2016 山口県立大学 社会福祉学部 小論文試験 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


Ⅰ.(1)要約
ケアとは、援助の対象となるクライエントと共にある援助者に生じる、「かけがえのなさ」に動機づけられたケアにおける生の営みそのものである。さらに、ケアにおける生の営みは、私たちの「こころ」と「からだ」との境界線上に存在し、援助関係という特別な人と人の間に生じる境界線としての対人関係の中に存在する。この援助関係においてケアの担い手とクライエントは、「かけがえのなさ」という絆でつなぎ止められている。(197字)


(2)
ケアの担い手とクライエントは、「かけがえのなさ」という絆でつなぎ止められていると筆者は言う。この絆を結ぶために、ケアにおいて大切なものとは何だろうか。
ケアの担い手にとってクライエントは、最初は未知の他者である。それゆえ、ケアの担い手とクライエントが「かけがえのなさ」という絆で関係するためには、ケアの担い手が、他者の存在を受け入れる寛容の精神を持つことが必要だと考える。そのためには、ケアの担い手は、他者に対する想像力を持つことが重要だ。なぜなら、多様な他者のあり方を認め、ケアするためには、他者のあり方を想像し、思いやらねばならないからだ。さらに、想像力を発揮するには、他者への「応答可能性」を認めることが必要だと考える。たとえ未知の相手のあり方や考え方を理解せずとも、相手の存在を受け入れ、私が相手とともにいて、相手に応答できるという「応答可能性」は否定できない。したがって、この「応答可能性」にこそ多様な他者を受け入れ、他者への想像を促す「寛容の精神」の根幹があると考える。
以上より、ケアの担い手とクライエントとの関係は、他者に対する倫理的な振る舞いも含めた、「応答可能性」にもとづくと考える。ケアを必要とする他者にたいしてどのように振る舞うべきか。彼らとのかかわり方を模索するとき、他者への「応答可能性」という根本的関係は、クライエントとの積極的な関係を結んでいくための根幹となるだろう。
(598字)


Ⅱ.
(1)資料分析
図1の年次推移をみると、暮らしの状況が「苦しい」と答えた世帯の割合は、平成13年以降、増加続けていることがわかる。したがって、生活に苦しさを感じる世帯が、近年、増加傾向にあることがわかる。図2の特定世帯の構成割合をみると、「苦しい」と答えた世帯の割合は、「母子世帯」で84.7%と最も高くなっている。「児童のいる世帯」、「高齢者世帯」においても「苦しい」と答えた世帯の割合は5割を超える。全世帯で見ても、「苦しい」と答えた世帯の割合は、62.9%と半数を超える。以上より、我が国の国民の生活に対する意識の大半が「苦しい」というものであることがわかる。(275字)


(2)
図から我が国の国民の大半が近年、暮らしの状況が「苦しい」と意識していることがわかる。なかでも、「母子世帯」において「苦しい」と答えた世帯の割合は、84.7%と最も高く、「母子世帯」に対する社会福祉施策を行うことは急務だと言える。それでは、「母子世帯」に対して、いかなる施策が行われるべきだろうか。
「母子世帯」は、経済的にも社会的にも精神的にも不安定な生活になりがちであり、「母子世帯」に対し援助を行い、経済的な自立と、扶養している児童の福祉を増進させる必要がある。既存の制度では、児童扶養手当や母子家庭の住宅手当、母子家庭(ひとり親家庭)の医療費助成制度などの公的な経済援助施策が行われている。たしかに、現状でも国や地方自治体は、子育て世帯やひとり親家庭、低所得者を支援することを目的として、さまざまな施策を実施している。しかし、それらの制度を利用しても、子供との生活に十分ではないことが、生活の意識調査の結果として表れているのだと考える。また、各制度には時限式のものも多く、長期的に頼りにしていくことはできない。したがって、今後、「母子世帯」の経済的な問題に向けて、支給・助成金額の引き上げなど、支援制度のさらなる拡充が必要だと考える。また、子育てと仕事の両立がしやすい労働環境の整備、養育費・慰謝料の支払いの徹底などにも取り組む必要がある。
(572字)

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