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「コミュニケーションゲーム」を作る、という挑戦。―― RED LINE ゲームUXデザイナー 目黒水海

※この記事は、ゲームマーケット2021秋に発売した、「RED LINE OFFICIAL BOOK」内のコンテンツ「『RED LINE』制作秘話 - 3 : UXデザイン視点」です。
記事単体でも購入できますが、マガジンでの購入がお買い得でおすすめです。

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※記事内にはネタバレを含む部分がございます。
必ず、『POLARIS-01: RED LINE』をプレイしたうえでお読みください。

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『RED LINE』制作秘話
ストーリーゲームレーベル POLARIS の記念すべき第一弾『RED LINE』。
今までゲームを作ったことのない彼らが、どうやって王道のマーダーミステリーを生み出したのか。
その知られざる制作秘話をお届けします。

企画・プロデューサーの林健太郎、企画・ディレクターの有賀歩美、ゲーム UXデザインの目黒水海、シナリオの鈴木禄之、の4名による、それぞれの視点で描かれる『RED LINE』誕生までをどうぞお楽しみください。



「マダミス作ろうぜ!」

と誘われたのが5月の頭のこと。
誘ってきたのは、ノーミーツイチのコミュ障で知られる林さん。

カタンですら遊んだことないし、遊んだことのあるボードゲームといえば「人生ゲーム」。のみ。終わり。
人狼ゲームが兎にも角にも苦手な、この私が……??
そもそもマダミスってなに……?

と思いながらもPOLARISへの参加を決めたのは、林さんの「マダミスは人と人が仲良くなれるゲームだと思う!」という仮説でした。

「そんなゲームがあるなら遊びたい」
「じゃあこの世に必要だから作ろうか」
というわけです。

それから、「POLARIS」を「物語を軸としたコミュニケーションゲームに」という指針のもと、ゲームの体験設計を組み立て始めたのが8月の半ば。
脱稿し終えたのが昨日、11月8日の月曜日。

この怒涛の3ヶ月間を振り返りつつ、今作『RED LINE』で検証したかったことを書いていこうと思います。


マーダーミステリーをより「やさしく」

マーダーミステリーを初めて遊んだ感想は、「面白い」けど「難しい」でした。

物語が前提にあり、その舞台を生きるキャラクターとなり、条件を与えられる。
ただ、その上でどんな結末を選ぶのか、どんな判断をするのか、なにをもって幸福とするのかは自分たちのプレイに委ねられている。
勝利することがハッピーエンドに繋がるとは限らないし、自分の意思で譲れずに行った小さな決断が、大きなどんでん返しに繋がるかもしれない。

率直に

「おもしろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

と思うと同時に、人を選ぶゲームだな、とも思いました。

(私がプレイしたマダミスの傾向では)文章がとにかく多いし、ルールも多い。
私は説明書を読まずに棚を組み立てはじめるタイプの人間なので、

「プレイヤーを飽きさせずに、どれだけ直感的に、どれだけ自然に・前のめりに情報を摂取させるか」

そして

「『物語』という濃密な没入体験を共有することを、プレイヤーどうしのコミュニケーションのきっかけとしてどう組み込んでいくのか」

この2つが、POLARISの課題だな、と感じ、制作を始めました。


「コミュニケーション」の「口実」をつくる

POLARISでまず試したかったのは、「説明書がないマダミス」です。
POLARISは、ゲームのチュートリアルのような、「一枚ずつめくりながらルールを理解していく仕組み」を目指しました。

1つ説明を受けて、その動作を行う。
動作の直前にだけ、説明を行う。

理解と進行を交互に行う、「『全部』を把握しなくても進む」システムにすることで、全てを把握できなかったとしても充実感を損いにくい進行の速度感を損いにくい = ダレにくい体験設計を意識しています。

さらには、疑問を感じた瞬間に口に出しやすい = こまめに話し合うきっかけを作りやすい、というコミュニケーションの利点もあります。

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(1枚ずつめくっていくP型カード)


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