《擦る》アーサー・デ・オリベイラ
GAPのアーサー・デ・オリベイラさんの作品《擦る》は、ミクストメディアとあったが、インスタレーションとして構成されていた。
《擦る》とは、わさびを隠喩させるという。展示からは全くわさびを連想することができなかった。アーサーさんにわさびとは、どういうことか?と質問をする。
この粉はもち粉、立てられている植物はすすき、その土台の固定として餅が使われている。置かれている布はマクラジャ(パッションフルーツ)である。餅のフレーバーにパッションフルーツが使われると説明を受けたが、珍しい餅だと思った。そして、もち粉を示して餅と主張するところが新鮮な印象を受けた。
この布の柄はデーツ、アラブではメジャーなようである。そしてわらび餅の原料として使われるという。
電球の下にあるのは、わさびとジャボチカバでできた羊羹だという。羊羹から紐で繋がれたのは馬の尻尾。
アーティストステートメントをもらった。
わさびは、その辛さと刺激が特徴で、すりたては香りが高く、その香りがわさび特有の辛さを示す。しかしながら、わさびのそうした風味はすぐに消えていく。日本人にとってわさびは身近な食材と思われるが、プラスチックの小袋に入ったわさびの多くは合成されてわさびのように振る舞っている。日本の固有種であるわさびであっても、まがいものをわさびと呼ぶ。そうしたことが思い起こされた。
アーサーさんが示しているのは、日本が欧米を見ており、彼が示したブラジル、アラブの植物は馴染みがなく知られていないとしている。多文化の相互作用、わさびの刺激が新たな疑問を呈するという。同時に移民に対する日本のスタンスを表現しているという。
翻訳による意味の欠落と新しい解釈の追加、カミーユ・アンロの展示を思い出した。
ピエール・ユイグも作品発表の場をフランス国外に向けた際に翻訳について指摘していた。
意味と記号、翻訳によって記号が変わるときに、意味の本質が立ち上がるのかもしれない。
いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。