《君ありて幸せ》, 川口紅葉
広島市立大学はコンパクトに卒業・修了制作展を見ることができる。やや迷路のようであるが、友人が案内してくれたので助かった。
川口紅葉さんの《君ありて幸せ》が展示されているアトリエスペースに入ると、土の匂いがした。土を作品に用いていることがすぐに分かった。
本物の土を使っているようだが、花は一目で造花と分かる。そこに赤い点が見え、奥の方は白い花が赤に染まっている。
この造花はゼラニウムであり、白のゼラニウムの花言葉は「あなたの愛を信じない」という。そこに、てんとう虫が集まり、花を赤く染めていくと花言葉は「君ありて幸せ」へと変化するという。てんとう虫は幸福のシンボルとされている。
意味の逆転であるが、転換する過程を見せている。
てんとう虫が花に群がる様子、どこから赤いゼラニウムと呼べるのか、いや、てんとう虫によって赤く見えるが、本質は白であるとみなすのか。散らばったてんとう虫の様子からは、そうした二項対立へもシニカルな態度を見せているようである。
てんとう虫が寄ってくる様子は、ソーシャルメディアの”いいね”を集めているようにも見える。どれだけいいねをもらえば気が済むのか、底なしなのか、花にとまれるてんとう虫は限りがある。
フォロワーからの支持を集めることによって「あなたの愛を信じない」から「君ありて幸せ」へ変容していく。
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