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動き出す、みんなの物語―虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 4th Live! ~Love the Life We Live~

 去る2022年2月26日・27日に京セラドーム大阪で開催された、「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 4th Live! ~Love the Life We Live~」に両日参加してきました。だいぶ遅くなってしまいましたが、その感想を簡単ながらもお送りします。

 さて、この4th Live!は4thアルバム「L!L!L! (Love the Life We Live)」を背負ってのライブとなりました。そのため『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS』(以下、スクスタ)のキズナエピソードで取り上げられたソロ楽曲が中心となりましたが、メンバーのうち新規加入2人を除いた10人は「校内フィルムフェスティバル」のなかで楽曲が制作されるというもので、多くのメンバーが普段とはかなりテイストが異なる楽曲を披露することとなりました。それ故に昨年3月に開催された「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 校内シャッフルフェスティバル」に近い感覚であったとは皆さん感じたことと思います。

 つまりは「校内シャッフルフェスティバル」同様、自らの演じるキャラクターとしての軸を保ちつつ、違う方向性の表現力が試される場であったわけで、その辺りをDay2は配信も購入して堪能させていただきました(もちろん新規加入の2人も含めて)。以下、公式順に書くキャストのパフォーマンスから感じたことを書かせていただきます。

 なお、今回も私が応援する宮下愛役村上奈津実さんにフラスタを贈らせていただきました。企画にご参加いただきました皆様へ、この場にて恐縮ですが改めてお礼を申し上げます。

ソロパフォーマンスへの感想

上原歩夢役 大西亜玖璃さん
 普段の歩夢の持ち曲とはかなり違う「Break The System」を披露した上原歩夢役大西亜玖璃さん。炎まで使うような楽曲だけあり、今までにない激しいダンスを見ることができました。そのような中でも持ち味である動きの丁寧さが出ていて、手足の長さというのも相まって強くもあり美しくもあり。まだ動きの多さに慣れていない印象は受けましたが、始まった直後の表情など決め所の表現力もあって、魅力的なパフォーマンスだなと感じましたね。こういう方向のパフォーマンスというのもどんどん披露してほしいですから、3rdアルバム収録の「Say Good-Bye 涙」のように、歩夢らしくもアクティブな楽曲が今後増えると良いなと思います。

中須かすみ役 相良茉優さん
 中須かすみ役相良茉優さんもまた、普段と異なるカッコいい楽曲「TO BE YOURSELF」を披露することになりました。セリフを入れたり登場・退場時に煙を使ったりと、魔法少女をテーマとしてこだわった演出が見どころでした。相良さんのパフォーマンスについては「校内シャッフルフェスティバル」で褒めたこともありますが、今回もカッコいいながらもかすみらしい(良い意味での)ちんちくりん感が出ていましたし、かすみの芯の強さみたいなものが声や動きに乗っていて非常に良かったと思います。やはりキャラクターをきちんと背負った時の相良さん、強いなあと感じましたね。

桜坂しずく役 前田佳織里さん
 もともと所属している演劇部の楽曲だったために、桜坂しずく役前田佳織里さんが披露した「エイエ戦サー」は前2人ほど大きく変わる楽曲でありませんでしたが、しずくらしい美しい声と力強い和テイストの音楽というのはよく合いますね。なかなか面白かったです。振り付けも剣士として演じているようなものになっていて、小柄ながらも存在感のある前田さんの動きがあってこそ楽しめるものでした。Day2のMCでお父さんから剣道を学んだことがあると話していましたが、それもあってか間奏部分の素振りの動きがものすごく良くて、そんな経験もしずくらしい演技に味方したなと感じました。

朝香果林役 久保田未夢さん
 普段のキャラクターのイメージとは異なり、まさに爽やかな青春と言わんばかりの「Turn it Up!」を披露した朝香果林役久保田未夢さん。久保田さんの表現力はやはり見事なもので…一見相反するようにも見える、楽曲の爽やかさと果林のセクシーさを非常にうまく織り交ぜていて、本当に魅力的なパフォーマンスでした。素敵な笑顔が非常に印象的でしたし、投げキッスなどのカメラをしっかりと意識した動きをしたり、Day2では合間にセリフを入れてきたりと、相変わらず手口がエグいエグい…。こんな果林も魅力的なのだと見せつけてくれるステージでした。

宮下愛役 村上奈津実さん
 今回最も普段のイメージと異なる楽曲が与えられたのが、「Diabolic mulier」を披露した宮下愛役村上奈津実さん。あまりに違いすぎてどうなるかと思っていたのですが…ちょっとすごすぎましたね…。なんというか、ただただ圧倒されるばかりでした。スマイル系スクールアイドル・宮下愛の武器といえば笑顔とアクティブな動きで、前者はもともとの武器として、後者はステージを重ねるごとに成長して身につけている村上さんですが、今回はそのいずれも通用しないステージ。しかしながら妖艶さの中に確かに存在する愛の強さを秘めた表情に、メインステージの中心だけ使った動きの少ない振り付けながらも圧倒的な熱量を込めた動き…その凄まじいまでの表現力に終始飲み込まれ、文字通り言葉も出ないくらいでした。
 冒頭に載せた「校内シャッフルフェスティバル」の感想では「ニジガクの中でも最も化けるキャスト」と評したのですが、ついにその時が来てしまったようです。これは応援している方だからという贔屓目を一切抜きにした話で、正直今の村上さんには本当に誰も勝てないんじゃないかというレベルでした。今回の4th Live!のソロパフォーマンスのなかで、頭数個抜けてぶっちぎりで素晴らしかったです。力強さのうえに表現の幅までものにした村上さんが今後どんなステージを見せてくれるのか…皆さんにも是非注目していただきたいです。

近江彼方役 鬼頭明里さん
 近江彼方役鬼頭明里さんもまた、キャラクターの雰囲気と大幅に異なるアクティブな楽曲である「Silent Blaze」を披露しました。これだけ表現に差があると苦労した部分も多いことだと思いますが、実力のある方だけあり彼方のマイペースな雰囲気も感じ取ることができました。楽曲が楽曲だけに振り付けの動きも多いですが、その動きがピリッとしすぎず少しまったりした印象を受けるんですよね。彼方とのシンクロ度合いが高い方だとFirst Live!の時から感じていて、異なる楽曲ゆえに彼方らしい歌声を保つ難しさはあったと思いますが、今回も彼方らしさがよく出ていました。

優木せつ菜役 楠木ともりさん
 今回もトロッコ上でのパフォーマンスとなった、「ヤダ!」を披露した優木せつ菜役楠木ともりさん。Day2のMCでも話していた通り、制約が大きな中でも精一杯せつ菜としてパフォーマンスしていたと思います。いつもとは違う可愛らしさを全面に出しながらも、可愛いにも熱く全力を出すせつ菜らしい姿が印象的。動きを少なくする分表情や声での表現が肝になりますが、どちらも本当に可愛くて、特に決め所での笑顔がとても魅力的でした。楠木さんだからこそせつ菜として立てるのだと改めて感じた今回の4th Live!。これからも存分にせつ菜を表現できるよう、これからもプロジェクト側が楠木さんを全力で支え、輝ける場を用意してほしいと強く思います。

エマ・ヴェルデ役 指出毬亜さん
 エマ・ヴェルデ役指出毬亜さんが披露した「いつだってfor you!」は、エマのイメージらしい楽曲でありつつも明るく元気な雰囲気が特徴的です。校内シャッフルフェスティバル以降かなり伸びたと感じる指出さんですが、今回のパフォーマンスにも成長がよく表れていたと思います。のびのびとした美しい動き、とてもかわいらしい笑顔、ニジガク随一ともいえる歌唱力、どれをとっても非常に素敵で癒やされるステージでした。3rd Live!同様ライブを通してエマの魅力を目一杯伝えてくれていて、これはエマのファンも増えますよねえ…。指出さんのこれからにますます期待してしまう、素晴らしいパフォーマンスでした。

天王寺璃奈役 田中ちえ美さん
 こちらもニジガクで個人的に注目している方、天王寺璃奈役田中ちえ美さんは「First Love Again」を披露。璃奈の想いを背負ってパフォーマンスする姿に毎回心打たれているのですが、今回もとても素敵なステージでした。普段とはまた一味違う穏やかな楽曲ながらも、璃奈としての歌声を崩すことは決してなく、璃奈の中に芽生えた新たな感情を見事に歌い上げてくれました。毎度のことながらも表情の使い方が素晴らしく、とにかく魅力的なパフォーマンスをしてくれる方ですよ、本当に。これからもどのように璃奈を表現してくれるのか、楽しみにしています。

三船栞子役 小泉萌香さん
 これまた今までの持ち曲とは大幅に異なる楽しい楽曲、「コンセントレイト!」を披露したのは三船栞子役小泉萌香さん。栞子はふだんしっかり者なイメージながらも、実は1年生らしくかわいらしい面が多いのも魅力的なキャラクターですが、このステージにはそんな素敵なギャップが詰まっていましたね。栞子らしい美しい所作はありつつもかわいらしく、そんな小泉さんのパフォーマンスが光っていました。最後の「いっえ~い」も、ノリにちょっと慣れていない栞子感があってすごく良かったです。もともと所属している生徒会の楽曲だからこそではありますが、このような様々な魅力が見えてくる普段と異なる楽曲もまた観たいなと感じました。

ミア・テイラー役 内田秀さん
 COUNTDOWN LoveLive!で初めてステージに立ち、LIVE & FAN MEETINGを経て今回が3回目のステージとなった、ミア・テイラー役内田秀さん。「Toy Doll」は本当に素晴らしかったです。他のキャストに比べて経験値の問題でどうなるかと心配していた部分もあったのですが、そんなことを一切感じさせない圧倒的な熱量をぶつけてきてくれて、これは盛り上がる他ありませんでした。後ろで流れるスクスタPVとのシンクロパフォーマンスもきちんとできていて、他のキャストに決して劣ることのないステージでした。ステージを広く使ったことで歌に影響は出ていましたが、体力面などで言っても間違いなくこれから伸びる方でしょう。ニジガク単独ライブとしては初めてのこの場で、とんでもないダークホースが来たなという気分です。

鐘嵐珠役 法元明菜さん
 内田さん同様にステージは3回目、さらに単なるステージ経験という意味では最もフレッシュなのが鐘嵐珠役法元明菜さん。披露した「夜明珠」は、17歳児という言葉が相応しいながらも、大人びた魅力を持つ嵐珠らしい楽曲ですね。決め所の表情や動きを中心にしっかりと役作りをしてきていて、嵐珠の魅力をぶつけにくる非常に力強いステージでした。圧倒的な実力を持つ嵐珠というキャラクターを背負ってのパフォーマンスはなかなか大変だと思いますが、人一倍想いが強い方というのは常々感じているので、ここからステージ経験を積んでいくごとにどれほど成長した姿を見せてくれるか楽しみですね。

 ここまでキャストひとりひとりのソロパフォーマンスをざっくりとですが振り返ってみました。普段の楽曲とは違うあるいは経験値としては多くないなかで、ここまでに明確に褒めた方はもちろん、12人それぞれがかなり頑張ってくれていたと思います。ステージに立つことを通して成長してきた皆さんですから、これからも輝く姿を見せてくれることを楽しみにしています。
 さて、ここからはライブそのものに対する評価の話です。まあいつものことというか何というかですが…以下の内容は個人的にスッキリしなかった部分の話がほとんどです。どこまで書くか迷いはしましたが、やはりライブに対する「感想」という以上避けて通るべきではないですから。マイナスな話を読みたくない方はこの辺りでブラウザバックをお願いします。

ライブ全体に対する雑感

軸を感じることができなかった構成
 最初に指摘したいのは、今回のライブ構成からはテーマや軸みたいなものを感じ取れなかったという点。それぞれの日程の構成を確認していただければわかると思いますが、Day1はオープニングステージ+校内フィルムフェスティバル+特別ステージ(新規メンバー2名)+アンコールという構成なのに対して、Day2は校内フィルムフェスティバル楽曲・特別ステージ楽曲・ユニット楽曲がまぜこぜになっています。表題にもなっている4thアルバムは校内フィルムフェスティバルの曲を中心としていますが、Day2の構成ではその校内フィルムフェスティバルすら成り立ちません。ライブテーマから軸となる部分を日によって変えてしまうのは、そのことに何か意味があれば良いのですが、今回のようなただ順番を混ぜるだけというのはライブの根幹が揺らぐものだと思います。

Love the Life We Liveに至る物語はどこへ
 ライブの表題にも入っている通り、今回の核となる楽曲は「L!L!L! (Love the Life We Live)」です。これはスクスタメインストーリー2nd Seasonを通してたどり着いた楽曲ですから、そこに至るまでの道のりがライブの構成としても必要なはずでした。しかし今回、メインストーリーで挿入歌として登場した「翠いカナリア」「I'm Still...」「Queendom」の3曲は披露されていません。R3BIRTHのLIVE & FAN MEETINGで披露したからというのはおかしな話で、1年もかけて進めてきたメインストーリーをナンバリングライブできちんと扱わない、というのは今回最も釈然としなかった部分です。一応補足をしておくと、この3曲を個人的に観たかったとかそういう話ではなく、純粋に構成としての問題です。私はR3BIRTHのLIVE & FAN MEETINGにも参加していますから。
 あと、「L!L!L! (Love the Life We Live)」を最初に持ってくるというのも微妙な話で。オープニングの演出上仕方ない部分ではあるのですが、この楽曲は今までの物語のゴールであり、余韻も充分に味わえる楽曲ですから、もうちょっといいところに置けなかったかなあ…とは思ってしまいます。これは私も正解が分からない話ですが。

12人が「みんな」であるからこそ
 これは校内シャッフルフェスティバルの時にも感じたことですが、Day1のアンコールで披露された9人での「虹色Passions!」は今回のライブには適さないと思います。新たな2人を迎えてから初めての単独ライブという場ですから、ここでの「みんな」は12人全員。であるにもかかわらず9人での楽曲を披露というのはやはりいただけません。これを言うと9人あるいは10人楽曲が腫れ物のようになってしまいますが、作品としてそういう形をとってしまった事実は戻りませんから、「Love U my friends」や「Just Believe!!!」のように、今後のためにその腫れ物を取り除いていく必要もあります。まだ披露されていない9人楽曲もあり、この辺りはまだまだ時間がかかりそうな問題ですが…。

ステージ演出のお話
 3rd Live!の時点ですでに指摘したことではありますが、まずはバックダンサーは本当に必要ですか?という話。前回ほどのマズさは無かったとはいえ、キャスト以外をステージに乗せる以上はそうでないといけない理由がほしいところです。今回は「Turn it Up!」「コンセントレイト!」の2曲に配置していましたが、披露したのはどちらも充分に実力あるキャストですから、バックダンサーが楽曲表現に欠かせないということは決してないはず。ソロパフォーマンスで楽曲の世界を作り上げるのが腕の見せどころなのに、その機会を奪われているのは大変に残念ですし、作り手がキャストの実力を甘く見すぎなのではとすら思います。
 次にやや地味な点ですが、ステージ中央にあるハート型のゲートが上段ステージに大きく被っていましたが、これがキャストパフォーマンスを見る際の邪魔になってしまったのが気になりました。特に「夜明珠」「THE SECRET NiGHT」あたりですが、ダンスが重要で足元まできっちりパフォーマンスしていたのに、セットのせいでそこが見えなくなっていまして…。キャストがしっかり頑張ってくれているので、そこから引き算になってしまうことが無いようにしていただきたいですね。
 あと最後に、スクスタPVの制作をライブには間に合わせてくださいという点。今までもそうでしたが、虹ヶ咲はライブで楽曲を披露した後にスクスタMVが実装されるということが多々あります。しかしながらこれでは、ライブという重要な場面で、ラブライブ!シリーズ名物のアニメと現実のシンクロパフォーマンスを楽しむことができないんですよね。新規加入の2人はソロ楽曲でもスクスタPVがあるのですから、せめてそこは12人全員同じ土俵に立ってもらいたいところです。

良いと思った部分もありました
 散々辛口なことは書きましたが、4th Live!では良いと思った部分もありました。オープニングの2人が加わる演出は私も感動しましたし、「Love U my friends」の12人分の衣装の披露に、「Just Believe!!!」の12人版スクスタPVを用意したことは非常に評価しています。それから2nd Live!では大問題だった、ソロ楽曲に至るキズナエピソードまとめ映像をライブ前に公開した点も大幅な改善点です。
 しかしここまで述べてきたように問題点は多くありますから、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会がステージでより輝けるよう、今後のライブが少しでも良い出来になることを願っています。特にライブに物語を絡めるという点が今も非常に弱く、次はTVアニメの物語に沿ったライブになるでしょうから、この点だけでも早急に改善してほしいところです。

 長々と嫌なことを書いてしまいましたが、感じた問題点ははっきりと書いておかないといけないなと感じたため、今回はこのような形にさせていただきました。キャストがしっかり頑張って良いパフォーマンスをしてくれている以上、良い作品を提供することでキャストをきちんとバックアップしてもらいたいですからね。
 次の5th Live!は年内開催とのことで、これから始まるTVアニメ2期を経て、また一段と成長したニジガクの皆さんと会えることを楽しみにしています。作品に対して思うことは色々あれど、彼女たちがスクールアイドルとしてトキメキを追い求める限り、これからも目を離すことはありませんから。

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