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【おはなし】だんだん高くなるドライブ #毎週ショートショートnote

やめなよ。きもだめしなんて。

付き合い出したばかりの彼が、心霊スポットへドライブに行こうと言う。
彼にはまだ言ってないが、私はその手のものに好かれるのだ。悪い子達は寄ってこないので恐怖感は無いのだけれど、遊んでほしいのか、とにかく寄ってくる。

お化けなんていねーよ。まぁ、いてもオレは怖くないから安心しな。

月明かりは雲に遮られ、暗い森の中を進む。
彼は何かを払いのけるように昨年行った肝試しで腰を抜かした友達の事を大声で私に話していた。

ハイビームにしないと先が見えないカーブを曲がる。
照明がチカチカとする狭いトンネルを進む。
黄色い立ち入り禁止のテープの横を過ぎる。

やはり私は好かれている。
空気の重い場所を通過するたびに「同乗者」が増えている。

車内の密度がだんだん高くなる。

口数が減った彼に目を向けると、小さな男の子が彼の首に抱きつき頬をツンツンと楽しそうに突っついていた。

大丈夫?

脂汗を垂らし少し微笑んだ彼の頬にエクボが出た。


(409字)

今週も、たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
いつもお世話になり、ありがとうございます!