妖怪ウォッチ3スキヤキ クリアレビュー

プレイ時間:60時間
評価:91点

 DQM3に85点をつけてしまった以上、このゲームの点数は必然的にこうなる。3DSのゲームであることを差し引いても、粗がないわけでは決してないんだけどね。

・シナリオ
 
レベルファイブ伝統の細かいユーモアや各章の面白さは健在だが、最終盤までラスボスの存在が影も形も見えず、つながりのない独立した小さな事件の繋ぎ合わせのように見えてしまう。全15章のうち前10章ではダブル主人公のケータとイナホがほとんど関わり合わないのもその要因で、肩透かしを食らった気分になるし、やや退屈で、プレイの意義を見出しにくい。あと、何か最終章付近でちょっとプレイ時間を引き延ばそうという悪意を感じる。別にそんなに必死にならなくてもボリューム不足な感じはしないけどな。
 FBYの二人、ヨップル社、ヒーローたち、マック、UFO、と全てのキャラクターが思わせぶりに配置され、雑に消化されていく。イナイレgoシリーズなど、後年のレベルファイブゲームにも共通する問題点である。
 クレジットを見ると、シナリオ原案が日野氏で、シナリオライターが四人載っている。この辺の体制がこういうとっ散らかった構成の原因では、と思う一方で、アニメを前提に作られた話を無理矢理ゲーム一本にまとめたからこうなった、という説もある。妖怪2のストーリーはアニメではなく映画で消化したので、評価の高いシナリオになっているのでは。
 レベルファイブはアニメとのメディアミックスで市場を支配した企業ではあるものの、いつしかゲーム→アニメ、という間違えてはならない順番を間違えてしまったのではないか、という気がする。

・キャラクター
 イナホがとにかく可愛い。
前評判と印象が違い過ぎて驚いている。
 ケータが究極の「フツー」をコンセプトにしたキャラクターなのに対し、イナホはオタク女子を小学生に縮めたようなキャラクターである。「フツー」の主人公を愛していた前作ファンからすれば違和感があるのかもしれないが、個人的にはオタク特有の粘っこさみたいなものが綺麗に取り払われていて、マイペースで変人ではあるが明るくて嫌味のない、かなり独自性のある魅力的なキャラクターに仕上がっている。オタクをキャラクターに落とし込もうとすると、変人っぽさが薄れてしまうか、気持ち悪さが残ってしまうかのどちらかになりがちなところ、嫌な所だけをうまく除いたキャラクター造形は流石の一言。このキャラを4であんな扱いにしたのはかなり勿体ないと思う。ていうか、なんでこんなに悪評が広まっているんだ?
 周りのクラスメイトたちのイナホへの接し方も、彼女の個性を尊重しながら自然に受け入れる感じで、理想のクラスっぽくて非常によろしい。このゲームが発売された当時から、こんなに漂白されてはいないイナホみたいな女子ってクラスに一人くらいはいたと思ってて、そういう点でも子供向けゲームとしてとても教育的だと思う。
 自分が女性キャラクターをこんなに可愛い可愛いと言うのはかなり珍しくて自分でもびっくりしているのだが、いつもアニメやゲームのキャラクターの性的モチーフに辟易している自分としては、女子小学生という性的な印象を一切感じさせない女性キャラクターに特に魅力を感じるのかもしれない。

・妖怪
 総勢700体以上の妖怪収録数は、色違いが含まれているといっても一本のゲームに登場できる限界値に近く圧巻。一体一体のクオリティはほとんどダジャレで、ポケモンに比べちゃうと劣るのはご愛敬だが、序盤からクリア後まで新しい妖怪と出会い続けることができるのはやっぱり大きく評価を上げる。レベルファイブに限らず、キャラクターの収録数は3DSからswitchになって失われたオーバーテクノロジーのひとつで、非常に残念に感じている。

・バトル
 従来の円盤を回すバトルから、3x3のタクティクスメダルバトルとやらに変わった……が、面白くなったかと言われるとイマイチ。
 対人戦の戦略性は確実に上がったと思うけど、オフラインに限った話をすると、結局フィールドに表示された攻撃範囲からメダルを動かして避ける、というだけになりがちで、2までの各ボスごとの凝ったギミック戦闘に比べると単調で微妙。避けるか食らうかのゼロ・百になりやすいのも良くなくて、円盤回してた方が戦略性があったような気がしてならない。
 おはらい・必殺技発動時のミニゲームが追加・変更されたのだが、これがやけに面倒で時間がかかる。あんまり気持ちよくないので改悪だと思う。プレイヤーのバトルへの介入が「つつく」からブラスターに変わったのも、テンポの悪化と友達になりやすさの低下を招いていてイマイチ。
 あと、令和の時代から見ちゃうとバトルに倍速は欲しくなる。プレイヤーがあんまり操作しないバトルシステムだから余計に。
 ともだち確率の低さは相変わらずマゾ仕様だが、スキヤキではバスターズTにて確実に友達になるヤケクソ食べ物「禁断の果実」が手に入るので、一気に改善というか解消された。ゲーム性をぶっ壊していると言われればぐうの音も出ないんだけど、俺はこれくらいプレイヤーに優しい方が評価できる。キャラクターの数が多いゲームだと猶更。

・マップとシステム
 ファストトラベルの解禁遅すぎ、渋りすぎ。もうこれに尽きる。
 この時代のゲームなら仕方ない……といっても無理がある。そもそもエンカウントがほとんどないゲームでダッシュがスタミナ制なのも納得いってない。本作はサブクエストや寄り道要素も豊富で、あちこち走り回ることになるのに、ファストトラベルが弱いとマジでやる気が失せる。あと、普通に寝たいだけなのにゾンビナイトに強制参加させるのをやめてくれ。
 それ以外はおおむね快適で、高低差もないし、下画面に常時表示され続けるマップは拡大縮小移動が簡単でめちゃくちゃ見やすい。二画面最高。お前も二画面最高と叫べ。
 普通のバトル以外のミニゲームは自分のようなゲーム苦手民にはやや苦しい奴もある。あらゆるゲームに言えることだけど、こういう本筋じゃないちょっとした要素でゲームを投げる羽目になるのは誰も得しないので、何度か失敗が続いた時の救済要素は欲しいと思う。
 ストーリー進行に従って要素がどんどん足されていくし、サブクエストの報酬でちゃんと欲しいものをくれることも多いので、すぐわき道に逸れたくなる。60時間遊んだけどまだまだ半分くらいしか触れていない実感があり、ボリュームはてんこ盛り。これは数多くの妖怪と、3作品かけて積み上げてきた寄り道要素やマップがないと成り立たないので、そういう意味では集大成的なクオリティといって差し支えない。

・総評
 妖怪ウォッチシリーズの集大成といえる、超特大ボリュームのお化けゲーム。時代の違いがあってもなおある程度の快適さを維持している所にはレベルファイブのUI・システム設計の技術力の高さを感じざるを得ない。シナリオも不快感を感じさせるような展開はなくプレイの邪魔はしないが、前作「2」に比べるとかなり物足りなさはある。
 正直、switch時代のどのRPGより面白いと思う。懐古じゃなくて初めて遊んだゲームでそう思うってことは、本当にそうなんだろうな。3DSとレベルファイブが恋しい。誰かレベルファイブに開発費100億くらいあげて。


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