2017 上智大学 総合グローバル学部 総合グローバル学科 推薦入学試験(公募制) 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


 筆者は、拡張現実技術がもたらす「今、ここの深さ」を、現に「今、ここに」知覚される事柄に加えて、たとえば歴史的、地理的な意味が重ねられ、現実世界の持つ意味や表れが多層化される事態として説明する。そして、「今、ここ」を多層化することによって、既存の世界観にはない新しい世界の表れや見方を現実に示すことが、拡張現実がもたらす虚構の果たすべき役割だと主張する。
 インターネット技術によって、私たちは、自宅から一歩も出ることなく、地球の裏側が現在どのような地形になっているのかを確認することができる。したがって、私たちは地球の裏側という「ここではない、どこか」や目の前にある現実の「外部」を想像したり、仮構したりすることがもはやできなくなった。つまり、この現実から、まだ見ぬ「ここではない、どこか」が失われた世界が「外部を失ったグローバル以降の世界」である。
 そこで、筆者の述べるように拡張現実技術によって表れる虚構が「世界変革のビジョン」になりうるだろうか。私は、多層化された「今、ここ」の提示が「世界変革のビジョン」になりうると考える。その理由は、大きく二つある。第一に、多層化された「今、ここ」の提示は、私たちの思考を促す契機となると考えるからだ。拡張現実が提示する「世界」は、多様な観点を情報としてその都度瞬時に私たちに提示する。この拡張現実が、私たちの各々に多層化された「今、ここ」からの思考を促すと考えるからだ。また、この多層化された拡張現実は、虚構であるがゆえに様々な表現が可能だ。したがって、第二の理由は拡張現実には「伝統的な想像力」によってポケモンという現代の「妖怪」が表れるだけでなく、新しい世界の見方を生み出すような世界観を丸ごと表現することが可能だからだ。したがって、ゲーム的な世界観だけではなく、文学や芸術が表現するような世界観も提示されることになるだろう。(785字)

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