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《echo-typing》遠藤梨夏

佐賀大学の卒業・修了制作の期間にあわせてSAGA ART WEEKが開催されている。佐賀市内のアートスポットが連携して、様々な展示やイベントを提示する企画、歩いて回るには距離があるのでレンタル自転車などを活用するといいと思う。

旧枝梅酒造で展示されていた佐賀大学修士一年生のグループ展「ザ・9」を見にきた。この世代は、CAF賞優秀賞、Idemitsu Art Award 2023(旧シェル美術賞)入選、FACE2024のグランプリなどを受賞している。結束力のある学年らしい。遠藤さんはCAF賞で優秀賞を獲得した。

遠藤さんは映像作品を提示していた。

《echo-typing》, ©︎遠藤梨夏

30秒と短い映像、音声は雨音だろうか、ノイズのようにも聞こえるが枝梅酒造の屋根や壁を叩く雨音だろうと思う。酒を絞る槽だと思われるが、圧力をかける器具の支持柱を叩いている。タイトルからタイプと分かり、叩いていたのではなく、何かをタイプしているということだろう。

映像が提示されている先に、実際の撮影場所がある。

《echo-typing》, ©︎遠藤梨夏

旧枝梅酒造の建物は江戸時代後期に建てられた。およそ200年の建物、その建物と対話しているという。タイプは実際の文字をタイプしているというが、その内容は意味の無いものであるという。

過去との対話を試みている。遠藤さんは創建当時の建物と対話をしているという。今の自分と創建当時とを行き来したいという。この映像を見ている鑑賞者は既に過去の出来事を見ている。この入れ子構造、対話というよりも、一方的な呼びかけなのかもしれない。タイプの音は雨音と重なって還って来る。



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