2017 上智大学 総合人間科学部 看護学科 推薦入学試験(公募制)小論文 模範解答

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 筆者によれば、何かを学ぶことの意味や実用性は、学び始める時点ではまだ分からない。なぜなら、それを表現する語彙や価値観を知らないからである。むしろ、何かを学ぶことがいずれ重要な役割を果たすだろう、とわれわれが前もって確信することから学びが始まる。
 だから、学ぶ意欲は、勉強する以前に数値化して明確に提示できるような報酬によっては形成されない。反対に、事前に分かっていないのに、それを学ぶことが自分にとって重要だと確信できる力こそ、学ぶ力である。筆者は、こうした「先駆的に知る力」の軽視が現代の日本人の学ぶ力の劣化につながったとする。あたかも商品に貼られている値札のように、明示的に意味や有用性が表示されているものを探し出す訓練ばかりさせられていたら、先駆的に知る力は伸ばせない。しかし、資源に乏しい日本が国力を高めるには、先駆的に知る力を伸ばす必要があり、そうしないことは国家の存亡に関わる危機である、と筆者は述べる。
 こうした主張に対して、私は賛成である。ある事柄に関して明示できる価値や重要性は、時代や場所、環境によって変化する。しかし、すぐに役立つものしか学んでいなければ、そうした変化に対応できない。目先のことに縛られず、実用性があるか分からないものをあえて学ぼうとする態度は、たえまなく変化する社会を生き抜くうえで重要であろう。
 ただ、筆者が述べる「先駆的に知る力」には具体性が乏しい。そのため、どんな事柄であれ、「いずれ重要な役割を持つだろう」とある人が思いさえすれば、それを学んでよいと言っているように聞こえてしまう。したがって、たしかに目先の実用性に囚われない学びは重要であるが、学びの内容は何でもよいわけではなく、社会や環境の変化に対応するための知恵、いいかえれば、多様な情報の収集とその適切な読解および運用能力を伸ばすような学びを目指すべきであると考える。(784字)

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