《あなたはたえず、来ては去る。》 神田梓
油絵学科 神田梓さんの卒業制作、芸祭でも大きな作品を展示していたが、卒業制作は更に大きな作品だった。
アーチ状のキャンバスを三つ、中央のキャンバスは長辺が高く、左右のキャンバスは、やや低い。とはいっても大型であることには変わりない。
左側に鎧の下に着るような装束、あるいは人形の中身の部分だろうか。服で隠れるところは紐を束ねており、手足の先と胸元が肌のようになっている。ただ、首がない。向かって右側の画面には白い透けたワンピースが着ている人があるように在る。スカートの下側から透けて見える背景が、より服を着ている主の不在を強調する。中央のアーチには何もない。正確には、地平に続く道が描かれているのだが、左右のアーチにあるようなモノがないために、何もないと捉えてしまう。
神田さんは、アトリビュートに興味があるという。ただ、忠実にアトリビュートをなぞらえるのではなく、自身の解釈に依るのだという。
左を男性、右を女性、来るのはどちらだろうか。鑑賞者によって、その役割は変わるだろうか。単純な二項対立に陥らないのは、作品が三点のキャンバスであり、中央の空虚が奥行きを感じさせるからだろう。
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