2017 山口県立大学 社会福祉学部 小論文試験 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


Ⅰ.
(1)
点字ブロックは、視覚障害者が単独で安全に移動するために必要なものである。しかし、点字ブロックがあることによって困る人たちもいる。車いす使用者やベビーカー使用者にとって、点字ブロックは移動のバリアになりうるからだ。また、点字ブロックが景観をそこねると考える人もいる。しかし、周辺環境に違和感のない点字ブロックを設置しても、視認性が低下し、弱視者の歩行に困難をきたすという新たなコンフリクトが生じる。(198字)


(2)

 筆者は、点字ブロックを例に挙げ、特定の障害のためのバリアフリー化が、他の障害のある人や障害のない人にとっての新しいバリアとなるバリアフリー・コンフリクトの問題について指摘している。この問題は、ただ単に障害を取り除いたり、対処療法的な対応をするだけでは本質的な解決にはならないと考える。なぜなら、何がバリアとなるのかは、人々のあいだにおいて相対的なものであるからだ。それでは、こうしたバリアフリー・コンフリクトの問題に対してわれわれはどのように向き合っていくべきだろうか。
 今日、障害をテクノロジーで補助・代替することがある程度可能になってきている。たとえば,全盲の人がカメラやGPSで周囲に何があるかを確認できるソフトウェアが開発されたり、電動車いすを用いれば、多少の段差なら問題なく移動できるようになっている。したがって、これらの支援技術も活用することで、コンフリクトの発生を抑制し、柔軟なバリアフリー社会の構築が可能になると考える。また、障がいを抱える人たちに対する人的支援も充実化し、障がいを抱える人を支援することが当たり前となる文化を醸成していくことも必要だと考える。というのも、視覚障害を持つ人をその都度案内、支援するような人々が街中に増え、文化として定着したならば、すべての場所に点字ブロックが必要となることはなくなり、バリアフリー・コンフリクトの問題は回避されると考えるからだ。
(593字)


Ⅱ.
1.図1から「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」は計測初年度から減少傾向が見られる。他方で、「雇用者の共働き世帯」は増加傾向を示し、平成27年には前者と比べ約1.6倍の差がある。したがって、共働き世帯の増加が著しいことがわかる。図2からは、女性は仕事と家庭生活をともに優先したい人が29.7%に対して、現実に仕事と家庭生活をともに優先させている人が20%となっている。一方、男性は仕事と家庭生活をともに優先したい人が約31.4%いるのに対し、現実では仕事と家庭生活をともに優先している人は22.3%となっている。したがって、仕事と家庭生活のあり方について人々の持つ希望と現実は乖離していると言える。図3からは、日本の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間は各国の3分の1程度であり、特に育児の時間はフランス、ドイツとともに1時間未満となっている。それゆえ、日本の夫の家事・育児参加は消極的だと言える。(383字)



2. 仕事と家庭生活のあり方について、人々の持つ希望と現状は乖離している。これは、近年増加した共働き世帯の男女がともに、共働きゆえに子育てと仕事との両立に困難を抱えているからだと考える。特に男性は、仕事を優先させる傾向にあり、家事育児を担うことができていない。したがって、家庭生活と仕事の両立を図るためには、各自治体や地域社会、会社も含めて働き方や生き方の改革に取り組むことが必要だと考える。たとえば、子育てや介護を地域社会のなかで担う場を作れば、女性が家庭生活のみを優先する事態を回避できる。また、各企業も子育てや介護のある従業員に優先的に休暇を与えたり、短縮勤務時間制度を採用したりすることで男性の家庭生活に配慮することができる。今後、以上のような取り組みによって、仕事と生活の調和をはかりながら、男女がともに望ましい生き方ができる男女共同参画社会を実現していくことを目指していくべきだと考える。(397字)

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