物置部屋、物多き部屋
床の見えぬ部屋
タイトルからしてオヤジギャグか。いや現実場面なのだ。
本格的な実家の片付けに取り掛かるにあたって、まずは物置部屋と化している二階の子ども部屋を整理せねばなるまい。まずは二階からと考えた訳である。
子ども部屋と言っても、結婚後の一時期には、自らが新居として住んでいた部屋でもある。なので尚更、そこには自らの所有物も相当数あるのだ。
二階は、6畳二間に加え、元々は作業部屋的な位置付けにあった3畳間とで構成されている。各部屋にはそれなりに十分な収納があって、屋根裏収納やロフトはない。
主が転出した後は、両親だけではなく既に家を出た自分たちの物も含め、不用品や季節用品が持ち込まれ続け、その結果、今や足の踏み場もなく(というのは大袈裟かも知れないけれど)、最早このまま居室として使える状況ではなくなっているのだ。
現状を確認。
二階に上がる。ざっと見回してみる。見回さなくとも分かるのだけれど、とりあえず見回してみる。
物だらけだ。
大きなもの、小さなもの、カオスと呼ぶほどには至らないまでも、そこそこの分量の物たちによって、床面に敷かれた絨毯を覆い隠している。
無論、各部屋の収納の中にもそれ相応に物が収まっている訳だから、実際には、目に見えているよりも更に多くの物たちが、この空間に所狭しと鎮座していることになる。
改めて室内を見回す。
布団を始めとする寝具類、ステレオなどの小型家電、扇風機や石油ストーブなどの季節用品、自分の子どもたちが幼き日に遊んだ玩具類、そして収納に入り切れず鴨居に掛けられた衣類。取り敢えずはそんなところか。
取り敢えずにしては、やはり多い。どう片付けるにしても、当面の目標が必要不可欠だろう。
そう。この際、思い切りが必要だ。まずは6畳間を6畳間らしくしよう。そのためには、床の上から物をなくすのだ。
今更ながらの断捨離。
目指すは「床の見える部屋」。当面の目標を自らに突き付けた。
布団
床の上を覆っている一番大きなものは何か。
それは寝具類、中でも布団が最大派閥を形成しているだろう。昔ながらの綿入りの布団。掛け布団に敷布団、ざっと数えて10枚はありそうだ。
当然(かどうかは家庭によって違うかも知れないが)、下に敷くマットレスもある。それと毛布。更には、布団繋がりで座布団もある。
畳の上に敷いて使って来たこれらの寝具類は、今後、打ち直して使う場面もないだろう。今の自宅には寝室として使える和室はないし、古いし、長期にわたって使われていない物だから、今更他人に差しあげられる訳でもない。
残念ながら、捨てるしかないのだ。
ウチの自治体(自治体によって多少は違うだろう)では、布団は粗大ゴミとして扱われる。スプリングのないマットレスもだ。
ちなみに、スプリングが入っているものは、専門業者に廃棄を委託せねばならないようだ。幸いにして、それはない。
毛布は燃やせるゴミ、座布団は長辺が50センチを超えない限り、同じく燃やせるゴミである。
中には、布団を小さく切って、燃やせるゴミに加工してしまう輩もいるようだが、ここはルールどおり粗大ゴミとして排出しよう。小さく切ることが、ルール違反とは言えないような気もするが。
そして、ここでひとつ重要な問題に気付く。
粗大ゴミは、処理施設に持ち込めば1点300円程度の手数料。しかしながら、回収に来て貰うとそれは2倍程度の額に跳ね上がる。
二階の話をしていたのだけれど、長期間使用していない布団類は、実は一階の押し入れにも収納されていることを把握している。二階の分と合わせれば、ざっと15枚以上あるのではないか。
持ち込みの手間や時間を考えれば、倍の手数料を支払ってでも、回収に来て貰うのが得策かも知れないけれど、トータルの差額が何千円と言うことにもなれば、持ち込みを選択したくなるのが人情だろう。
いや、自分がセコイだけか。
ともあれ、自力で処理施設に持ち込むことを決心する。
しかし、ここで更に重要なことに気付いてしまった。
持ち込むには自動車で運搬するしかない。リヤカーに布団を山積みにして、息を切らし牽き歩く姿もなかなかの風情だとは思うが、処理施設までは3キロほどあるし、最近腰やら腕やらが痛む。
だいたいからして、リヤカーなど持っていない。なので、ここは自動車で運ぶしかないのだ。
ところが、我が愛車は軽自動車である。小さい。しかも、乗用タイプだ。後席を折り畳んでも、布団を5枚積めるかどうかといった、ささやかなるキャパシティなのだ。
ならばレンタカー屋で軽トラを借りるか。いやいや、そうでなくても手数料がそこそこかかるからこその持ち込み処分。手数料を節約するためにレンタカー代を支払うとは、愚行としか言いようがないではないか。
往復を繰り返せばいい。距離は近い。ピストン輸送とはよく言ったものだ。ここはそれしかないだろう。
方針決定は思いの外早かった。
ただし、粗大ゴミは他にもある。家具、家電、いろいろとある。チェックするまでもなく、それは間違いない。であれば、布団だけを先に運ぶのが正しい選択と言えようか。
この辺りで考え疲れた。一旦思考停止。
明日は小型家電の回収日。手近にあったビデオデッキとCDデッキを1台ずつ手にする。
デッキたちにしてみれば思いがけないとばっちりかも知れない。きっとドキッとしたことだろう。でも、君たちは壊れているのだよ。
などと、実は自分に言い聞かせ、デッキたちに積もり積もった埃を掃い、収集場所へと旅立たせる支度をする。
小さな小さな一歩だけれど、この積み重ねが明日に繋がるのだ。
結局、布団の始末は、取り敢えず先送りとなった。