交番勤務ってどうなの?(ごめんね、警察犬。)
私が警察官の時に現場で何度か警察犬と一緒になることがありました。
その時に感じた事をありのまま書いていきます。
警察犬って現場に来てくれるの?
私が警察犬と現場で関わったのは最初の6年間で1回だけ。
最後の1年間で5回。
何故こんなに偏っているのかは後でお話します。
まずは1回目の話です。
この時は行方不明者の捜索でした。
人が行方不明になったら必ず警察官が捜索するわけではないのは以前の記事でお話ししましたね。
例えば、「夢を追って上京します。」みたいな手紙を残して家出して行方不明になっても、別に捜索はしません。
まぁ、当たり前ですね(笑)
しかし、遺書があったり、自殺をほのめかす言動があって家からいなくなったら捜索します。
それから自救無能力者と言って、例えば小さい子供や認知症のご老人などが行方不明になったら、生命身体に危険が及ぶと判断して警察組織が捜索に入ります。
この時は、「亡くなった夫の所へ行く」と書き置きを残して家からいなくなった高齢女性の事案でした。
完全に自殺をほのめかす内容ですから警察が捜索に入ります。
通報してきたのは息子さん方です。
「鼻上げ」
この時、私は警察官になって1年目です。
朝10時から警察犬が来ると聞かされていました。
私が捜索に入った現場は夫婦がよく一緒に登山に来たという山です。
行方不明者の捜索は何度も経験していましたが、警察犬が現場に来てくれたのは初めてだったので興奮しましたね。
なぜこの時だけ警察犬が来たのかはよく分かりません。
恐らく統括官や課長クラスが何とか見つけようと県警本部に依頼したのだと思います。
なんせ自殺をほのめかす言動がありますから必死だったんでしょう。
いよいよ警察犬が来ました。
犬種はシェパード。かっこいい。
リードを持った警察官が犬の鼻に行方不明者の持ち物であろう靴下やシャツを何度も当てています。
匂いを記憶させているのでしょう。
警察犬が動き出しました。リードを持つ警察官もついて行きます。
多分本部鑑識の警察官でしょうか。
警察犬に引っ張られるようにしてあっという間に見えなくなりました。
もちろん我々は我々でしっかり捜索しなければなりません。
棒を持って茂みをかき分けます。
30分ほど経過した時です。
無線が流れて来ました。
「警察犬、鼻上げ。鼻上げ。どうぞ。」
鼻上げ?
鼻上げってなんだ?
見つけたのか!?
近くにいた先輩に聞きます。
「先輩、鼻上げって何すか?」
先輩「ああ、警察犬がこれ以上匂いを追えなくなったから鼻を上に上げたってことだよ。犬は地面に鼻をこすりつけるようにして匂いを嗅ぐだろ。」
え、だってまだ犬警察犬が現場に来てから30分位しか経ってないぞ?
これで終わり?
これで終わりでした。
警察犬はその日の我々の捜索終了を待つことなく、あっさりと帰っていきました。
結局この事案の高齢女性は川の中でご遺体で見つかりました。
自ら水の中に入り、寒い夜間に凍死したのです。
見つけたのは息子さんたちでした。
これ以降約5年間、警察犬と現場で会うことはありませんでした。
とにかく警察犬を呼べ!
私の最後の所属署での出来事です。
若い女性が行方不明になる事案が起きました。
しかも事件性ありです。
全国ニュースになり連日大々的に報道されたニュースなので、特定を避けるために事件の詳細は全て割愛します。
行方不明の翌日から署の総力を挙げて捜索が始まりました。
非番員、週休員かまわず招集です。
交番の警察官は当直→非番→週休という3交代で仕事をします。
この時はあまりの捜索熱により、警察人生で初めて当直→当直(簡単に言うと2泊3日でその間ほぼ寝てない)という勤務を経験しました。
それはともかくとして、テレビ局に撮影されたりしながらも捜索すること約1週間。
見つかりませんでした。
捜索は打ち切りになります。
しかし、数ヶ月後、この女性のご遺体が見つかります。
しかも一度署員が捜索した場所からです。
これには市民から相当苦情が入ったようですね。
悲惨な事件に遭われた被害者を数か月野ざらしにしてしまった。
ご遺族に早く引き渡すこともできなかったのだから当然です。
これ以降、署長が異常に神経質になっていきました。
朝礼で毎朝のように「どんな事案でもいい、警察犬を呼べそうな事案だったら、本部に連絡して警察犬を呼べ。」と言い始めます。
署長が言うには、もし見つけられなくても「警察犬が来ても見つけられなかったんだから仕方なかった」と言えるし、「万が一警察犬が来てくれなくても、本部の責任になる」というのです。
これ以後、行方不明事案がある度に警察犬と顔を会わせることになりましたね。
たった一年の間に、私が当直している日だけでも5回も警察犬が来ました。
警察犬って要請したらちゃんと来てくれるんだな、というのを初めて知りました。
要請しても重大な場合以外来てくれないのかと思っていましたから。
結果は全て「鼻上げ」でした。
「人」どころか関連した「物」(例えば靴やカバン、携帯など)も見つけたことがありません。
警察犬の仕事をしてみたいと思っている方が読者にいたら本当に申し訳ないですが、私の中では警察犬の評価は低いです。
ごめんね、警察犬。
凛々しい姿を見るといつも期待してしまうから、その分落胆が大きいんだよ。
今回は以上となります。お読みいただきありがとうございました。