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リバウンドするアートマーケット

少し前のことだけど、アート・バーゼルの2022年のアートマーケットレポートがダウンロードできるようになった。

様々な変化を経験した2020年と2021年、アートマーケットは回復の傾向がみられる。レポートにはゆっくりあたることにして、Art Newsのテキストから概観してみたい。

タイトルは、アート・バーゼルのレポートによればアートマーケットの大きさはパンデミック前の水準と同程度の65ビリオンUSドルとなった。だろうか。

2021年のセールスは651億ドル、2019年のセールスよりも11億ドルの増加、2020年よりも150億ドルも増加している。2019年から見れば成長率はわずかなものの、2020年から見ると驚異的な回復と言える。マーケットの大きさは、一位がアメリカで半分近く、二位は中国で三位がイギリスになった。

McAndrewによれば、オンライン、オフラインでの取り組みと富裕層の資産額の上昇がアートの購買に向いたという。

そしてNFTマーケットプレイスの存在感も無視できない。

Nearly three-quarters of the collectors surveyed had purchased art-related NFTs in 2021, and NFT sales via online platforms accounted for $2.6 billion. More than half of the collectors surveyed reported an interest in acquiring digital artworks in the next year, with millennials accounting for the majority.
調査対象となったコレクターの4分の3近くが2021年にアート関連のNFTを購入しており、オンラインプラットフォーム経由のNFT売上は26億ドルに上りました。調査対象となったコレクターの半数以上が、今後1年間にデジタルアート作品の入手に関心があると回答し、その大半をミレニアル世代が占めた。

ギャラリーのセールスは2割程度が上回ったと回答したのに対して、2割以上のギャラリーが減少したと答えている。マーケット全体の売上が伸長しているということは、NFTマーケットプレイスに財布シェアが取られているのだろうか。とはいってもNFTの売上は26億ドルと、およそ4%に過ぎない。

オークションの新規顧客も上昇傾向を見せるという。2021年に初めてアート作品を買ったというコレクターのインタビューを何度か見かけた。日本でも保税倉庫(保税蔵置場)を使ったアートオークションが一般のニュースでも話題になった。

Sales made by dealers at art fairs accounted for 29 percent of their annual totals in 2021, according to McAndrew’s report.
McAndresのレポートによれば、2021年の年間売上におけるアートフェアでのディーラーの売上は約29パーセントである。

アートフェアの年間売上に占める割合が2019年は4割強だった。それが3割程度なので、アートフェアが売上貢献度合いを回復するには至っていないようだ。2021年は大分再開されたみたいだけど、既にアートとの出会いは新しい習慣ができあがりつつあるのかもしれない。レポートではディーラーのオンラインセールスは、2019年の倍になったと報告されている。

デジタルアートは、今までのアートの延長線上なのか、新しいトレンドなのか。アートフェアのオンライン・ビューイング・ルーム(OVR)経由でのセールスもカウントされているが、購買体験のデジタル化と作品そのもののデジタル化は分けて考えなくてはならない。

所有権のあいまいさなんてものは、物質性からの脱却よりもドラスティックに起こるのではないかと考えている。

Web3の時代はシェアリングの時代、NFTマーケットプレイスの中央集約(集権)的な動きに注目したいが、ミントを一般化した功績を覆すのは、中々難しいのかもしれない。


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