冴えない日々を送る中年オッサン諸君、我々の人生に「舌触りの良い物語」を発見したぞ!『カンパニー』(伊吹有喜)
カンパニー。
本作のタイトル。
「会社」「バレエ団」「仲間」
読む人の共感するものへの濃度によって、その色は変わる…。
…なんことはどうでもよくて、あなたが「40代を過ぎ」「冴えない会社生活を送り」「傷つきやすい」、そんな愛すべきダメダメ男性ならば、いつでも撤退できる軽い気持ちで読んでみることをお勧めする。
この物語は、「冴えない中年オッサン」に、「夢っぽいもの」や「希望っぽいもの」を、熱すぎず、温すぎもしない温度感で与えてくれるからだ。
主人公の会社員は、47歳のオッサン。
プロローグで描かれた彼は、世にあふれる「離婚を考える夫婦のコミックエッセイ」の夫を濃縮還元したような男。
けれど、その「プロローグの彼」が、リストラ目的の部署への異動をきっかけに、「頼れるキャラ」へと変わってゆくのだ。
プロローグとエピローグでは全くの「別キャラ」…というのではなく、ものの60ページも過ぎれば、「実直な」空気感をまとい始める。
僕には、この47歳のオッサン主人公が、最後まで読み終えたあとも、プロローグの彼と、とても地続きなのだとは思えなかった。
…けれど。
ことし46歳になる僕には、とても居心地がよい物語だった。
会社に与えられた業務を実直にこなしていくだけで、「中年オッサンが夢見ること」が、主人公を次々に包み込んでくれるからだ。
スパイスはたったひとつ。
自分が関わる世界を「自分ごと」としてとらえること。
それだけで彼の人生の景色は、見事に変わる。
跡形もなく、すっかりと、とにかく一変するのだ。
甘露、甘露。
ことし46歳になる「へなちょこオッサン」の僕には、頬を常に赤らめてくれている甘露寺蜜璃ちゃんにくるまれるような「居心地のよい物語」だった。
傷のなめ合いが好きな御仁は、ともにとっぷりと浸かりましょう。
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