母親の両方が、赤ん坊の泣き声が自分の赤ん坊のものであることを確実にかつ等しく認識できること、そしてこの能力に影響を与える唯一の重要な要因は、両親が自分の赤ん坊と過ごした時間の総量であるということを明らかにしようとしている。(292字)


本文全訳
自分たちの赤ん坊の泣き声を認識する両親の能力に関する以前の研究は、重要かつ有意な性差を認めてきた。つまり、母親のほうが父親よりも(赤ん坊の泣き声に対して)ずっと正確な認識を示すということである。子育ての能力におけるそうした性差は、人間以外の哺乳類においても一般的なものであり、たいてい、特異な進化ストレスや、男性の親が子育てに費やす資源と女性の親の子育てに費やす投資に帰せられてきた。しかしながら、人間の場合には、「母性本能」という伝統的な概念は、経験的な裏付けをほとんどもたず、我々の協働的な養育者として進化してきた過去を考慮すれば、この概念は不合理なものである。父親と母親の両方が、赤ん坊の泣き声から自分の赤ん坊であることを、確実にかつ等しく認識できること、そしてこの能力に影響を与える唯一の重要な要因は、両親が自分の赤ん坊と過ごした時間の総量であるということを示すために、ここで、我々は、対照実験計画を用いる。これらの実験の結果は、この能力の発達において、露にされるものと学びについて強調している。つまり、この能力は、性別に固有の生来の性質というよりもむしろ、聴覚や認知などの(男女に)ともに共有された能力に依拠しているかもしれないということである。

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