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《君ありて幸せ》, 川口紅葉

広島市立大学はコンパクトに卒業・修了制作展を見ることができる。やや迷路のようであるが、友人が案内してくれたので助かった。

川口紅葉さんの《君ありて幸せ》が展示されているアトリエスペースに入ると、土の匂いがした。土を作品に用いていることがすぐに分かった。

《君ありて幸せ》, ©川口紅葉

本物の土を使っているようだが、花は一目で造花と分かる。そこに赤い点が見え、奥の方は白い花が赤に染まっている。

《君ありて幸せ》(部分), ©川口紅葉
《君ありて幸せ》(部分), ©川口紅葉

この造花はゼラニウムであり、白のゼラニウムの花言葉は「あなたの愛を信じない」という。そこに、てんとう虫が集まり、花を赤く染めていくと花言葉は「君ありて幸せ」へと変化するという。てんとう虫は幸福のシンボルとされている。

意味の逆転であるが、転換する過程を見せている。

てんとう虫が花に群がる様子、どこから赤いゼラニウムと呼べるのか、いや、てんとう虫によって赤く見えるが、本質は白であるとみなすのか。散らばったてんとう虫の様子からは、そうした二項対立へもシニカルな態度を見せているようである。

てんとう虫が寄ってくる様子は、ソーシャルメディアの”いいね”を集めているようにも見える。どれだけいいねをもらえば気が済むのか、底なしなのか、花にとまれるてんとう虫は限りがある。

ソーシャルメディアを使った啓蒙、もしくは扇動と表現した方がいいのかもしれない。どれだけフォロワーを集めたか、そして思想化するか。その意図はますます巧妙になり、潜行していく。

「032c の トランプ-バレンシアガ コンプレックスを読んで考えたこと」のnoteからの引用

フォロワーからの支持を集めることによって「あなたの愛を信じない」から「君ありて幸せ」へ変容していく。

いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。