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【感想】第3回ケアとまちづくり未来会議@京都に参加して② “一緒に潜る”ニュータイプな聴き方 #040

前回の続きです。


トークセッション1のテーマについて

セッション1でのテーマは、「楽しそう、面白そう。興味関心から始まる場からケアはどう生まれていくのか」――楽しい市民活動から信頼あるケアリングへの移行を探るでした。

 銭湯、図書館、ガソリンスタンドなど、多様な暮らしの場で「ケア」という単語を聞くようになりました。病院にいるだけではいけないと、暮らしの場に医療者が出てくることも増えてきました。また医療福祉専門職でない人も「ケア」をキーワードに活動される方も増えてきました。
 一方で、ただイベントを行うだけでケアは生まれているのか?病院の機能をまちに持ち出して社会の医療化を図っているだけでは?といった意見も聞こえてきます。
 このセッションでは、ポップなケアとまちづくり活動の意義と、そのポップさ、興味関心を入り口として、そこから何が生まれているのか。楽しい市民活動から信頼あるケア共同体は生まれていくのかをテーマに、研究者、実践者を交えて、対話していきたいと思います。

一般社団法人ケアと暮らしの編集社プレスリリースより

エレベーターのちょっとしたハプニング…その男、ピンク色のトップスにつき

セッション1で登壇されたのは、永田祐さん(同志社大学社会学部教授)、守本陽一さん(医師)、佐藤友則さん(ウィー東城店 店長)の三名。

実は、私がセッション前にお名前とお顔と活動を知っていたのは、守本さんのみ(不勉強ですみません💦)。登壇者の方のプロフィールをじっくり読み込む暇もなく、ドタバタと準備して京都にやって来ていました。

当日、ケアとまちづくり未来会議(以下、ケアまち会議)の会場に、娘とともに到着したのは開始15分前。息子を託児に預けるため、別の場所から移動して予想よりもギリギリの時間になってしまいました。まだお昼ごはんを食べていなかったので、受付を済ませて1階に移動。

建物の端っこで娘とモソモソと手持ちのベーグルを食べて、再び会場へ移動しようとエレベーターに乗ったら、スーツケースを片手にピンク色のトップスを着た男性もバタバタとご一緒に。階を伺ったら、同じ4階とのこと。

移動するエレベーターの中でちょっと小話。こういうときに、沈黙が苦手でつい話しかけてしまう私。

「(ケアまち会議の)オープニングは始まっているようですが、セッション開始までにはもう少し時間があるみたいですよ」

とお伝えしたら、その男性が、

「僕、そのセッションに登壇するんです~遅れちゃって
💦

と息を弾ませながら返してくれて、そのときちょうど4階に到着。男性はガラガラーっとスーツケースと共に足早に会場へ。「え!!?」と思いつつ、私たちも荷物を置いてステージを見ると、さきほどの男性がすでに登壇されていました。ウィー東城店の佐藤さんだと知ってビックリ。プロフィール写真とトップスの色違うやん!と。(←トップスしか目が行ってない私💦)

本題 “一緒に潜る“というニュータイプな聴き方

さて、そんなこんなでようやく本題です。

登壇者3人のお話の中で、私が最も印象的だったお話のひとつが、その佐藤さんでした。

佐藤さんは、広島県庄原市で書店『ウィー東城店』を営む店長さん。ユニークな点は、その書店が単なる“書店”ではないこと。お店の横には美容室、駐車場敷地内にはコインランドリー、店内には化粧品ブース、その奥にはエステサロンなどがあるそうです。

この業態に行きついたのは、お客さまのお話を一つひとつ聴いていった結果、自然にそうなったのだとか。

お店に足を運んでくださるお客さまから「化粧品を購入したいわ」と聞けば佐藤さんは「じゃあ化粧品を置きましょうか」と応え、「髪を切りたい」と聞けば「じゃあ、美容室作りましょうか」と応え、「美味しいコーヒーが飲みたい」と聞けば「じゃあ、コーヒー出しましょうか」と応え、「コーヒーに合う甘いものが食べたい」と聞けば「じゃあ、甘いものを用意しましょうか」と応える――このお話を聞いて、私の頭の中で、思わず宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の詩が頭をよぎりました。

そして、私が最も気になったのは、佐藤さんのお客さまのお話の“聴き方”。佐藤さんは、いわゆる“傾聴”とはまた違うとおっしゃっていました。

佐藤さんがご自身の聴き方の引き合いに出されたのが、映画『グラン・ブルー』。

困っていらっしゃる方が、お店にやってくる。そのときに、グラン・ブルーのように一緒に海に潜るような感覚で寄り添って聴くそうです。ただし、このときに大切なのは、自分は酸素ボンベをつけて潜るということ。

何もつけずに一緒に潜って苦しい思いを共有するわけでもなく(≒全部を受け止めない)、一方で無理に相手を引き上げようとするのでもない。否定をすることもなく、肯定をすることもない。ただ一緒に潜って、聴く。

ファシリテーター役の守本さんが、そんな佐藤さんに対して「ニュータイプですね」とおっしゃっていましたが、まさにそうだなと思いました。

相手の話を聴いていると、相手の気持ちに自分を重ねてしまったり、ついその問題を解決しようと考え始めたり……でも、それは本当に相手が話したいことを“聴いている”のか?と問われると、かなりズレてしまっている場合も否めません……。

佐藤さんがそういうスタイルの聴き方をするのは、自分の原体験として「ただただ聴いてもらって心地よかったら」とおっしゃているのも印象的でした。

不登校だった子もはたらく居場所

佐藤さんが経営する『ウィー東城店』では、不登校だった子も週に何度か働いていらっしゃるとのこと。書店に来てくれて話を聴くうちに、「じゃあ、ちょっと手伝ってみる?」と。

現在、『ウィー東城店』では全部で17名のスタッフさんが働いていて、ここまでずっと黒字で来ていたそうです。ただ、今期は二店舗目を出して、赤字になることは覚悟していたとか。それでも、ずっと黒字で来たのは本当に凄まじいと思いました。

私も以前出版業界で働いていた身として、この出版不況の中 地方の書店さんが黒字を出し続けるのは奇跡的なこと。しかも人口約7,000人の町で、17名の大勢のスタッフがいながらの黒字。町の人が集うそのお店にぜひ足を運んでみたいと思いました。

同じ広島県内に住んでいるので、家族で行けたらいいな。そして、佐藤さんのお話を一緒に潜ってお聴きできたら嬉しいなぁ。

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