「テイルズ オブ アライズ」クリアレビュー

プレイ時間:38時間
得点:81点
総評:バンナムが一番輝くのは任天堂の下請け

・起死回生を懸けた王道RPG

 ドラクエ・FF・テイルズを指して三大RPGと呼ばれたのは今や昔、今や三大RPGはポケモン・ポケモン・ポケモンと言われる始末。そんな中、人気絶頂のswitchをハブるという強気采配でリリースされたテイルズ最新作。
 ……とは言ったものの、客観的に見て比較対象はどう見ても「イース」シリーズなので、そこを意識しながらのレビューになる。難易度はノーマル。

・バトルシステム

 時間経過で回復するAPを使って技を出し、それとは別に溜まるBPでブースト技(敵の攻撃に対応してカウンターできる)を出し、さらにダメージを受けるなどするとランダムで入るオーバーリミットで必殺技を放つ、というアクションシステム。回避は無制限で、ジャスト回避の判定は緩いがメリットは乏しいバランス。回復はパーティ全体で共有するCPという別のリソースを消費し、これは戦闘終了後も自然回復せず、管理しなければならない。

 難易度としてはジャスト回避の緩さと回復アイテムを無制限に使用できる関係上、そこまで高くはない。ただ、敵がひたすら硬い(減点ポイント)。雑魚からボスまで皆硬くて、能動的に大ダメージを放つ手段に乏しいのもあり、戦闘がだらだらと長く続くのはよくない。傷を負わせてシビアなリソース管理をさせたいのかなぁとは思わなくもないけど、つまらない。

 APを使って撃つ通常技は、主人公アルフェンを使っている限りでは、一杯技があってもどれもそんなにダメージが変わらず、何でもいいんじゃね感が拭えない。敵が硬すぎるって話とも関係するが、本作の技は基本的に地味。
 ブースト技にも問題があって、例えば術を使おうとしている相手にリンウェルのブースト技を当てるとダウンを奪えるんだが、逆に言えば敵の術に対して干渉する手段がそれしかないので、BPが溜まっていない時に術を撃たれると「私に任せて!」的なSEが流れるのに何も出来ん、というストレスがかかる。後半になるとスキルパネルでBPが溜まりやすくするスキルを取れるんだけど、それでもこういうことが結構頻繁に起きる。序盤は言わずもがな。
 あと、ブースト技は本当に「ダウンが取れる」だけで、ダメージは全然出ない。派手なダメージが出るのは能動的に入れないオーバーリミット時の必殺技と、敵の体力が減っていないと出せないストライク技だけ。もっとダメージソースがあればこの硬さでもよかったかもね。

 もう一つ言うと、多人数ARPGにありがちな、敵味方合わせて10人(匹)くらいでわちゃわちゃしてて何が何だか、という状態にも頻繁になる。
 ボス戦も全体的に特殊なことは要求されない。敵の攻撃をジャスト回避で躱して、頑張って殴るだけ。強いて言えば、自分は簡単に避けれても味方が絶対食らっちゃう技(主にビーム系)があってやや不快。

 総じて、戦闘はつまらん。一応、逃走がめっちゃ簡単でノーリスクなんだが、レベル要求値も低くはないし、それも何だかなぁという気持ち。

・マップ

 高低差なし(重要)。
 シンボルエンカウントで、進行ルートにいるだいたいの敵は避けられて、たまに避けられない敵がいる。脇道には必ず宝箱か宝石(アクセ作成に使う)があるが、避けられない敵も必ずいる。マップが長い時は途中で帰れるショートカットが中盤にあって、ボス戦前には全回復スポットがある、という一定のルールに従って作られていて、全体的に単純な作りではある。進行ルートも、どこかにある鍵を取って、その先でまた鍵を取って、とワンパターン。
 後半になると、周りと比べてなんかやけに硬い雑魚が湧き始め、強制エンカの対象にもなる。こいつらはマジで硬くてCPをゴリゴリ削り取ってくるうえ、倒しても経験値が全然旨くないので逃走推奨という本末転倒野郎どもである。

 それでも機械的にルールに沿った配置がなされていたダンジョンたちだが、ラスダンで急に裏切ってくる雑魚湧きエレベーターファストトラベルを人質に取った雑魚戦ラスボスの第一形態と第二形態の間に雑魚戦と、謎の雑魚推しが始まって、こいつらは逃げられないものだからシンプルにウザい。プレイ時間の嵩増しって言ってもそんなに効果はないので、ラストで急に簡悔精神があふれ出たとしか思えない。どういう会議の結果これが産まれたのか、マジで思考過程を知りたい。ゲームクリエイターはなぜ簡悔を抑えられないのか。

・モンスター

 テイルズFFがドラクエになれない理由。狼とか鷲とかよくあるモチーフの無個性なモンスターを色変えただけで最大五種類も出す
 ラスボスに至るまで人間以外の敵は全員五秒で名前もデザインも忘れる。
 鳥山死んだけどこれからどうすんの、ゲーム業界。

・ストーリー

 序盤ダメダメで、中盤に加速度的に面白くなっていって、終盤で失速するという典型的なダメパターン。終わってみれば、2000~2010年代のRPGにありがちな感じ。言っちゃえば劣化ゼノブレイド。

 まず序盤、とにかくヒロインのシオンがヤバい。俺は陰でこいつのことをダナ差別主義者、女版ひろゆき、ツンデレの振れ幅が激しすぎる女と呼んでいた。こいつがマジで言わなくていい場面で言わなくていいことをさも「正論」みたいな顔で言っちゃうせいで、パーティが終始ギスギスしている。序盤のこいつの発言、マジであっさい精神論と自己責任論でしかない。もう一人の女子リンウェルと対立する時、さもダナvsレナみたいな対立構造であるかのように描写されるけど、どう見ても種族とか関係なくシオンの性格が終わってる。それでいて「性格の悪い女」としてキャラを貫徹しているわけでもなく、日常パートではわがまま腹ペコプリンセスみたいな顔をし始めるのが本当にわからない。そんな風にデレられてもツンが無理過ぎて萌えない。

 そんなシオンが、メナンシアで仲間が二人増える頃くらいから急激にヒロインし始める。メナンシアの話が一番面白いのもあって、このあたりが本作のピーク。ダナに一人で乗り込んでダナの人たちに助けてもらって協力を要請しておいて「ダナの服なんか着れるか」とか言ってたのが、「おしゃれ番長」ってキャラ付けで強引に誤魔化されたのは笑っちゃったけど。ここからストーリーは「支配からの解放」をテーマにどんどん盛り上がっていくし、仲間が増えてパーティの雰囲気も賑やかに、掘り下げも深くなっていく。

 ……が、そこから終盤、世界の謎が明らかになっていくところで「ぼくのかんがえたSF設定はっぴょうかい」になってしまうのは、失敗JRPGの性。説明が先行しすぎて全然盛り上がらないのも、長すぎるテキスト量に反してストーリーが全然進まないのも、黒幕が概念的な存在なアレなのも、全部があるあるな感じのダメなやつ。ゲーム業界、もう社内でシナリオを書こうとするのやめればいいのに。

 問題はそれだけじゃなくて、本作、一応「過去と未来」みたいなものもテーマなんだが、メインキャラクターの「過去」が、本人の口から語られるだけでぼんやりしているのも良くない。途中まで記憶喪失の主人公の浅さもそうだけど、「茨」を背負ったシオンのレネギスでの暮らしや、リンウェルの村を焼かれたシーン、キサラの奴隷生活、ロウの出奔から諜報部隊入りまでなど、台詞一言でさらっと済まされた部分を映像付きでちゃんと見せてくれないと、いまいちキャラに共感しきれない。

・ハイクオリティなグラフィックと演出

 それならこのゲームの何がいいのって話なんだけど、そもそものキャラクターや背景のモデルやモーションがマジで綺麗。いっぱい挟まれるフルボイスのムービーのクオリティは高いし、戦闘中の必殺技の演出も豪華で派手。
 3Dのクオリティがなまじ高いだけに、要所で挟まれる短い2Dアニメ―ションはいらない派なんだけど、ラストシーンは長尺でufotable渾身のアニメが観れるぞ。
 グラフィックがいいってだけじゃなくて、その見せ方もすごくいい。ラスボス後のヴォルラーン戦からラストシーンの2Dアニメ、EDへの入りは良すぎて感動モノ。「ED曲がいい」という理由で1点おまけしちゃうくらいには、「見せ方」(演出面)の評価は高かった。ストーリーも看過できない問題はあれど、ざっくり大枠の大枠で見ればいい話だと思う。キャラクターも魅力的。

・総評

 バンダイナムコの開発力・技術力の高さと、それを全く活かせていないクリエイター側のダメさを痛感する、シンボル的な作品。シナリオとゲームシステムが神なら歴史的RPGになれるポテンシャルはあっただけに、残念。
 そりゃあswitchで出せないよな、って納得できるゲームだったけれど、申し訳ないがバンナムにはこれからも任天堂を支え続けて欲しい。

 ゲーパスだしクリアまで遊んで後悔はないが、クリア後とDLCはやらなくていいかな。


 余談だが、XBOX cloud gamingで本作を遊んだのだが、ずっとムービー途中でつっかえたりコマ落ちしたりに悩んでいたが、思い切って900円のLANケーブル繋いで有線にしたら劇的に改善した。無線でも200Mbps出ていたのだが、やっぱり有線じゃないと駄目らしい。クラウドゲーミング、アリ過ぎてGeForceのやつも契約しようと思ってる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?