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気が付くと、マーダーミステリーを作っていた ―― RED LINE シナリオ 鈴木 禄之

※この記事は、ゲームマーケット2021秋に発売した、「RED LINE OFFICIAL BOOK」内のコンテンツ「『RED LINE』制作秘話 - 4 : シナリオ視点」です。
記事単体でも購入できますが、マガジンでの購入がお買い得でおすすめです。

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※記事内にはネタバレを含む部分がございます。
必ず、『POLARIS-01: RED LINE』をプレイしたうえでお読みください。

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『RED LINE』制作秘話
ストーリーゲームレーベル POLARIS の記念すべき第一弾『RED LINE』。
今までゲームを作ったことのない彼らが、どうやって王道のマーダーミステリーを生み出したのか。
その知られざる制作秘話をお届けします。

企画・プロデューサーの林健太郎、企画・ディレクターの有賀歩美、ゲーム UXデザインの目黒水海、シナリオの鈴木禄之、の4名による、それぞれの視点で描かれる『RED LINE』誕生までをどうぞお楽しみください。



目まぐるしく、実に濃密な時間だった。

共通の友人の紹介で『POLALIS』プロデューサー林健太郎氏に出会ったのが 2021年 4月5日。
彼の誘いで春のゲームマーケットに参加したのが同月10日。
マダミス制作の話を受けてノーミーツの皆様とリモート顔合わせをしたのが同月30日。
なにかおかしい。動きが早すぎる。と気が付いたころには胸までマダミスに浸かっていた。

マダミス制作、といってもその時点で私のプレイ歴は長編 1 作と短編1作。作ったことなど勿論ない。あさーい経験値から目をそらし、試しにということで処女作を書いた。星々煌めく宇宙をテーマにした作品。ちょうどレーベル名が『POLARIS』に決まった頃だった。
ざっくりとしたあらすじを林氏に説明すると、「日曜に遊べるやつできそう?ラフでいいよ!」と。木曜日の夜のことだ。え!!金土で 1作品を!?改めてそのスピード感に面食らったのを覚えている。
しかし私も「ラフでいい」などと言われると凝りたくなる性分。出来らぁ!と登場人物4人のシナリオと、ゲームに使用する証拠カードを作成して、約束の日曜日、実際に遊んでもらった。これが粗だらけ穴だらけの作品(と呼ぶのも烏滸がましい出来)だったが、マダミスっぽさだけはどうにか醸し出すことが出来ていた。知恵を集めればちゃんとしたものを作れちゃうんじゃない?とうっすら希望が見えてきたのだ。

「簡単だけど難しくて王道だけど捻ってて、推理要素に加えてもう一つ、話し合うことを目的とした軸を用意して……」という耳を疑うオーダーもあったが、キャラクターや物語をある程度好きに書かせてもらえたのは有難かった。昨今、様々な制約の中での執筆が増えていたこともあり、好きに書いていいというのは何よりも幸せな条件だったのだ。
とはいえ、決して簡単な道のりではない。とにかく必要文章量が多く、検証材料も多い。初心者が手探りで進むにはなかなかに悪路だ。
では執筆は辛かったかというと、これがそうでもないのだ。


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