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忘れていたもの(オーディオ編)

押し入れを整理していたら箱の中から現れたもの。

レコードプレーヤーとカセットテープレコーダー。かなり古いものだ。昭和40年代前半ぐらいの製品か。

ラジオチューナー一体型レコードプレーヤー

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レコードプレーヤーの方は、AMFMチューナーとの一体型だ。(National製)

ただし、スピーカーは装備していないので単体では音は出ず、これ一台で音響機器として完結していないという意味では「一体型」とは言えないのかもしれない。

不思議なことに、この機器についての記憶はさっぱりない。

幼い頃の記憶を探ってみるのだが、どうにも記憶にない。

誰のものだろう。チューナーのダイヤルにバニーヘッドが貼ってあるところを見る限り父のものではないだろう。

父にはその趣味はない。

とすれば兄か。

多分そうだろう。そう思うと貼りそうだ。

それにしても記憶にない。兄のものであれば、自分だって使っていたはずだろうに。

幼い頃、所謂ステレオは自宅になかった。

レコードは簡易なレコードプレーヤーで聴いていた記憶がある。それこそ一体型のプラスティックボディで、モノラルサウンドの製品だったと思う。

父はカメラの趣味はあったけれどオーディオマニアではなかったのだ。

我が家にオーディオと呼べるような音響機器を導入したのは兄だったのである。

敢えてスピーカーが外付けになっているAMFMチューナー付きレコードプレーヤー。

本格的なステレオセットとは随分違うけれど、ご家庭用レコードプレーヤーよりはオーディオらしい香りがする。

もっとも、当時はステレオもテレビも家具調が流行していたから、手狭な我が家にはそもそも置けなかっただろう。

しかも、集合住宅という大きな音の出せない環境だったから、この辺が妥協点だったのかもしれない。

さて、どうしてものか。廃棄か?売ってみるか?自分で使うか?

なんだかレトロでレアグッズっぽくも見える。

単純に捨てるには忍びない。

では売れるだろうか?

だいぶ劣化が進んでいる。なにせ40年以上押し入れで眠っていたのだから、きっと内部の劣化も進んでいることだろう。

真空管を使っているような代物ではない。見た限り一般的なトランジスター製品と追われる。

ちなみに、物の本で調べると「トランジスタ」であって「トランジスター」ではない。何故だろう?「or」で終わるではないか。

コンピューターだってそうだ。「コンピュータ」の方が「コンピューター」より多数派のように感じる。「er」で終わるではないか。

どうでもいいことか。

まぁそれはそれとして、売るにしても自分で使うにしても動作確認は必須だ。動かしてみようではないか。

コンセントにプラグを差し込む。そして恐る恐るパワースイッチを押す。

チューナーのバックライトが点灯した。

いけるかもしれない。

セレクターをFMにセットする。アンテナは接続されていないので、確実な線を狙ってステレオではなくモノラルを選び、ボリュームレバーをスライドさせてみる。

無音。レトロプレーヤーは押し黙ったままだ。

そこで気付く。当たり前だ、スピーカーがない。鳴る訳ないだろ。

同時に発掘したスピーカーはあるのだけれど、ここにはケーブルがないから即座に繋げない。

ヘッドホンは手元にない。イヤホンではプラグが小さくて合わない。

それならばプレーヤーを起動してみよう。

回るのか回らないのか。思えばそれが一番肝心なところだ。

何故って、一番欲しいのはレコードプレーヤーとしての機能なのだ。

最近はアナログ盤の新譜をリリースするミュージシャンも増えて来た。我が家にも少しはある。

それより何より、実家の整理の過程で長年買い集めて来たレコードを発見しているのだ。

懐かしい音源を聴いてみたい。

けれども、今、使用可能なレコードプレーヤーは手元にはない。

CD全盛となるまで使用していたオーディオはあったのだけれど、30年ほど実家に放置していたら、金属部分は錆びゴム部品は溶けるなどかなり厳しい状態と化していた。

この一連の実家整理のタイミングで既に処分してしまったのだ。

だから、少し前からシンプルなもので良いから欲しいと思っていたのである。

もしこれが動いてくれれば、取り敢えずは聴ける。押し入れから出て来た思いがけないプレゼントになるかもしれない。

プレーヤーのセレクターを45回転にセットする。

ターンテーブルは回らない。

33回転にしてみる。

やはり回らない。

78回転にしてみる。60ヘルツにもしてみる。ターンテーブルを手動で回してもみる。

どうやっても回らない。唸りもしない。ベルト切れではなくモーターが動いていないのだ。

修理するにはそれ相応の費用がかかることだろう。

自分で使うのは諦めた。勿論売るのも。

カセットテープレコーダー

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ラジカセではない。(SONY製)

ラジカセのデビューは1967年の松下電器製だから、年代的には同等と思われるものの、この製品にはラジオチューナーが付いていない。

シンプルにカセットテープレコーダーなのだ。

以前に書いたコンパクトカセットテープの処分の話では、幼少期にはオープンリールのテープレコーダーの思い出があると書いた。

このレトロなカセットテープレコーダーについては、まるで記憶がないのだ。

しかしながら、確かに我が家の押し入れに保存されていた。恐らくは、半世紀ほど人の目に触れていなかったのではないか。

木目調のサイドパネルが、如何にもテレビやステレオに家具調が流行っていた時代を感じさせる。

所謂コンポーネントステレオの一部を構成するようなものではない。あくまでも単体で機能するテープレコーダーと思われる。

ただし、コンパクトカセットがオープンリールに取って代わって一般的になった頃、家庭向けとして流通していたのはこのタイプではなかったと思う。

スイッチ類がワニワニパニックよろしく手前に歯のように並び、それを短辺とする直方体的デザインの機器が一般的だったと思う。

英会話等の学習向けには、手前にスイッチが並んで片手でカチャカチャと素早く操作出来ることが望ましく、その為にあのようなレイアウトになっていたのではないかと思う。

このタイプは、音楽鑑賞用を意識したレイアウトというかデザインだったのではないだろうか?

本格オーディオというか、上級機種のスイッチレイアウトはこんな感じが多かったと記憶している。

ただし、この製品は一般家庭用のものと思われ、いたってシンプルな構成になっている。

入門用なのか廉価版なのか、そういう立ち位置の製品なのだろう。

それにしても誰のものだ?十中八九、兄のものなのだろう。

考えても仕方ない。兄に聞けばいいだけだ。今は兄のものということにしておこう。

レコードプレーヤーと同じ、とにかく動かしてみよう。

電源スイッチを入れる。インジケーターのバックランプが弱々しく点灯する。

続いて、再生ボタンを押し込む。フラットなスイッチではない。可動域は1センチぐらいある。

無音。

早送りボタン、巻き戻しボタンと続けて試してみる。なんなら指でコマ回しのように捻ってみる。

無音。

レコードプレーヤーと同じ結果が待っていた。

だから、活用は諦めた。