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楽天グループもNFTプラットフォームを展開(予定)

楽天がNFTマーケットプレイスに参入することが各社から報道されていた。おおむね同じような内容であり、プレスリリースを記事にしたと推測する。

楽天グループのプレスリリース

8/30に楽天が発表、2022年の春にNFTを取引できるマーケットプレイスをローンチするという。スポーツ、音楽、アニメなどのコンテンツをNFTとして取引できるようにするというもの。マーケットプレイスなので、コンテンツを持っている人が、自身のコンテンツをNFTとして販売することも可能になるという。購入は楽天IDと楽天ポイントを利用できるとある。今月初めに、ヤフオクもNFTの取り扱いを今冬に開始するという報道があった。

NFT コンテンツの売買にあたっては、購入と保管にハードルがある。そこを楽天がサポートすることになり、暗号通貨だけでなく法定通貨でも購入できるようにすると想像する。楽天もヤフーも金融系事業会社を持っており、暗号通貨と法定通貨のギャップのコントロールをそこが担うのではないかと想像する。

NFT購入時に暗号通貨で決済することがハードルであると、以下のnoteで指摘していた。

ファッションブランドが自社ブランドのドレスをNFTとして販売する際は、こうしたマーケットプレイスに乗るのが手軽だが、プラットフォームに支配されないような付き合い方が必要になる。

米国では既にNFTマーケットプレイスがいくつかあるし、国内のプレイヤーがこうしたプラットフォームを発表するのは、それに追随する動きだと思う。商取引の新しい形としてNFTが浸透していくのは既に不可逆的であり、ブームのような上下はあるものの、普及期に入る手前の状況と考える。この時期にシェアを取るということはNFT で取引を行う習慣を作るということであり、それが、他社との競争優位を築くことになる。各社が相次いでNFT取引への参入を発表しているのは、こうした思惑からだろう。

90年代の終わりから2000年前半の黎明期のECは、Amzonや楽天などのメガプレイヤーや、ZOZOタウンのような専業プレイヤーによってネットで買い物をする体験を創り出し、今ではデジタルの買い物習慣を築いた。こうしたことがNFTでの取引で起こっている。

さて、楽天が参入するということで、購入と保管のハードルを下げることが予想できる。暗号資産のウォレットを使いこなせる人って、日本にはまだ全人口の数パーセント程度しか居ないのではないだろうか。そして、冒頭のコンテンツオーナーがNFTを売り出すことができるという点については、楽天も様々なコンテンツを持った主体であり、例えばデジタルのベースボールカード(プレミアムと限定エディションによる希少性の演出が行われる)を売り出したいと考えるだろうし、そうしたデジタル上の限定品を買いたいと思う楽天ユーザーは少なからずあるはず。

楽天はシリコンバレーにも社屋を構えているし、ブロックチェーンのラボも持っている。既に楽天ウォレットを展開している。構成要素は既にあるため、それをより使いやすく展開していく計画が必要なのでしょう。消費者相手では、計画は随時修正される必要がある。そして競合との競争よりも、組織のサイロ化(あるいは縦割り)の方が競争を阻害する要因になることがしばしばある。

プレスリリースからは、NFT がどの標準規格に則るのかは言及が無かった。楽天オリジナルの標準規約や、ブロックチェーンを用意するのかは判然としないものの、Alibaba のように公的機関のブロックチェーンを使うのではないかと想像する。けれども、独自で用意したら面白い。

プレスリリースを見ていて気になった点、キャンペーンとしてNFTを付与することもできるとある。楽天ポイントのプレゼントもあるが、それの延長線上として考えていると想像する。

ここで、確定申告の問題が降りかかる。

通常、買い物によって獲得したポイントは次回の買い物に金銭相当で使用することができる。これは所得ではなく割引と認識することで、所得の申告はしなくてもよいとなっている。しかしながら、買い物に依らないポイントの付与は雑所得として申告の対象になるケースがある。

NFTの場合、時価評価をして申告するのは実務上適切ではないという見解がでているが、売却時に売却益について申告する必要がある。楽天のマーケットプレイスは、消費者が自身が持っているNFTを売却することもできるという。プレゼントで獲得したNFTの販売、これは申告の対象になるだろう。

申告する人が増加することで、日本の申告納税制度を問う取り組みのようにも見えてワクワクすることもあるけど、恐らくそこまで革新的な展開にはならないだろうと思う。

暗号資産やNFTの取引は課税制度をいかにハッキングするか、それは税務当局と暗号資産界隈のプレイヤーが議論を重ねてきた。脱物質化した資産は、法制度の整備が変化に追いついていかなくなっていることを示している。ただし、アナーキズムな展開は初期の頃に見られたのみであり、暗号資産関連の企業と国税庁は話し合いを持っていると聞く。

ネットに放たれたAIが、NFTコンテンツを作り、コインを貯めていったとしたら、その担税力は誰が持つと判断されるのだろうか。


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