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日本語学校で授業中に教室に入管が入って来た①(「どちら様ですか?」「入管です。」)

さて、学校に労働組合ができて少しずつ「我々の」労働環境は改善されてきました。定時退勤が徹底的に求められ、休日のサービス出勤もなくなりました

「我々の」と書いたのは、あくまで理事長の意向に沿おうと考える社員の皆さんはかなりの残業や休日出勤をしていたようです。

「していたようです」というのは、はっきり分からないからです。一切残業をしてはいけなくなり、休日も学校で授業準備などをしたい場合は理事長側近の副校長の許可を得なければならなくなりました。

なので雇用契約書上の定時に社員全員タイムカードを切ります。そこで「我々は」帰るのですが、他の皆さんは一度家に帰ったフリをして学校に戻って残業していたようです

なぜそんなことが分かったかというと、学校の近くに住んでいる専任講師が我々と同時に帰ったはずの社員の自転車が学校に再び停められていたり、消したはずの電気が夜遅くまでついているのを度々目撃していました。休日も同様です。

もちろん建物の外からでは誰が何時まで残っていたかなどは分かりませんし、タイムカードも定時で切られています。

理事長は不思議な人です。ひょっとして我々の知らない、人を引き付ける魅力を持った理事長の顔というのがあったのかもしれません。

もちろん魅力があっても、無制限の休日サービス出勤と残業はお断りです

そんなわけで我々の労働環境は良くなったのですが、留学生たちの学習環境を良くしてあげようという試みはなかなか上手くいきませんでした。こればかりは社内で上司や理事長に粘り強く要求していく他ありません

この学校には学生の自習室がありませんでした。これまで4つの日本語学校で勤務しましたが、自習室がない学校はここだけでしたね。

当時この学校には1000人くらいの学生が在籍していたのですが、授業が終わった後は当然一斉に外へ出て行きます。すると、待ち合わせのため、近所のデパートの入り口やコンビニなどあちこちに10人、20人と群がります。煙草を吸う者もいます。これが原因で近隣の住民からよく苦情が来ていました。

自習室は学生の待ち合わせ場所にも利用できるので近隣トラブルの解消にもなります。そして学生の学力向上にも役に立つので、ぜひ作ってほしかったわけです。

また、学生数が多くなったのに非常勤、専任ともに数が足りず、15人程度のクラス2つをまとめて1つのクラスにしていたので、30人を超えているクラスが複数ありました。これも解決してほしい問題でしたね。

コロナ前までどの日本語学校も教師不足に悩まされていたとは思いますが、これは禁じ手ともいうべきものです。日本語学校は、日本語教育機関の告示基準により 1 クラス 20 名までとその定員が定められているからです。

それから数か月後、1月のある日、午後から授業をしていると、事務社員がスーツの男を一人連れて教室に入って来ました。

全く知らない顔です。事務員も何も言いません。事前に聞いていなかったので不思議に思って男を見ると、「私には構わずに授業を続けてください。」と言います。

正直ちょっと腹が立って「すみませんけど、どちら様ですか。」と聞きました。理事長側の嫌がらせか何かだったらすぐ教室から追い出してやろう、くらい考えていました。

でも「入管です。」と男が一言だけ答えたのを聞いてそれ以上質問はやめました。正直彼らが何をしに来たのか、その時は全く分かりませんでした。でも、この学校に何かしらの問題があって、それを見に来たことはすぐに理解できました。

これより後、私はこの学校の真の姿を目撃することになります。(続く)



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