2017 横浜国立大学 都市科学部 都市社会共生学科 小論文 模範解答
問1
①戦争、テロ、殺人などの事件を起こした者(あるいはその集団)と同じ属性、宗教などを持つ人が、みずからは事件と無関係であるにもかかわらず、周囲の人々から差別的待遇を受けたり、社会のなかで肩身の狭い思いを強いられたりすること。(110字)
②ある予備校の講師が生徒に対してハラスメントをおこなったという事件が明らかになり、それによってその予備校に勤めるほかの講師、ひいては予備校業界全体が不信の目で見られ、働きにくい環境になる。(93字)
問2
①戦争やテロなどの事件と、それによって引き起こされた被害とに対する怒りや悲しみは、被害者同士の団結意識を強める。ところが、この団結意識が、自分たちとは違う属性を持つ人々を「よそ者」として一括りにし、排除するように働くことで、集団懲罰が起こる。しかも、そのような排除や拘束は、短期的には事態の収束に効果を発揮する。こうしたことから、目の前の事件や危機、さらなる被害への不安に対して安易な解決を求める人々が多くなることによって、集団懲罰の容認や積極的な奨励が生じる。(230字)
②集団懲罰は、以下の二つの理由から容認できない。第一の理由は、責任の個人性である。ある行為やそれによって引き起こされた事件の責任は、その行為の主体である個人に帰せられるべきであって、その個人と共通の属性を持つ集団に帰せられるべきではない。第二に、懲罰が課せられる集団の属性と当該事件との因果関係が不明である。パリ同時多発襲撃事件は一部のムスリムによって引き起こされたが、だからといって、すべてのムスリムに共通する特性がテロの原因であったとは言えない。このように、個人の責任を集団にまで誤って拡張し、当事者の一部の性質と事件の発生とを短絡的に結びつける集団懲罰には反対である。(286字)