「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」視聴後感想

 こんな映画を皆して褒め称えて評論家叩き棒にしてたってマジ?

 いやあ、ひどいね。そもそもマリオ&ルイ―ジの故郷がブルックリンで、キノコ王国には異世界転生してきた、なんて描写は本編のどこにもない。それはまだいいとして、現実世界で脱サラして配管工になるけど失敗して親に馬鹿にされて……という展開は果たして必要だったのか。マリオというキャラクターに、そんな陳腐でステレオタイプなバックボーンを付与する意味がどこにあるのか……というか、実際に結末まで見て、「必要なかった」と断言できる。
 この辺りは宮本茂氏の要望だったことがマリオ映画公開記念!宮本茂さんインタビュー 制作の始まりから驚きの設定まで – ページ 2 – Nintendo DREAM WEB (ndw.jp)で明かされている。

 『将来に向けてもやっておくべきこととして、マリオの家族はほしいと思ったんですよね。』正気か?誰がブルックリンの禿げたおっさんを「マリオの父です」って紹介されて喜ぶねん。

 皆がマリオと聞いて思い浮かぶのは、「ピーチ姫が攫われて、それをマリオが助け出す話」なのに、ポリコレ意識か知らんけどピーチが強いヒロインとして全編にわたって大活躍するのも謎。マリオシリーズにそんな作品あったか?
 何より滑稽なのが、その代償としてルイージが一生クッパ城に囚われててほとんど何も活躍しないこと。ラストにちょこっとだけ出てきてアリバイ作りするだけ。「マリオブラザーズ」じゃねぇじゃん。

 ギャグは終始滑り散らかしてるんだけど、それとは別に日本語吹き替えの台詞がおかしいというか、変に現代的な言葉遣いをしようとしてて違和感モリモリになってて、吹替はやっぱり駄目だな、とか思ってたら宮本の仕業だった。またお前か。


『それで今回の映画を作るときに、「最初から日本語の脚本を作りたい」って話をしたんです。英語の脚本を見せられても、細かいニュアンスがわからないですから。

僕は社内では、“NHK朝ドラ評論家”っていう肩書で(笑)。
毎日朝ドラをチェックして、いろいろ批評するわけですよ。素晴らしいってべた褒めしたり、なっていないって話をしたり。だんだんとうるさくなってきて、嫁さんなんかには「私に言わんといて、どっかでしゃべって」って言われたり(笑)。

そういうことをもう10年、20年と繰り返しているうちに、ドラマを作るということに興味を持ったんです。

自分が面白いなと思う朝ドラは、セリフ回しが生き生きしているんです。アドリブを重視している監督のほうが面白いなとか。
撮影監督か監督が現場に入って、「はいOK!」って誰かが言うわけじゃないですか、よくこのセリフでOKって出したなって思うこともたくさんあって。
ドラマを作るうえでは、そういう生き生きした会話が大事なんだなと。』
マリオ映画公開記念!宮本茂さんインタビュー 制作の始まりから驚きの設定まで – ページ 3 – Nintendo DREAM WEB (ndw.jp)

 当たり前だが、朝ドラとマリオは違う。人間とはかけ離れたビジュアルのキャラクターに、無理矢理人間っぽい「生き生きとした」台詞を喋らせると違和感だらけになってしまうのだ。
 アニメのキャラクターには、キャラクター性に沿った口調、言葉遣いをさせてあげた方が、逆に自然になるというのは常識だと思っていたのだが……。(野原しんのすけとか、オラ~ゾ、なんて喋り方なのに自然でしょ)

 ハリウッドの脚本家は、三幕構成などの決められた構成パターンをとても大切にしていて、どんな題材でもそのパターンの中に押し込めてしまう、という話を聞いたことがある。この映画もその被害者で、「最初に現在の悲惨な状況を見せる」「転機があって、特訓して、試練を乗り越える」「大切なものを見つけて、冒頭の課題を解決する」という構成の中に、マリオというストーリーもへったくれもないゲームを無理矢理押し込めようとして、陳腐でつまらない作品にしてしまった典型的な失敗例だと思う。
 ただ、先のインタビューを見ている限り、その失敗に宮本茂氏も積極的に加担してるような気がして、アイデアとそれを活かす力は全くの別物なんだな、ということを強く感じた。

 納得いかないのは、この映画が

評論家:「マリオの世界観は再現できているがテーマ、思想性に欠ける」
一般人:「マリオの世界観が再現できていて楽しい! 思想?どうでもいいわ」

みたいな語られ方をしていることだ。
 どう考えたってこの映画は、「マリオの世界観も破壊しているし思想もない」と思うのだが……。だってラストバトルをブルックリンでやってんだよ? 実写モンハンかよ。
 CGの出来が良くてマリカーのネタが入ってれば満足なのか?一般人の感性はよくわからない……。

 というわけで、細かいことは置いといて楽しい気分になれる映画を観たはずなのに、完全に白けた一時間半を過ごしてしまった話だった。
 ハリウッド映画、ずっと性に合わん。




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