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マジックを演じるために知っておくべきこと(連載2)

【違和感の発見】

  僕は若い頃、自分の演技映像を最後まで見ていられませんでした。でもそれが何故か分からないまま、感情が先に動いて見るのを止めてしまっていたのです。テレビで仕事ができるようになり、改めて自分の映像を客観的に見ると、小さな違和感がたくさんある事に気がつきました。若い頃、自分の演技を最後まで見られなかったのは、言葉にならない小さな違和感に耐えられなかったからなのです。演技の違和感を認識した事で、もうひとつ気がついたのは、僕が好きなマジシャンの演技にはその違和感が極端に少ないという事でした。違和感はマジシャンを評価する、ひとつの尺度として有効だと思いました。僕は演技中の違和感が少ないマジシャン程、評価されるべきだと思います。


【違和感の弊害】

  マジックの効果は、できるだけ多くの観客がマジックの前提を理解して、現象が起こるまで興味を持ち続ける事で機能しますが、違和感はその理解や興味を削っていきます。また、違和感は記憶に残るので発生させてしまうとその演目内では消す事ができません。違和感を感じた観客はそれについて考え始め、演技の進行から取り残されます。さらに違和感のある演技を重ねると、進行から取り残される観客が増え、観客の多くが前提を正確に理解せずに現象を見る事になります。前提を正確に理解していないと現象の効果は半減しますから、違和感の多い演技はその演目の最大の効果を隠します。これが「違和感の弊害」です。

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